全長24インチ(約60cm)のサソリ型ロボットは、よいアングルで撮影ができるように、カメラが取り付けられた尾部を持ち上げる機能を持っていた。2016年12月、このサソリ型ロボットを投入するために、2号機の原子炉格納容器に穴が開けられた。東京電力は、2つのカメラと、放射線レベルと温度を計測するセンサーを備えたこのロボットが、原子炉の中の状態を垣間見せてくれることを祈った。
サソリ型ロボットのミッションは10時間の予定だったが、2時間で溶解した金属の塊に進路を妨害されて立ち往生した。このロボットは東芝が2年半の時間をかけて開発したもので、開発費用は明らかにされていない。
東京電力原子力・立地本部長代理の八木秀樹氏は、通訳を通じて「ミッションは失敗だったが、ロボットから受信したデータは役に立った」と述べ、この経験を元に、後のロボットには障害を回避するためのガイドパイプやその他の新しい設計が盛り込まれたと説明してくれた。
それでもこの失敗は、華々しく精巧なロボットが、シンプルで特定の目的に合わせて設計されたロボットよりも脆弱な部分を持っていることを示した。除染処理について公にコメントする立場にはないというある業界専門家は、「彼らは完全な解決策を理解しないまま、洗練された技術を開発しようとしている」と語った。
Barrett氏は、問題の原因の一端は、東京電力が東芝や日立などの日本の大手メーカーにばかり頼っていることにあると述べ、同社はもっと実験精神に富んだシリコンバレー的メンタリティを取り込む必要があると語る。
「ボディピアスを付けた長髪の若者はどうした?」と同氏は言う。「あの手の若者が何人かいるべきだ」
(記録のために記しておくが、筆者の視察旅行では、長髪の人物やボディピアスをした人物は1人も見かけなかった)
サソリ型ロボットの失敗から7カ月後の2017年7月、東芝は長さ30cm、直径13cmの小型の水中ロボット「ミニマンボウ」を、水が溜まっている3号機の格納容器内に送り込んだ。予備調査の2日目、ミニマンボウは原子炉の内部に初めて融解した燃料と思われるものを発見した。
その後東芝は、2018年1月に再度汚染が激しい2号機に戻り、今度は鳥瞰的な視点から映像を撮影できるように設計された、伸縮式パイプの先端にパンチルトカメラを吊した新たなロボットを投入した。このロボットが原子炉格納容器の中心部に到達すると、操縦者は遠隔からパンチルトカメラをさらに7.5フィート(約2.3m)下まで吊り下げ、写真を撮影した。
ロボットを吊り下げる仕組みの開発に関わった東芝エネルギーシステムの専門家、中原貴之氏は「この装置は、この目的に固有の課題に対応できるように、ゼロから作る必要があった」と述べている。
このロボットは2号機の強力な放射線に耐え切っただけでなく、格納容器の底に融解した燃料デブリとみられる粘土状・小石状の堆積物があるのを発見し、廃炉作業の今後につながる新たな情報をもたらした。
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