小学校のプログラミング教育は2020年度からスタートするが、準備期間も残りわずかとなった。現場では、教師たちが子どもたちにどのようにプログラミングを教えるべきか、教員研修などの取り組みが広がっている。
そんな中、町田市立町田第三小学校は7月18日、グーグルが提供する「AI×プログラミング」の教材を活用した公開授業を実施した。この授業は、文部科学省・総務省・経済産業省の3省で取り組む支援活動「未来の学び プログラミング教育推進月間」の一環で、小学校の総合的な学習の時間に学ぶプログラミング教育を支援している。どのようなプログラミング学習を行っているのか、その様子をレポートしよう。
ご存知の方も多いと思うが、2020年度から実施される新学習指導要領では、小学校でプログラミング教育が必修化される。といっても、新しく「プログラミング」という教科が設けられるのではなく、算数や理科などの教科の中で実施されるほか、総合的な学習の時間も活用しながら、子どもたちはプログラミングを学ぶこととなる。
プログラミング教育の実施に向けて、その機運をさらに高めようと文部科学省・総務省・経済産業省の3省は、9月を「未来の学び プログラミング教育推進月間(通称:みらプロ)」に設定し、参加校を募集して支援活動に取り組んでいる。具体的には、さまざまな企業と連携し、小学校の“総合的な学習の時間”に活用できるプログラミングの授業案を公開している。たとえば、トヨタ自動車が提供する授業案の場合は、過去と現在の自動車生産を比較して、最先端の自動車に組み込まれた機能を知り、その後にセンサー付きのロボットをプログラミングしようという内容だ。
このように、みらプロでは、単にプログラミングを学ぶのではなく、その企業が持つ得意分野や特性を生かして、プログラミングが「何に役立つのか」「どのような課題を解決したのか」など、社会とつながる授業案を提供しているのが特徴だ。これは、総合的な学習の時間に取り組むプログラミングに関しては、課題発見や情報収集など、探求の学習のプロセスが重要視されているからだ。
ちなみに、小学校におけるプログラミング教育は「コードを書けるようになることが目的ではない」ということを、もう一度、おさらいしておきたい。それよりも、プログラミングを通して、コンピュータを動かすための論理的思考を育んだり、情報化社会におけるコンピュータの働きを学んだりすることが重要視されている。そのため、みらプロにおいても、プログラミングのスキルを高めることが学習の目的ではない。
「未来の学び プログラミング教育推進月間」に参加しているグーグルは、「AIとプログラミングで、身近な課題を解決しよう」という授業案を提供している。7月18日、この授業案でプログラミング学習に取り組む町田市立町田第三小学校は、5年生の授業を公開した。
グーグルが提供するAIとプログラミングの授業とは、どのようなものか。同授業は、児童たちがどのようにAIが社会で活用されているのか、その事例を見たり、その機能に触れたりしながら、AIでできることを考えるという内容だ。AIを用いて課題解決ができることを知り、“自分たちの生活にも生かせる”という考えや気づきを得ることが授業の狙いとなる。グーグルは同授業において、AIに関する動画教材と、画像認識・音声認識の体験アプリを提供した。
公開された5年生の授業は、全7時間で組まれたカリキュラムの3時間目だった。児童たちは1時間目にグーグルが提供する動画教材「AIってなんだろう」を視聴し、AIとは何か、また社会でどのように活用されているかを学習。2時間目には、自分たちが描いた「りんご」と「いちご」のイラストをAIに画像認識させ、それを判別するプログラムを作った。プログラミングは、ビジュアルプログラミング言語環境「Scratch3.0」を使用し、グーグルの技術サポートを受けて開発された拡張AIブロックを用いて行われた。
そして、公開された3時間目。児童たちは、前時までの学習内容を踏まえて、今回は自分たちでAI画像認識の活用を考えるプログラミングに挑戦した。自宅から、ぬいぐるみや書籍、キャラクターグッズなど好きなものを持参してAIに画像認識させ、そこに言葉を付けるプログラムを組み立てることで、AIの活用を考えようという内容だ。
授業は最初に、児童たちが自宅から持ってきたものをAIに画像認識させるところから始まった。専用のツールを用いて、Chromebookのカメラで対象物の写真をたくさん撮影し、AIに画像をトレーニングさせる。それが終わると、写真をアップロードして秘密の鍵ナンバーを入手する。
続いて、前時に作成したScratch3.0のプログラムファイルを読み込み、先程の秘密の鍵ナンバーを入力する。すると、トレーニングした画像がScratchで判定できるようになり、あとは児童たちがどのようにAIに判別させたいのか、言葉づけを考える。たとえば、似たような帽子2つの場合は、それぞれの持ち主の名前を言葉づけしたり、キャラクターの場合は、その名前を言葉づけするといった具合だ。
最終的には、カメラに対象物をかざしたときに、Scratchのネコのキャラクターがプログラムした言葉を表示すれば、正常な動きとなる。AIは対象物を正しく認識できるときもあれば、そうでないときもあり、児童たちは試行錯誤しながら学習を進めた。
授業の最後では、児童たちが作ったプログラムを発表し合う時間が設けられた。ある女子児童は、「チップ」と「デール」のぬいぐるみをAI画像認識で判別するプログラムを作った。同児童は「チップとデールは、色や大きさなど似ているので、AIであればすぐに区別できるのではないかと思った」とAI活用の意図を発表した。また別の児童は、国旗をかざせば、その国の首都と公用語の情報が表示されるプログラムを作成。さらには、ぬいぐるみをかざすと金額が表示されるプログラムを作成した児童もいた。
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