JAEAは福島第一原発特有の課題に対応できる遠隔操作ロボットの開発に必要なツールを企業、学生、研究者に提供するため、2016年にこの施設をオープンした。同センターの遠隔基盤整備室長を務める川端邦明氏は「われわれはすでに、そうしたユーザーを3年近くサポートしてきた」と話す。
川端氏は左胸にJAEAのロゴが入ったオフホワイトのジャケットを着ていた。同氏は、筆者と英語で話してくれた数少ない担当者の1人で、この施設で利用できるさまざまなリソースについて詳しく説明してくれた。
例えばこのVR体験は、ユーザーが仮想的なロボットをVRの施設に持ち込み、階段の上り下りや、狭い空間の通り抜けが可能かどうかを確認するために使うこともできる。このシステムには、物体に衝突したときに警告を発する仕組みまである。ロボットが障害物を通り抜けるのに失敗すると、ブザーが鳴るのだ。
また物理的なテストを行うための、実物大の試験用モックアップが置かれた、巨大な試験棟も設けられている。その大きさは、ボーイング747を2つ重ねて入れられるほどだ。大きな空間は、原子炉の一部を再現したり、ドローンのテストを行ったりする際に役に立つ。
原子炉内の圧力抑制室の実寸大模型を8分の1にカットしたものも置かれていた。巨大なチューブは、格納容器の基部を取り巻くドーナツのように見えた。再現されているのは本物の一部だけであるにも関わらず、圧倒されるほどの大きさだ。圧力抑制室には格納容器で発生した汚染水のほとんどが収められているため、研究者らはこの施設で、内部から液体が漏れないように、遠隔操作のロボットで内側から補修できないかをテストしている。
ほかのエリアには、水中でロボットをテストするための大きなプールや、ロボットが直面する課題を再現できるように、移動したり、傾斜や幅を調節したりできる階段(ロボットは階段の上り下りのような基本的な動作でつまづきがちだ)などが用意されていた。ロボットを操作して狭い通路を通り抜けるための、オペレーターの訓練用障害コースもある。
筆者は、あるオペレーターが「Xbox One」のコントローラーを使っているのを見て、長年Xboxシリーズの名作ゲーム「Halo」をプレイし続けてきた自分の腕があれば、あの仕事ができるのではと考えたりもした。
川端氏によれば、この施設の目的は、将来のエンジニアやオペレーターに、今後何十年も続く仕事を引き継ぐことだという。
「今の世代が次の世代を教育し、技能を継承しなければならない」と同氏は言う。「われわれには、優秀な学生を引き付け、獲得する必要がある」
楢葉町から車で北に1時間ほど行ったところにある、南相馬市の「ロボットテストフィールド」も同じ目的を持った施設だ。ここには、2019年中にドローンの試験や訓練を行うための橋やトンネル、その他の障害物のモックアップが建設される予定になっている。また2020年には、この場所で「ワールドロボットサミット」が開催され、災害対応やインフラの点検保守などに焦点を当てた展示が行われる予定だという。福島県庁は、将来世界中の企業がドローンのテストのためにこの場所を訪れるようになることを望んでいる。
楢葉町から福島第一原発へ向かって陸前浜街道(国道6号線)を車で走っていると、福島がゆっくりと以前の姿を取り戻しつつあるのが分かる。例えば富岡の地元のスーパーマーケットや交番には、活気が溢れていた。
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