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グーグルの中国向け検索プロジェクトと、監視社会の実験台にされるウイグル人

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 中国の少数民族ウイグル族の人権活動家が来日して、中国政府による人権侵害・弾圧の実情を訴えた、というニュースが11月下旬に流れていた。

 この記事で思い出した「三題噺」を今回は記す。三題とは、中国政府が高度な監視社会の実験を進めている新疆ウイグル自治区での取り組みと標的にされたウイグル人の実情、習近平政権の肝いりで進んでいる「一帯一路」構想、そしてGoogleが中国市場再進出を視野に続けているとされる「Dragonfly」プロジェクトの3つだ。まずはグーグルのDragonflyプロジェクトの話から始める。

社内外から批判を浴びるGoogleの機密プロジェクト

 米国時間11月27日に、Googleの一部の従業員が経営陣に対して同プロジェクトの中止を求めるブログ記事をMediumで公開していた。このグループの名前はずばり「Dragonflyプロジェクトに反対するGoogle従業員(Google Employees Against Dragonfly)」となっている。

 この要求がこのタイミングで公に出された理由については、主要20カ国・地域首脳会議(G20)でのDonald Trump大統領と習近平国家主席との会談、そして共和党主流派のMarco Rubio上院議員ら超党派の議員たちが11中旬に明らかにしていたある法案ーー「Uighur Human Rights Policy Act of 2018」があったと考えられる(この法案は、米国から中国に圧力をかけてウイグル人への人権侵害、恣意的な勾留、拷問などをやめさせようといった主旨のもの)。

 8月初めにThe Intercept(Edward Snowden氏による米国家安全保障局(NSA)の監視活動に関する内部告発を助けて名を挙げたGlen Greenwald氏が運営する政治・社会系ニュースサイト)の報道で存在が明るみに出た同プロジェクトについては、これまで具体的なことはあまり明らかになっていなかった。ただ、Googleが存在を正式に否定していないこと、最高経営責任者(CEO)のSundar Pichai氏が主導するプロジェクトで2人の創業者も反対してはいないらしいこと、そして中国政府の意に沿う形で、検索履歴とスマートフォンの電話番号を紐づけてユーザーを特定できる機能が組み込まれていることなどは伝えられていた。

 個人がどんな情報を検索したか、誰がどんな事柄に関心を持っているかが簡単にわかるような仕組みを実装するというのは、中国市場参入にあたっての前提条件として現実的には仕方のない(法律で決められている)ことにせよ、かつて政府による情報検閲(不都合な情報の遮断)を理由の1つとして中国市場から撤退した会社にしては実に驚くべきことだ。

 そして、Google社内にはそんな危ないプロジェクトを進めることに強い違和感を覚える人間もいる。同プロジェクトへの抗議として実際に同社をやめた研究者もいた。また以前、この件で経営陣に中止を求めた書簡には1400人を超える従業員が署名していた。今回のブログ記事もそうした流れの延長線上にあり、プロジェクトを中止すべき理由の1つとして、中国政府によるウイグル人への弾圧も挙げられている。

 同プロジェクトに対する懸念の声は米政界からも上がっていた。10月にはMike Pence副大統領がこの取り組みを非難しており、一部の議員がGoogleに詳しい情報提供を求めたことも伝えられていた。

 29日には、同プロジェクトをめぐるグーグル社内での軋轢などを具体的に記した記事がやはりThe Interceptに掲載されていた(同報道に触れた米CNET記事の一部が翻訳されている)。

 これについては別の機会に改めて取り上げたい。

 話を戻そう。そんな薄気味悪い要素を含んだGoogleのプロジェクトは、高度な監視社会の構築を狙っている中国の為政者たちにとって、「飛んで火にいる夏の虫」もしくは「カモがネギを背負ってやってくる」ことにも等しい動きではないか。そう思える理由についてこの後詳しく説明する。

プライバシーが完全に失われた「完全監視社会」

 次に新疆でのウイグル人の現状について。

 「中国の徹底した監視体制下での暮らしぶり」といった意味のタイトルが付されたこの動画はWall Street Journal(WSJ)が2017年暮れに公開していたもの。リード(概要説明)部分には、「中国が北西部にある新疆ウイグル自治区を使って、国内での監視体制に関する途方もない規模の実験を進めている。個人の一挙手一投足を国家が最先端のテクノロジを使って見張っているという状況での生活がどんなものかをWSJは探ってみた」とある。

 The Economistでもこれと似た趣旨の話を5月末に掲載していた。「中国が新疆を他に類のないような警察国家に変えた」とするこの記事には「全体主義の決意と現代的なテクノロジが途轍もない規模の人権侵害を生み出している」というリードがある。

 「中国での顔認識システムと国家による統制の現状」というタイトルのThe Economistのこの動画(10月下旬に公開)にも、新疆での実験に関する話が後半のほうに出ている。

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