ロボットは福島第一原発「廃炉」への希望となるか--現地取材レポート - (page 4)

Roger Cheng (CNET News) 翻訳校正: 石橋啓一郎2019年06月19日 07時30分

 東京電力は2019年2月にも再び同じロボットを送り込み、今度はこれまでで初めて小石状の堆積物の一部に接触した。同社によれば、このロボットは小さな小石を「指」状のアタッチメントで掴むことに成功したほか、周囲の環境に影響を与えることなく、さらに多くの写真を撮影し、放射線量と温度を計測した。一方で同社は、大きな岩状の構造物は掴むことができず、ロボットを再評価していることも明らかにした。

事前調査ミッション

 2号機から350m離れた建物にあるオフホワイトの壁のコントロールルームでは、静まりかえった中で、小声で会話が交わされていた。天井のパイプはむき出しで、広い空間に椅子やコンピュータ機器が詰め込まれたラックが収まっている。そこにいる20人程度の人たちの間には、静かな緊張感が漂っていた。全員が、戦争に備える軍の将校のように、所属組織によって色分けされたつなぎを身につけている。

 2つの特製の椅子には、2本のアームレストの先端にジョイスティックが取り付けられていた。そのうちの1つには東京電力のオペレーターが座り、2本のキャラピラで動く小型ショベルカーに似た特別製の大きな青いロボット「Brokk 400D」を遠隔操作している。オペレーターは4つのモニターに映る、2号機原子炉で何が起きているかを示すリアルタイム映像を一心に見つめている。

 もう1つの椅子に座るオペレーターが操作しているのは、戦場に爆発物処理や、生物学的・化学的脅威や放射能による脅威の検知を目的として最初に投入される、iRobotのロボット「Packbot」だ。

原子炉の汚染水処理施設の中を歩く
原子炉の汚染水処理施設の中を歩く。
提供:James Martin/CNET

 しかし、これらのロボットは通常のものとは違っている。Brokk 400Dには、通常のバケットクローではなく、ガンマ線のホットスポットを見つけるためのセンサーが取り付けられている。また、Packbotには、オペレーターに広い視野を提供するためのカメラが追加されていた。どちらのロボットにも有線の通信ボックスが取り付けられている。通信ボックスに接続された光ファイバーは、原子炉の隣にある特別に用意された部屋に繋がっており、そこからWi-Fiでコントロールルームに通信が中継されていた。

 これは事前調査のためだけのミッションで、この種のものとしてはまだ2回目だ。2台のロボットは原子炉格納容器の内部に送られたわけではなく、2号機の上部で放射線量が強い地点を調べるための調査を行っていた。東京電力は、これらのロボットから得られた情報を、将来原子炉の上部から燃料や大きな瓦礫の塊を除去するためのドーム状のカバーを設置するために役立てようとしている。

テストセンター

 筆者は、真っ白な空間の中でパイプの迷路の前に立っていた。そばには大きな金属製の物体がある。筆者はそれを掴んだ後、無意識にそれを放り出した。

 しかしその物体は空中で静止していた。

 筆者とカメラマンのMartinは、福島第一原発から南に車で1時間ほど行った場所にある、楢葉遠隔技術開発センターに来ていた。特製の3D眼鏡をかけて筆者が見ていたのは、福島第一原発の仮想モックアップが投影された映像だ。このシステムには、電動ドリルとスタートレックのフェイザー銃の中間のような形をした、片手で操作する専用コントローラーが用意されており、これを使うことで周囲を動き回ったり、ものを掴んだりすることができる。

特製の3D眼鏡をかけた筆者が、仮想的なロボットを汚染された発電所のモックアップの中を移動させている
特製の3D眼鏡をかけた筆者が、仮想的なロボットを汚染された発電所のモックアップの中を移動させている。
提供:James Martin/CNET

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