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「オーシャンズ11」モデルで日本のPRを変える--本田哲也氏に聞くブルーカレント独立の真意

藤井涼 (編集部) 阿久津良和2019年05月10日 08時00分
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 PR企業のブルーカレント・ジャパンで代表取締役社長を務めていた本田哲也氏が2019年3月末に退任し、新たに「本田事務所」を設立した。本田氏は引き続きシニアストラテジストとしてブルーカレントに関わりつつも、今後はPR戦略機能に特化したPRファームで活動するという。独立の真意を本田氏に聞いた。

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本田事務所 代表取締役/PRストラテジスト 本田哲也氏

本田氏が感じる日本の「PR戦略の欠如」

——まずは独立の経緯やその理由を聞かせてください。

 1999年にフライシュマン・ヒラードの日本法人に入社してから、2019年でちょうど20年、節目の年でした。3月まで代表を務めていたブルーカレント・ジャパンの設立は2006年ですから、干支も1回りして一定の経験を得たと感じています。振り返ると日本のPR業界も進歩してきたものの、そこで見えた課題に挑戦しようと思いました。

 私がPR業界における課題と感じるのは、まだまだ「戦略性」が足りないということです。20年前のPR業界は今のような人気もなく、プレスリリースの代筆など広報支援業務や、広告マーケティング方面ではパブリシティは「オマケ」程度でした。ちょうど10年前(2009年)に「戦略PR」(アスキー新書)を出させてもらいましたが、PRに対する理解促進の一助になった思います。しかし、SNSが定着した現在は従来型の手法が通用しません。PRは、コントロールできない前提でマスメディア発信が主だった世界でしたが、PR発想そのものが重要な局面が増えてきました。

 この10年でPR業界の市場規模も倍近くまで成長しましたが、まだ物足りなさを感じます。その1つが本田事務所のアプローチにも関わってきますが、PR戦略の欠如です。他方でスタートアップ周辺が盛り上がりを見せてきました。すると、広告よりもPR・広報が重要になり、スタートアップ自身の成功や市場全体に対してもPRの存在が大きく影響します。ただ、(スタートアップは)予算が少ないことも珍しくないため、社長がPRを強調しても広報担当者は1人なことも多く、ここにギャップが生じます。

 このような現状を踏まえて、新しい広報の形やPRのニーズを感じていました。このような課題を抱えている企業を支援したいという思いがあります。20年の経験と知見を持ったまま身軽になり、フレキシブルにPRの専門性を提供していくことを念頭に独立しました。

——「ブルーカレント=本田氏」という印象が強いです。今回の独立によって、ブールカレント・ジャパンはなくなってしまうのでしょうか。

 いえ、(ブルーカレントの親会社である)オムニコムグループはグローバルで活動していますので、東京を拠点とするブルーカレント・ジャパンは継続します。私自身も関係が切れたわけではなく、経営からは退きますが、シニアストラテジストとして既存クライアントには対応していきます。ただ、独立企業ではなく1つの事業部となるので、責任者は別途就任するでしょう。

業界全体の「広報人材不足」を解消する

——私自身もスタートアップの広報さんとのやりとりが多く、最近はFacebookメッセンジャーなどでカジュアルに情報を送り合う機会も増えました。その一方で、担当の広報さんが転職したり異動したりすると、関係性が切れてしまう属人的な問題が残ります。

 もともと、PR・広報は属人性が付いて回る仕事です。もちろん組織力が求められる場面もありますが、広告よりも属人性が求められますね。“名物広報”と呼ばれる方も少なくありません。(広報は)人間性や企業やブランドに対する愛情=熱量が重要です。あとはコミュニケーションスキルでしょうか。広報はコミュニケーションの仕事ですから、一方的に話すでもなく、ただ聞くだけでも務まりません。メディアやインフルエンサーとの直接的な関係において価値を構築していく仕事ですから、属人性は避けて通れないでしょう。

 リレーション方法もSNSを活用することが多くなってきました。直接的な複数のタッチポイントで、メディアやインフルエンサーとコミュニケーションを取るのは自然な流れでしょう。もちろん相手によって手法やクセが出てきます。多様化するんですよね。属人性というのは、PRエージェンシーや企業側の悩みでもあり、メディアの悩みでもあるでしょう。「いなくなるとハイ終わり」と人が変わると(関係性が)急に変化してしまいます。この部分は標準化できませんね。

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 そこも独立してやりたいことと関係しますが、PR・広報が持つ属人性は、SNSなどの環境変化で増しているように感じます。ただ、大手企業の広報部門がメッセンジャーというわけにもいかず、少し前まではアカウントすら持っていませんでした。メッセンジャーでのコミュニケーションが当たり前な広報リレーション手法も、大企業は何らかのしがらみで実行できないケースがあり、ここに大きな差が生じます。

 大企業やスタートアップの社長さんからもアドバイスを求められますが、「広報は生命線」と伝えてきました。あくまでも法人格ですが、広報は企業ブランドと同義に見られます。むしろ、その方が今の時代にマッチしているでしょう。

 ただ、広報に携わる人間は大前提として人手不足なんです。統計などのデータはありませんが、肌感覚で述べればニーズを「10」とすれば供給は「3〜4」くらい、下手すればそれ以下しか集まりません。つまり広報機能として必要とされるリソースの半分以下です。スタートアップは外部から広報経験者を連れてくるのではなく、元営業やエンジニアが兼務しているケースが少なくありません。5年ほど経てば経験者も増えてきますが、それでも足りないでしょう。ここにジレンマが残ります。

——広報不足はスタートアップに限った話でしょうか。

 いえ、企業全体ですね。中堅企業からも同様の相談があります。求人を出しても集まらない、もしくは求めるスキルセットが異なるケースが多いですね。数年前はかっこ悪いからと直接の人材紹介はありませんでしたが、最近は背に腹は変えられないようで、直接私に相談してくるケースも増えています。あとは、絶対数とは別にマッチングの問題もありますね。

——本田事務所が目指すのは、PR・広報における人材不足の解消ですか。

 そうですね。フリーランス人材と違って大手代理店は、部門によってポジショントークに陥りがちです。どうしても「弊社だけで提供できます」といわざるを得ません。ですが、多様化しフレキシブルな対応を求められる現在ではそれでは破綻します。従来からある大手代理店の道理ではなく、フレキシビリティが求められているのです。

 そこで、本田事務所では、正社員を増やさずフレキシブルにチーム編成を図る手法を選びます。たとえばPR・広報のプロジェクト1つ1つに対して、副業やフリーランス人材、ブティックエージェンシーなどによるチームを編成するんです。その理由の1つは属人性もさることながら、前述したような人材不足問題があります。プロジェクトごとに適確な人材を当てはめる「目利き力」が必要になりますが、ここで私の経験が生きると思います。

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