家庭内暴力の背後にはびこるスマートホーム技術などの悪用--対抗手段はあるのか

Claire Reilly (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2018年07月11日 07時30分

 2011年7月30日、Simon Gittany被告は婚約者のLisa Harnumさんを15階のバルコニーから投げ落とした。Harnumさんは死亡した。

 裁判記録を見ると、Harnumさんが亡くなるまでの数カ月間、両者の関係は波乱に満ちていたことが分かる。HarnumさんはGittany被告と別れたがっていた。身動きがとれないように感じる、と母親には話していた。

 その日の午前10時前、シドニーに住むGittany被告の隣人たちは、女性が隣人宅のドアを激しくたたき、助けを求め叫んでいるのを聞いた。マンションの廊下に設置されたカメラには、Harnumさんの口を手で覆って、自室まで引きずっていくGittany被告の姿が記録されていた。

 その69秒後、Harnumさんはマンション下の道路に落下した。ほぼ即死だった。

 その後の検視で、捜査官らは、ズタズタに破られた手書きのメモがHarnumさんのジーンズのポケットに入っていたのを発見した。

 メモの紙片をつなぎ合わせると、「家の中と外にカメラがある」と書かれていた。

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提供:Getty

常時つながった状態

 膨大な数のコネクテッドデバイスが、ドメスティックバイオレンス(DV、家庭内暴力)において恐ろしい、新たな役割を果たすようになっており、加害者が昼夜を問わず、世界中のどこでも被害者を苦しめることを可能にしている。スマートフォンやカメラ、ソーシャルメディアはコミュニケーションの障壁を取り除いてきたが、同時に虐待加害者とその標的の間の物理的な距離を消し去り、加害者が恐ろしい新たな方法で被害者を追跡して苦しめることも可能にしている。The New York Timesが先頃報じたように、この問題に注目が集まり始めている。

 ウェスタンシドニー大学で法律と刑事司法を専門とするHadeel Al-Alosi博士は、次のように語っている。「これまでなら、誰かを感情的または物理的に虐げるためには、実際に被害者に近づく必要があった。誰もが『iPhone』やソーシャルメディアを利用するようになった今、虐待加害者はほぼいつでも、被害者やサバイバー(虐待を切り抜けた人)を苦しめることができる」

 その結果は、執拗なサイバーストーキングによる心の傷かもしれないし、殴打によるあざや骨折などの被害かもしれない。だが、虐待には共通点がある。

 「DVの本質は『支配』することだ」(Al-Alosi氏)

水面下で起きていること

 多くの被害者やサバイバーにとって、最も過酷な「支配」の形態は、電話やテキストメッセージ、ソーシャルメディアの投稿など、ごくありふれた技術によってもたらされる場合もある。これら全ての技術を可能にしているのは、常時オンのモバイルデバイスと高速インターネット接続、隅々まで行き渡ったコネクティビティだ。

 2015年、オーストラリアでDVの加害者に関する調査が実施された。その調査結果(PDFファイル)によると、80%以上のケースワーカーは、被害者がソーシャルメディアとスマートフォンを通して虐待されていると報告したという。加害者が被害者を苦しめるための武器として最もよく使用するのはテキストメッセージだった。あるケースワーカーによると、被害者の1人は1時間のカウンセリングセッション中に30件以上の電話とメッセージを受信したという。

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