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学校現場が抱えるITツール運用の課題とは--先進校の教職員たちが明かす

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 11月4〜5日の2日間、東京都千代田区の紀尾井カンファレンスと千代田区立麹町中学校において、国内最大級の国際EdTechカンファレンス「Edvation x Summit 2018」が開催された。

 このカンファレンスは、日本におけるEdTechの普及をめざすもので、2018年で2度目の開催となる。当日は、海外からも多数のゲストスピーカーが来日したほか、さまざまな教育ソリューションを体験できるワークショップや、教育の課題を語り合うパネルディスカッションなどが催された。

「Edvation x Summit 2018」の千代田区立麹町中学校の会場で行われたパネルディスカッションの様子
「Edvation x Summit 2018」の千代田区立麹町中学校の会場で行われたパネルディスカッションの様子

 その中のひとつ、パネルディスカッションで開催された「学校内ICT担当に聞く、教育ICT整備と活用のコツ」の内容をレポートしよう。EdTechのように、テクノロジを活用した教育は時代の流れをみても必須であるが、一方で、日本の学校現場はまだまだアナログな世界であり、テクノロジの普及には課題が山積している。学校現場でテクノロジを生かすためには、何が必要なのか。現場で奮闘する教育者らの話から紐解く。

テクノロジの導入で、新たな課題に直面する教育現場

 これまで紙と鉛筆で勉強するのが当たり前だった教室に、タブレットやPCが導入されれば、さまざまな課題が生じるのは予測がつくだろう。たとえば、筆者が教育現場の取材でよく聞く話は、生徒が使う端末でYouTubeの視聴を許可するかどうかという課題。いまやYouTubeには教育的に活用できるコンテンツも増え、生徒からは「部活動で YouTubeの動画を見ながら練習したい」といった要望も挙がるという。しかし、その一方で、学習に不適切な動画も混在しており、生徒の自由な視聴を認めるかどうかは、教育者にとって判断が難しいところだ。

 このように、いま教育現場でテクノロジを活用する教育者たちは、これまでになかった課題に直面している。具体的には、「生徒が使う端末には、どのような規制を設けるべきか」「教師のITスキルはどう育成するか」「現場での端末管理やメンテナンスはどう対応すべきか」といった具合で、こうした新しい課題に対して教育者たちは手探りで進んでいるのが現状だ。

児童生徒が使うタブレットには、どのような規制を設けるべきか。情報活用能力を伸ばしつつ、安心・安全に使える環境をめざして教育者らは頭を抱えている。(写真:筆者提供)
児童生徒が使うタブレットには、どのような規制を設けるべきか。情報活用能力を伸ばしつつ、安心・安全に使える環境をめざして教育者らは頭を抱えている(写真:筆者提供)

 もちろん、これらの課題に対しては、予算が確保できれば解決できるものもあるが、多くの教育現場は、そんな恵まれた環境にない。学校現場でタブレットひとつ使えるようにするためには、無線LANや大型ディスプレイの整備、デジタル教材や授業支援ツールなど、整備しなければならないICT機器やITソリューションは多く、教育者たちは限られた予算の中で課題解決の糸口を探っている。

 では、実際にタブレットやPCなどICT機器を導入した学校では、どのような課題に直面しているのだろうか。パネルディスカッションには、生徒がiPadを1人1台所有する学校の教育者らが登壇し、ざっくばらんに語られた。モデレータは教育ICT分野に詳しいZ会の野本竜哉氏が務め、テーマは「スタートして分かった教育ICTの課題」と「教育現場のICT運用はどこまで外注すべきか」という2点に絞って進められた。

テクノロジを生徒に与える、教師の意識改革が課題

 モデレータの野本氏はまず、3名のパネリストらにそれぞれの学校におけるICT環境整備や、導入されている教育サービスについて尋ねた。その後、「スタートして分かった教育ICTの課題」をテーマに挙げ、IT先進校の素顔に迫った。

