この研究開発センターと、車で1時間ほど離れた場所にあるドローンテスト場には、福島第一原発の後始末と、かつては海の幸や地酒などで知られた福島県の復興に寄与することが求められている。この取り組みは非常に長期にわたるため、東京電力や政府機関は、この仕事を引き継いで完了に導く次世代のロボット専門家を育成しようとしている。
元米原子力規制委員会の専門家として東京電力に招かれたシニアアドバイザーLake Barrett氏は、「この問題は、月に人類を送り込むのと同じくらい難しい」と述べた。「事態が加速されない限り、廃炉作業に60年掛かってもわたしは驚かない」
原子炉の屋上に上がるエレベーターに乗り込むと、1970年代のアニメ「宇宙戦艦ヤマト」のジングルが聞こえてきたことに、どこか日本らしさを感じた。
このメロディを聴いて、子どもの頃の記憶を思い起こした筆者と米CNETのカメラマンJames Martinは、思わず顔を見合わせた。命に関わる危険な環境の中での、奇妙な瞬間だった。
われわれが訪ねた「燃料取り出し用カバー」は、重機を搬入するために、東京電力が3号機原子炉建屋と燃料プールを覆う形で約2年前に建設したドーム状の構造物だ。
筆者の両足の60フィート(約18m)下では、毎時1シーベルトの放射線が放出されている。このレベルの放射線を直接浴びれば、むかつきや吐き気、出血などの症状が起きる。1時間に5シーベルトの放射線を浴びれば被爆した人の半数は1カ月以内に死亡するし、10シーベルトであれば数週間でほぼ死に至る。
3号機は、破壊された3基の中でもっとも放射能汚染が少ない原子炉だ。
1号機の放射線量は毎時4.1~9.7シーベルトだと観測されている。The Guardianによれば、2年前に2号機のもっとも深い部分で計測された数字は、毎時530シーベルトという「想像しがたい」ものだった。2号機のほかの部分も毎時70シーベルト弱で、この原子炉は現在でも福島第一原発でもっとも「熱い」場所になっている。
初期に導入されたほとんどのロボットは、これらの原子炉の厳しい環境に屈服した。ガンマ線量が高すぎてロボットの脳の役割を果たす半導体内の電子が乱されてしまい、高度なロボットの多くは使い物にならなかった。また自律型ロボットは作動停止に陥るか、予想外の歪んだ障害物に足を取られた。
事実上世界で最も危険な「作戦」に挑むロボットには、融解した危険な燃料棒を回避できるだけの器用さを持ち合わせている必要もある。少なくとも初期の段階では、ロボットは十分な器用さを備えていなかった。
ABI ResearchのアナリストRian Whitton氏は、「福島での経験は屈辱的だった」と述べている。「ロボット技術の限界が露呈した」
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