後半のグループワークでは、こうした前半の視察での経験を生かし、現地の課題をどうすれば解決できるかを参加者がチームを組んで考え、1週間かけてビジネスプランに落とし込む。
期間の途中で、地元の乳製品製造企業を訪問して共に販売施策を考えたり、チームで考えたアイデアやプロダクトに対して、本当にニーズがあるのかをフィールドワークで確かめたりして、参加者たちはビジネスプランの完成度を上げ、最終発表に望んだ。最終発表会では、プログラムの主催者である神戸市の職員や、ルワンダの起業家などが審査員となり、すべてのチームのプレゼンテーションを聞いた上で、最優秀チームを決めた。
最優秀に選ばれたのは、高校生と大学生のチームが考えた、ルワンダの伝統工芸品である「イミゴンゴ」を加工したイヤリングなどのアクセサリーをシングルマザーに作ってもらい、日本などで販売することで、売上金の一部を現地に還元するというビジネスプランだ。
発案者の1人である高校生3年生の山田果凛さんは、14歳のときに父親に連れられてインドへ行き、そこで幼くしてストリートチルドレンになった子どもたちと触れ合ったことがきっかけで、「子どもの未来を潰す社会をなくしたい」と決意。インドやタイ、沖縄などで合計2年間以上、ボランティア活動をしてきた。
しかし、ボランティアを続けるだけでは本当の意味で彼らを救い出すことができないと考え、貧富の差が大きな問題となっているルワンダの子どもたちを救うために、ビジネスとして取り組もうと決意したのだという。現地では、実際に子牛の糞を使ったイミゴンゴを作り、ルワンダのモノづくり施設であるファブラボで加工。現地の村の人々にも相談し、このビジネスモデルに辿り着いたという。
続いて、優秀賞に選ばれたのも高校生が考えたアイデアだった。高校3年生の永野理佐さんは、貧困世帯の女性などの衛生環境を改善したいと考え、ビー玉などを入れた見た目も楽しい石鹸を試作。さらに、その石鹸を地元民が通う大型市場である「キミロンゴ市場」で販売した。
当初は「高くていらない」と断られることが多かったため、思い切って値下げをしたところ、飛ぶように売れたという。ビジネスプランを考えるだけでなく、実際に売り上げを作った実績や、その行動力が高く評価された。
このほかのチームは惜しくも選ばれなかったが、いずれも日本人ならではの視点で、現地の課題解決を目指すビジネスプランを披露した。
プレゼン翌日となる最終日は、それぞれの参加者が2週間にわたるプログラムを振り返った。「ビジネスの難しさを感じた」「人に頼れない自分がいた」「自分の力不足を感じて達成感がなかった」「失敗を怖がって及び腰になってしまった」。学生たちの多くは時に涙を流しながら、思うようにビジネスプランを生み出せなかったことに、悔しさをにじませた。
その一方で、プログラムを通じて、今の自分には何が足りないか、それを補うためにはどのようなアクションをとればいいか、そのヒントを得たようだった。また、メンターの役割も担った社会人たちも「学生うちの失敗は失敗に入らない。怖がらずに何でも挑戦していくべきだ」といった、自身の経験に基づいたアドバイスを送った。
こうして2週間の起業体験プログラムは幕を閉じたが、日本に帰国後も活動を続けているチームもある。最優秀に輝いた高校生・山田果凛さんのチームは、イミゴンゴアクセサリー販売を実現するため、現在クラウドファンディング「高校生がアフリカ貧困層の子供を救う!伝統工芸をRe:Designして新たな価値へ」で支援を募集中。4月23日時点で、目標額116万円の55%におよぶ64万円を集めている(5月15日まで実施中)。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)