新型コロナウイルスの蔓延は全世界のテクノロジー業界にも打撃を与えており、各社は店舗やオフィスを一時的に閉鎖したり、出張を制限したりしているほか、統合されたグローバルサプライチェーンの混乱に備えることを余儀なくされている。この肺炎に似た病気「COVID-19」の発生は、バルセロナで現地時間2月24日に開催される予定だったモバイル業界の年次見本市「Mobile World Congress(MWC)」にも大きな影響を与えている。主催者であるモバイル業界団体のGSM Association(GSMA)は当初、新型ウイルスの発生地である中国湖北省からの訪問者の入場禁止や、来場者の体温の検査といった予防措置を講じるとしていたが、結局、12日に開催中止を発表した。
GSMAがさまざまな対策を明かしたのは、特に著名な出展企業を含む、多くの企業が不参加を発表した後のことだった。LGが2月5日に先陣を切ると、Amazonやサムスン、Ericsson、NTTドコモ、Facebookといった企業もすぐに追随した。ZTEやTCLといった企業は当初、予定通りMWCに出展するが、記者会見は中止すると述べていた。
新型コロナウイルスの影響を受けた見本市は、ほかにもある。サンフランシスコで24日から開催予定の大規模なサイバーセキュリティイベント「RSA Conference」だ。14日、企業スポンサーのIBMは、毎年4万人以上が訪れる同イベントへの参加を取り止めることを発表した。ただし、現在のところ、主催者はRSAを予定通り開催するとしている。
世界保健機関(WHO)が1月、COVID-19に関して、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言して以来、世界中で懸念が広がっている。WHOは、特に「医療制度が脆弱」な国々へのウイルス感染拡大に対する懸念を挙げた。WHOによると、新型コロナウイルスが原因で1700人以上が死亡し、感染者数は7万1500人近くに上るという(本稿執筆時点)。
新型コロナウイルスは2019年末に湖北省の武漢で発見された。感染者は肺炎に似た症状を示す。WHOに最初に報告されたのは12月31日のことで、中国の科学者たちはこの病気をSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)を含むウイルス群と結び付けた。感染は26カ国で確認されている。米国では15人の患者が確認されており、少なくとも1つの事例で、人から人への感染が起きた。
TwitterやAmazon、Microsoftなど、多くのテクノロジー企業は状況を注視しており、不要不急の出張を減らしている。
中国のPCメーカーであるレノボは、大人数の対面会議を避けており、新型コロナウイルスについて詳しいことが明らかになるまで、通常より多くの人に在宅勤務を認めていると明かした。HPは中国と往来する従業員を対象に出張制限を実施。「Firefox」ブラウザーの開発元であるMozillaは、マスクと手指消毒剤を利用できるようにしている。
任天堂は、人気ゲーム機「Nintendo Switch」の中国での生産について、新型コロナウイルス感染症の影響を避けられないとの見通しを明らかにした。調査会社のIHS Markitによると、LCDパネルとOLEDパネルを製造する5つの工場で減産が予想されるという。
影響を受けている企業は、これだけではない。テクノロジー業界大手が、新型コロナウイルスでどのような影響を受けているのか、以下でいくつか紹介する。
Facebookは従業員の中国への出張を制限しているほか、3月上旬に予定されていた、4000人の来場が見込まれるマーケティングサミットの開催を中止した。報道によると、同社はVRヘッドセット「Oculus」の生産の遅れも想定しているという。
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