アフリカ現地レポート

日本の若者たちが「アフリカ」で起業体験--2週間にわたる派遣プログラム全レポート - (page 2)

藤井涼 (編集部)2020年04月25日 09時00分

大虐殺の歴史や現地ならではのビジネスを学ぶ

 ルワンダでのプログラムは、前半の1週間が現地の歴史や文化に触れて、同国の理解を深めるとともに課題を見つける「ビジネス視察」の期間。そして、後半の1週間がその課題に対して自分なりに解決策を考え、チームごとにアイデアやプロトタイプ開発などをする「グループワーク」の期間に分かれている。そして、最終日に各チームが考えたビジネスプランを発表するという流れだ。

 まず、前半の視察では、ルワンダのさまざまな施設や企業、飲食店などを訪問した。初日に訪れたジェノサイド記念館では、1994年の大虐殺がいかにして起きたのか、実際に使用されたこん棒やカマ、被害者の生前の写真などの展示物をみながら、事件について学んだ。この日ガイドを務めてくれた34歳の男性も、ジェノサイドで家族を失ったルワンダ人だった。

ルワンダの虐殺記念館。ガイドの男性も家族を失っている
ルワンダのジェノサイド記念館。ガイドの男性も家族を失っている
実際に虐殺に使われた武器
実際に虐殺に使われた武器
館内では被害者の写真が並べられている
館内では被害者の写真が並べられている

 このプログラムに参加する以上、もちろん参加者たちはジェノサイドについても最低限の情報は調べていたが、記念館で目の当たりにした生々しい資料や体験談には、ショックを受け言葉を失っていた。

 1日を振り返った際にも「自分がその立場になったら許せるだろうか」「いま同じことが起きても止められる自信はない」と複雑な心境を漏らした。今では治安が良くなったとはいえ、この事件からまだ26年しか経っていないルワンダの人々に対して、自分だったら何ができるのかを考える大きなきっかけとなったようだ。

プログラム期間中には大勢の人が殺された教会なども訪れた
プログラム期間中には大勢の人が殺された教会なども訪れた

 現地に拠点をおくテクノロジー企業なども訪問した。ドローンで血液を運ぶ米国発の「Zipline(ジップライン)」や、モバイルで医療相談ができる英国発の「Babylon Health(バビロンヘルス)」などを訪れ、アフリカやルワンダにおいて、各社がどのようにビジネスを展開しているのかを学んだ。

モバイルで医療相談ができる「Babylon Health」
モバイルで医療相談ができる「Babylon Health」

 特にZiplineは、アフリカだからこそ成功したスタートアップと言える。同社のサービスは、ルワンダ各地の病院から依頼がくると、血液パック(輸血用血液製剤)を入れた専用ケースを積み込んだ飛行機型のドローンが飛んでいき、病院の上空に到着するとパラシュートによってそのケースを落下させるというものだ。

ドローンで血液を運ぶ「Zipline」の飛行場
ドローンで血液を運ぶ「Zipline」の飛行場
ルワンダ各地の病院から依頼がくる
ルワンダ各地の病院から依頼がくる

 ルワンダの農村部などはいまだに歩くことも困難なほど未舗装な道が多く、ひとたび大雨が降ってしまうと車が通ることは難しい。また、同国は山や丘が多く高低差も激しいため、荷物を運ぶこと自体が容易ではない。そのため、道路の状態に左右されないドローンが果たす役割は大きい。Ziplineにより、これまで車で3時間かかっていた病院には20分で届けられるようになったという。まさにアフリカならではのイノベーションだ。

ルワンダには舗装されていない道路も多い。泥でスタックしたバスを押し出すこともしばしば...
ルワンダには舗装されていない道路も多い。泥でスタックしたバスを押し出すこともしばしば……

 このほか参加者は、JICAや日本大使館のスタッフから、ルワンダの基本的な情報や日本からの支援状況を学んだり、ルワンダで飲食店や日本人宿を営む日本人らから、現地でビジネスをすることの難しさや、雇用をする上での苦労などを教わった。

JICAでルワンダの基本的な情報について教わるメンバー
JICAでルワンダの基本的な情報について教わるメンバー

急成長する一方でさまざまな「課題」も浮き彫りに

 アフリカの奇跡と呼ばれるほどの経済成長を遂げ、治安も良く、IT立国として注目されている国──。こうした情報を事前に聞き、1万キロ以上離れた日本から期待感を持ってルワンダにやってきた参加者たち。実際に1週間現地で過ごし、そういった側面も実感することができたが、一方でルワンダならではの根深い課題も浮き彫りになった。

 ルワンダでは国民の約7割は農業で生計を立てているが、同国のGDPのうち農業の比率は3割程度しかない(そのほかはサービス業など)。そのため、国民の平均月収は5万円ほどしかなく貧困世帯も多い。また、前述したように女性が活躍する国でありながら、父親が逃げてしまい、たくさんの子どもを1人で育てているシングルマザーも少なくない。

スラム街で暮らす貧困層も多い
スラム街で暮らす貧困層も多い
貧困世帯が暮らす自宅
貧困世帯が暮らす自宅

 政府はIT教育に力を入れ、小学校では1人1台のPCを与えて授業をしているが、そもそも学校に行けず、満足に教育を受けられない子どもも多い。そのため、国民の識字率は68%に留まっており、文字や地図を読めない人も3割近くいる。私は滞在中に配車アプリなどを使ったが、そのドライバーは地図を読むことができなかった。現在、同国の失業率は16%におよび、仕事を探している人も多い。

 また、IT立国を目指しているが、残念ながら代表的な国産ITサービスは、首都キガリ市内を走るバスに非接触型電子決済システム「Tap & Go」を導入しているAC GROUPくらいしかない。さらに、国産スマホのMaraPhoneや、ドローン事業者のZiplineなど、各領域に政府の強力なバックアップを受けている企業があるが、逆に言えばそれ以外の企業の参入が難しいという状況が生まれてしまっている。

バス向けの電子決済システム「Tap & Go」
バス向けの電子決済システム「Tap & Go」

 現地のSIMカードを使ったネットワークの通信速度も日本に比べると遅く、雨が多い日などには1日に何回も停電することがあり、そのたびにWi-Fiが切れてしまうこともあった。急成長する一方で、解決すべき課題も多いことを参加者たちは肌で感じたようだ。

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