 日本大学三島高等学校・中学校(以下、日大三島)の大川教諭は、「iPadの導入から3年目になるが、教員間でITスキルに差ができてしまったことが課題だ」と述べた。同校は、新入生が入学するタイミングで段階的にiPad導入を進めてきたが、現場には2018年で3年目の教師もいれば、初めてiPadを使って授業を行う教師もいる。この差をどう縮めて、授業の質を向上させていくか、それが一番の課題だというのだ。

左から、大川幸祐教諭(日本大学三島高等学校・中学校)、横濱友一氏(聖徳学園中学・高等学校 CISO 兼 情報システムセンター センター長)、乾武司教諭(近畿大学附属高等学校 ICT教育推進室 室長)
左から、大川幸祐教諭(日本大学三島高等学校・中学校)、横濱友一氏(聖徳学園中学・高等学校 CISO 兼 情報システムセンター センター長)、乾武司教諭(近畿大学附属高等学校 ICT教育推進室 室長)

 ちなみに、同様の課題は日大三島だけに限らず、どこの学校にも起こり得ることだ。対応策としては校内研修などを通して教師同士でITスキルを研鑽するのが一般的だろう。教師間のITスキルの差は、取り組みに対するモチベーションや意識に影響を与えてしまうことがあり、重要な問題として捉えている学校が多い。

 聖徳学園中学・高等学校(以下、聖徳学園)の横濱氏は、「当初、めざしていたICT教育のビジョンから外れてしまうことがあり、こんな風にやっていきたいと思ってもビジョンを守ることがむずかしい」と打ち明けた。現場では、生徒がタブレットを使うことで、“何か問題が起きるかもしれない”と考える教師や保護者も多く、新しい取り組みに対してブレーキがかかってしまうこともあるようだ。

 一般的には、こうした不安に対しては、機能制限でガチガチに固められたタブレットを生徒に渡し、使い方を限定してしまう学校も少なくない。そうなれば、生徒がテクノロジのメリットを活用することができず、学校のタブレットは“つまらないもの”になりかねないため、教育者らのさじ加減が難しいところだ。

ICTを授業で活用する目的や、めざす教育の姿は何か。その部分がしっかりしていなければ、タブレットを導入することが目的になってしまうとパネリストらは指摘した。
ICTを授業で活用する目的や、めざす教育の姿は何か。その部分がしっかりしていなければ、タブレットを導入することが目的になってしまうとパネリストらは指摘した

 近畿大学附属高等学校(以下、近大附属)の乾教諭は、「iPadを導入したことで、教師の授業設計力や覚悟が問われるようになった」と述べた。同校ではiPad運用のポリシーとして、アプリのダウンロードやウェブサイトへのアクセスなど、生徒による自由な使い方を認めているが、良い面もあれば、悪い面もあるという。乾教諭は「生徒が自由にiPadを使えることで、これまで教師が引き出せなかった生徒の可能性を感じる場面が増えた。しかし、その一方で授業中にiPadで遊んでしまったり、SNSに不適切な投稿をしてしまったりと、正しくない使い方をする生徒もいるのは事実」と話した。

 乾教諭はそうした生徒の行動に対して、何か問題が起きたから、“使うのを禁止にしましょう”という指導は根本的な解決につながらず、全体の意識も高まらないと指摘した。生徒が悪いことをした時こそ、情報リテラシーを伸ばす教育の機会であり、教師はその覚悟を持って生徒と接するべきだというのだ。また授業に対しても「生徒が授業中にiPadで遊んでしまうのは、iPadが自由に使えるからではなく、教師の授業がつまらないからだ」と指摘した。

 「教師の授業が魅力的であれば生徒は教師の話を聞く。魅力のない授業から教師を守るために、生徒のiPadに制限をかけるのはおかしい」(乾教諭)。テクノロジの導入によって、教師はこれまで以上に授業設計力が求められるようになるが、「教師であれば、ここを頑張ってみたい」(同氏)と会場に投げかけた。

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