55年ぶりの新たな大学制度「専門職大学」とは--HAL運営の日本教育財団に聞く

 「専門職大学」という教育機関をご存じだろうか。最近、テレビCMなどでその名前を目にしたことがある人もいるだろう。これは、2019年4月に新たに創設される学校高等教育機関のことで、国が55年ぶりに作る大学制度となる。専門職大学を卒業すると、大学卒業で与えられる「学士」と同等の「学士(専門職)」を得られることでも注目を集めている。

専門職大学
55年ぶりの大学生度である「専門職大学」(学校法人日本教育財団のウェブサイトより)

 国が専門職大学の創立に乗り出した理由は、産業構造が大きな転換期を迎える中で、より実践的な技能を育成しなければならないと判断したことによる。文部科学省のウェブサイトによると、専門職大学は「大学制度の中に、実践的な職業教育に重点を置いた仕組みとして制度化するものであり、産業界との密接な連携により、専門職業人材の養成強化を図り、また大学への進学を希望する方にとっても新たな選択肢が広がるもの」とされている。つまり、研究や学問に重きを置いていた大学に、専門学校で行っている実践的な学びも組み込む教育機関となる。

 専門職大学は4年制課程だが、2年制または3年制課程の専門職短期大学もある。2017年11月末に文部科学省へ認可を申請した専門職大学は13校、専門職短期大学は3校にのぼる。冒頭でも触れたように、専門職大学を卒業すると学士(専門職)が得られ、専門職短期大学では「短期大学士(専門職)」が得られる。学士(専門職)は、大学卒業の学士同様、大学院への入学資格にもなる。

日本教育財団 国際工科専門職大学(仮称)の設立準備室責任者である辻本純一氏
日本教育財団 国際工科専門職大学(仮称)の設立準備室責任者である辻本純一氏

 専門的な技能に加えて学士の称号も得られる専門職大学は、まさに「いいとこ取り」とも呼べる学校制度であるが、実際どのような教育機関になるのか。現在、「国際工科専門職大学(仮称)」を認可申請中の、学校法人日本教育財団 国際工科専門職大学(仮称)の設立準備室責任者である辻本純一氏に話を聞いた。

専門職大学は「大学」と「専門学校」のメリットを併せ持つ

 専門職大学が創設される背景について辻本氏は、「現在は大学進学率が50%を超えてきたが、果たして産業界で大学教育が役立っているのかという議論もある。一方、専門学校は評価が低かった時代はあるものの、学校で学んだことが就職先の仕事に直結するため、即戦力として評価が高い」と語る。

 では、専門職大学はどのような位置付けになるのか。辻本氏は、こう説明する。「専門学校は、今の社会問題を解決するために必要なスキルを身につけるところ。大学は学問としての教育機関だが、真理の追究が中心で社会問題を解決できるかどうかわからない。われわれが設立する国際工科専門職大学は、今ある課題だけでなく、将来発生するであろう社会問題を解決できる能力を身につけられる機関を目指している。テクノロジの進化は非常に早く、新たな社会問題が生まれていく。その解決には、学問的な知識により問題の根本を分析することが必要となる。さらに、マクロな視点や察知する力も併せ持たねばならない。こうした、大学の教養教育のようなものを一定数取り入れていく」(辻本氏)。

 辻本氏は、「専門職大学により進路の選択肢が増えたことはよいこと」だと語る。「将来、何をやりたいかを見つけたい人は大学に進学する。何をしたいかわかっている人は専門職大学や専門学校へ進む、と選択肢が増えた。私たちが運営している学校法人・専門学校HALはゲームクリエイターを目指す人が入学し、ゲーム会社に就職している。しかし、親は大学に進学してからゲーム会社に就職すればいいと考える。ところが、大学ではゲームについて学ばないため、能力試験でゲームクリエイター職には就けず、事務系などに配属されてしまう」(辻本氏)。そんなとき、専門職大学という選択肢を選べば、親子で納得のいく進路になるというわけだ。


 大学進学率が上がる中で、「せめて大学は出てほしい」と考える保護者は少なくない。将来の夢が固まりつつある高校生も、はたして大卒の肩書きを失っても大丈夫なのか、不安に感じているだろう。専門職大学であれば、スキルを身につけた上で大卒として就職や進学に挑める。

 辻本氏は、「専門職大学で得られる学士は、大学の学士と同じ位置付けだ。しかし、テクノロジの分野においては、学士や修士の肩書きが必須であるというケースが稀なため、その肩書き自体に意味があるのかは正直なところわからない。とはいえ、大卒というだけで日本では通用する面もある。また、海外に進学、就職するときや留学生が日本に来て学ぶときは、世界中に認められる証となる。国内というよりも、海外に意味があると考えている」と、学士(専門職)の資格について語った。

専門学校での強みを生かした専門職大学へ

 専門職大学は、専門学校を運営する企業の設置認可申請が多い。今回インタビューしている日本教育財団は、ゲーム・アニメ・ミュージック・ITなどを学べる専門学校HALと、服飾・ファッション・美容の専門学校モード学園を運営している。

日本教育財団が運営する教育機関
日本教育財団が運営する教育機関

 2018年度におけるHALの学生数は約6700名、モード学園の学生数は約4500名。両校とも希望者就職率は100%であり、HAL卒業生は任天堂、スクウェア・エニックス、カプコン、東映、サンライズ、サイバーエージェント、チームラボ、ドワンゴなどの有名企業に就職している。モード学園の卒業生の就職先も、オンワード樫山、ワールド、シャネル、パルファン・クリスチャン・ディオール・ジャポンなど、そうそうたる社名が並ぶ。

 両校とも生徒は多数のコンテストに入賞しており、HALは日本ゲーム大賞で14年連続の受賞、大賞受賞は6度と他にない実績を誇る。その実績が就職率100%へとつながっていると辻本氏は言う。

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