多くのニュースを見ていると、この10年でテクノロジーが私たちに残したのは苦しみと争いばかりだと思われても仕方ないかもしれない。ソーシャルメディアは、デマ記事とフィルターバブルであふれていると非難されている。Airbnbは観光都市の住宅市場を圧迫しているし、悪質なディープフェイク動画は有名人と一般市民とを問わずその生活を破壊しかねない。インターネットを発明したTim Berners-Lee氏でさえ、その最悪の面を認めて、改善すると誓っているほどだ。
だがテクノロジー自体は、電気と同じようにもともと中立的なものであり、問題はその扱い方にある。いい面もたくさんあった。
実際に、テクノロジーは私たちの生活を、目に見える日常的な場面で豊かにしてきた。それだけでなく、イノベーターと起業家の多くは世界の大きな問題を解決する手段を開発しようとしており、なかにはそれが成功しているケースもあるのだ。
ここでは、テクノロジーが世界中の人々の生活の改善に大きく役立っている分野をいくつか紹介しよう。
2011年にTIME誌は、MIT Media Labバイオメカトロニクスグループの責任者Hugh Herr氏を「バイオニック時代のリーダー」と称した。Herr氏は卓越したロッククライマーであり、両足を失っている。その同氏がバイオニック義肢の分野で成した功績のおかげで、自身も、四肢を失った多くの人も、競技の世界に挑戦して結果を残せるようになった。
だが、Herr氏の功績が例外というわけではなく、義肢はこの10年間で飛躍的に進化している。ロボット技術によって、義肢は今まで以上に価格がこなれ、装着も使用も簡単になってきた。また、3Dプリンティングなどの新技術の登場で、試作品の製作コストも下がっている。
これまでの義肢は金属製で、子どもには重すぎたし、おおむね費用もかかった(子どもは成長するものなので、義肢は頻繁に交換が必要だ)。だが、2014年に創設された英国の企業Open Bionicsが、それを大きく変えようとした。
同社は子ども用に低コストの義手を製作し、ディズニーと組んでスーパーヒーローをテーマにした独自のロボットデバイスを開発している。いくつもの賞を獲得し、英国の国民保健サービスと協力してきたほか、同社はたくさんの子どもが理想的な生活を送れるようサポートしている。
義肢の分野における次のステップは、フィードバック機能を強化して触覚を持たせることだ。すでに始まっているが、大きな発展は次の10年に期待がかけられている。
残念な事実だが、National Coalition Against Domestic Violenceによると、米国ではパートナーによる身体的虐待を受ける人が年間1000万人にも及ぶという。ある意味で、テクノロジーは役に立っていない。スマートフォンなどのデバイスにスパイウェアをインストールすれば、それを使って人の行動を追跡できてしまう。
それでも、テクノロジーは虐待に対抗する新たな手段をもたらしてはいるのだ。「SmartSafe」などのシークレットアプリでは、各種のリソースを利用でき、オンライン時やスマートフォン使用時に安全を確保する方法についてもヒントを提供してくれる。また、写真や動画の撮影、メモ、音声の録音といった機能もあり、それがすべてタイムスタンプ付きで安全にクラウドに保管される。
Vodafone Foundation(Vodafoneの慈善部門)も、独自に同様のアプリを開発しているほか、虐待の被害者に特別仕様のスマートフォンも提供するようになった。ボタンを押せば警察に通報が届き、被害者の周囲で起こっていることを記録し始める。
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