次世代のネットワーク技術である5Gは、ここバルセロナで開催される「Mobile World Congress」(MWC)でも、何年か前から常に注目の的になってきた。そして今回、本当にそれが登場した。だが、いざふたを開けてみると、誰もが話題にしているのは折りたたみスマートフォンだった。
5Gは、圧倒的な回線速度と、快適で安定した接続をうたい、仮想現実(VR)、自動運転車、ロボティクスの新しい可能性を開くとされている。モバイル業界にとっては新しい大きな目玉であり、スマートフォンメーカーやインフラベンダーから、半導体メーカー、通信事業者に至るまで、関係するすべての者が、万全の態勢を全力でアピールしてきた。
だが、MWCで俄然話題をさらったのは、お披露目された初期の5Gデバイス群ではなく、サムスンの「Galaxy Fold」と華為技術(ファーウェイ)の「Mate X」だった。ひしめく5G端末に注目が集まらないところを見ると、鳴り物入りの一連の競争ははたして必要だったのかという気になるし、次世代の無線技術とはいってもまだ始まったばかりだということに気づかされる。
そもそも、5Gが「始まる」からといって、一般ユーザーの間ですぐに始まるわけではない。当初は通信エリアも限られ、導入が本格的に進むのは2019年の後半から2020年にかけてになるというのが業界専門家のおおかたの意見だ。
「5Gの無線通信やスマートフォンが良くなるのは、2020年になってからだろう。これからも、消費者が重視するのは価格、画面サイズ、カメラといった基本の部分であり、手頃な機種が出て、毎月の支払い額も下がってくるまで、5Gは二の次になる」。ForresterのアナリストであるFrank Gillett氏は、こう指摘している。
新世代のネットワーク技術が登場するたびに、スマートフォンメーカー上位のランキングには変動が生じる。それが、新しく市場に参入した企業にとっては狙い目になる。
MWCに先立って、5Gスマートフォンを実際にいち早く発表したのは、サムスンだった(「Galaxy S10 5G」)。だが、他の企業、特にOppoやVivo、小米科技(シャオミ)など、数年前まで米国や欧州でほとんど知名度がなかった中国のスマートフォンメーカーも、数カ月前からTwitterで小出しのデモを流してきた。こうした後発企業にとって、5Gで先頭に立つことは、他社と差別化を図り、リードをとるチャンスなのだ。
各社とも、MWCで5Gデバイスを発表した最初期のグループに属しているものの、発表した5Gスマートフォンのほとんどは現時点の最上位機種であり、価格もトップクラスだ。したがって、その顧客となりそうな層も、当面はかなり限られることになる。
大半のユーザーは、価格がこなれてきてようやく5Gスマートフォンに手を出すというのが、ありそうな展開だろう。待てばそれだけ技術も進歩し、対応ネットワークが広がる可能性もある。
今回のMWCで5Gスマートフォンを出展しなかった企業も、遅れていることをそれほど気にしていない様子だった。漠然とした長期的な視野をもって5Gの未来に取り組んでいるという点で、Appleと同列だ。
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