Appleの「iPhone」が2007年に発売されたとき、Erin Lauridsenさんはいら立ちを覚えた。
全盲者であるLauridsenさんは、スマートフォン技術が障害者を置き去りにしてしまうのではないか、と心配していた。
幸い、2年後に発売された「iPhone 3GS」には、AppleのモバイルOS「iOS」の一機能として、画面読み上げ機能の「VoiceOver」が搭載されていた。それから10年が経過した今、Lauridsenさんは「iPhone XR」と「App Store」から入手した無料または低価格のアクセシビリティーアプリを使用して、カレンダーを確認したり、電子メールを送信したり、地図に従って移動したりしている。そうした支援技術は、全盲者がこれまで面倒な思いをして携帯しなければならなかったPDAやポケットコンピューターのような単体のデバイスよりも便利で、価格も手頃になっている。
視覚障害者を支援する非営利団体、LightHouse for the Blind and Visually Impairedでアクセステクノロジーディレクターを務めるLauridsenさんは、「総額6000ドル(約65万円)にもなるようなたくさんのガジェットをバックパックに入れて持ち運ぶ必要がなくなった。これで、私たちはより公平な環境に身を置けるようになった」と話す。
これは、世界人口の約15%を占める障害者にとって、テクノロジーが以前よりも利用しやすいものになったことを示す一例にすぎない。買い物の方法から、何かを視聴する方法、コミュニケーションをとる方法まで、私たちのすることの多くがオンラインで起こるようになった世界において、デジタルアクセシビリティーは極めて重要だ。それがなければ、多くの人は日常の雑事をこなすこともできない。
障害を抱える米国人は、オンラインに全くアクセスしない人の割合が、健常者に比べて3倍近く高い。シンクタンクのPew Research Centerによると、コンピューターやスマートフォン、タブレットを所有している人の割合も約20%低いという。米国時間5月16日に開催された「Global Accessibility Awareness Day」(GAAD)では、これらの問題に対する関心を高め、デジタルアクセシビリティーとインクルーシブ性(包括性)を促進することを目指している。
企業各社はアクセシビリティーに優先的に取り組むようになっているが、GAADの共同創設者で、LinkedInのアクセシビリティー担当エンジニアリングマネージャーも務めるJennison Asuncion氏は、まだまだやるべきことがあると話す。まず、企業各社は、ツールやプラットフォームのアクセシビリティーを妨げるコード内のエラーを開発者がもっと簡単に特定して修正できるようにする必要がある。また、コンピューターサイエンスおよびエンジニア教育にアクセシビリティーを不可欠な要素として組み込む必要もあるという。
幸い、一定の進歩は見受けられる。GoogleやFacebookを含む複数の企業が機械学習を使用して、障害のあるユーザーに対応している。また、「Teach Access」(業界のパートナー各社と提携大学の教員の共同プロジェクト)のようなプログラムでは、アクセシビリティーについて大学生を教育している。そうした知識を身に付けた卒業生が増えれば、アクセシビリティーへの取り組みは前進するだろう、とAsuncion氏は話す。
問題なのは、依然として関心が低いことだ。「人々は故意に障害者を排除しているわけではない。この問題に対する関心が低いだけだ」(同氏)
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