デバイスが変わっても「企業のニーズは変わらない」--ヤプリ庵原社長インタビュー

 クラウド型のアプリ開発・運用・分析プラットフォーム「Yappli」を提供するヤプリが勢いに乗っている。6月には事業拡大にともない東京本社オフィスを住友不動産六本木グランドタワーに移転し、総額30億円におよぶ資金調達も実施した。さらに、BtoB・社内利用をターゲットにしたアプリ開発サービス「Yappli for biz」を新たに提供している。これまでの手応えや今後の展望を、ヤプリ代表取締役の庵原保文氏に聞いた。

ヤプリ代表取締役の庵原保文氏
ヤプリ代表取締役の庵原保文氏

アプリ開発はアパレルから「BtoB」へ

——2019年2月には初CMも公開したYappliの最新の実績を教えてください。また、当初はアパレル企業が中心でしたが、導入企業に変化はありますか。

 2013年4月の創業から数えて丸6年が経過し、7年目に入りました。ここ数年の変化を振り返ると、顧客層が大きく広がっていますね。導入企業も大手を中心に300社を超え、累計ダウンロード数も3500万件を突破しました。数字だけ見るとインパクトが弱いかもしれませんが、我々はエンタープライズビジネスを目指しているので、数万社という規模のビジネスではありません。まずは、2020年までに1000社の導入を目指しており、その暁にはユニコーンの姿も見えてくるでしょう。

 ここ数年は導入企業の業種が増えたことも特徴ですね。初期はアパレルブランドに支えられていましたが、近年は青山学院大学を始めとする教育機関に採用されたり、メーカーが全国の取引先に商品カタログを提供するためのBtoBアプリに採用されたりするケースも増えてきました。数万冊刷っても紙のカタログは簡単に捨てられてしまうけれど、アプリなら顧客のスマホ内に残してもらいやすくなるため、紙に取って代わりつつあります。

青山学院大学など学校にも導入
青山学院大学など学校にも導入

 また、社内向けのアプリも、広報誌のアプリ化や、飲食チェーンがアルバイト向けの研修動画やお知らせをアプリ経由で発信するなど、導入の幅が広がりつつあります。もちろん既存の業務アプリでも同様の仕組みは可能ですが、やはり「まずはアイコンがほしい」というニーズは多く、自社ブランドに即した形で利用できるのが大きいのではないでしょうか。

——事業拡大にともない東京オフィスを移転しましたが、組織体制についても教えてください。

 社員数は急増しており、2016年は10人程度でしたが、現在は150人まで増えました。(急増にともない)部署間の問題など大変なことも多いですが、社内結婚や子どもが生まれたりと、社内にコミュニティが生まれつつあり感慨深いです。

 地方拠点も増やしはじめました。2018年1月には10名ほどで大阪支店、2019年6月には数名で福岡支店を立ち上げ、全国に営業エリアを拡大しつつあります。東京だけではなく、地方企業にも自社ビジネスをモバイルシフトさせる波が起きていますので、Yappliを全国規模のソリューションに押し上げるため、展開を広げるようになりました。

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——都心部と比較して地方のアプリ開発に対する認識に違いは感じますか。

 投資フェーズとしては1〜2歩遅いですね。それでも少しずつ広まりつつあると認識しています。スマホの浸透率も70代で50%に迫りつつあり、これまで若年に対するリレーション強化ツールだったスマホは、顧客全般とのリレーション向上に生かせるようになっています。

——2018年にはYappliにおいてフォトフレーム機能を、2019年にはAR(拡張現実)機能の提供を開始しました。こうした、従来はカスタマイズして開発するような機能もYappliのサービスの一部として提供するのですね。

 我々は「Mobile Tech For All」をミッションに掲げてきました。一言でいえば「モバイル技術や機能の敷居を下げて、誰でも使えるようにしたい」というものです。フォトフレームやARに続いて、現在は「動画フレーム」の開発に着手しています。数種類のテンプレートを用意して、簡単に最新の流行を取り入れたいお客様への提供を想定しています。

利用できる機能の一部
利用できる機能の一部

 お客様とお話していると、実装しきれないほどのご提案やフィードバックをいただきます。たとえば現在使用しているECのデータをアプリで高速表示することで、購入体験とコンバージョンレートの向上を目指す「ECコネクト」を間もなくリリースしますが、こちらもお客様からのご提案です。

 他にも、パスワードではなくスマートフォンの生体認証を利用する機能などを取り入れる予定ですが、残念ながらリソースの制限もあるため、数千数万のご要望をいただいても、一部の機能しか実現できていません。現在は優先度を定めながら開発を進めているところです。

デバイスが変わっても「企業のニーズは変わらない」

——庵原さんが創業時に「Mobile Tech For All」をミッションに掲げるにいたった原体験などはありますか。また、それから6年が経ちましたが、現状をどのように評価していますか。

 2010年頃に佐野(同社取締役の佐野将史氏)と一緒に趣味でアプリを開発していたところ、数名の友人から「ブランドのアプリを作れないか」「商品カタログを作れないか」といった相談が持ち込まれ、アプリ開発に対するハードルの高さを感じました。ここにチャンスがあると気付き、モバイル技術のハードルを下げたいと考えたのが、Yappliに至る原体験ですね。

 それから9年が経ちましたが、振り返ると「ずいぶん大きな課題に取り組んだな」というのが正直な感想です。当時はApp Storeがオープンして数年が経った頃で、まだおもちゃのようなアプリばかりでアイデア勝負の時代でした。ただ、アプリが社会に浸透して「単なる消費者の遊びでは終わらず、企業がビジネスでも使うようになる」と考えていたのは、今から思えば先見の明があったのかもしれません。

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——クラウド型のアプリ開発サービスとして急成長しているYappliですが、競合として意識している企業やサービスはありますか。

 やはりSIer(システムインテグレーター)ですね。SIはオーダーメイドでのアプリ開発が可能なため、引き続き需要は残るでしょう。一方でSaaSが広まっている現状を見れば、スクラッチでコードを半年かけて書くよりも、効率良く開発するアジャイルアプローチを望まれるお客様は今後さらに増えていくでしょう。Yappliは導入しやすく、後から試行錯誤できることが他社にはない強みです。

——6月に調達した30億円の使い道は。

 人件費とマーケティング費用に投資しようと考えています。エンジニアを中心とした人事採用と、プロダクトを拡販するマーケティング&セールスですね。後はカスマターサクセスにも投資したいと思います。Yappliの導入企業をさらに増やすためには、成功して事例として出ていただける企業が欠かせません。Yappliを使ったアプリ開発で生産性向上や売り上げアップにつながったなど、僕らの良さを実証していこうと思います。

——すでにスマホは高齢者にも普及しつつあり、デバイスとしては成熟期という見方もできますか、今後もアプリ市場は伸びると考えていますか。

 どのようなものかは分かりませんが、5〜10年単位で考えると、2025年あたりには新しいデバイスが登場するでしょうね。また、5Gも2020年はPoC(概念実証)レベルだと思いますが、2022年ごろには実用化されるのではと予想しています。スマホのアプリ市場の拡大は4Gの影響が大きかったと思います。(5Gによって)同じように潮目が変わるタイミングが訪れる可能性はあります。

 ただ、デバイスがどのように変化しようと我々のスタンスは変わりません。企業やブランドが消費者とコミュニケーションを取りたいというニーズは変化しないからです。現在はアプリがタッチポイントですが、新たに登場するであろうデバイスを通じて、新たなタッチポイントにも対応していきたいと思います。

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