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政府も後押しするEdTech--国内最大級イベント「Edvation x Summit 2018」レポート

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 一般社団法人教育イノベーション協議会は11月4日〜5日の2日間、東京都千代田区の紀尾井カンファレンスと千代田区立麹町中学校において、国内最大級のEdTech国際カンファレンス「Edvation x Summit 2018」を開催した。

 2018年で2回目となった同カンファレンスは、日本の産業界や教育関係者らが一同に集結し、テクノロジを活用した教育のイノベーション「EdTech(エドテック)」の普及を目指すもの。当日は、海外からもゲストスピーカーが多数来日したほか、さまざまな教育ソリューションが体験できるワークショップや、教育の課題を語り合うパネルディスカッションなどが催された。2日間合わせた来場者数は2000名を突破し、日本のEdTechの盛り上がりを感じさせるカンファレンスとなった。

「Edvation x Summit 2018」には、教師や行政担当者、企業の人材育成担当者、ベンチャー/スタートアップ関係者のほか、保護者や学生、生徒など多くの来場者が詰めかけた。写真は紀尾井カンファレンス会場のメインル―ムの様子
「Edvation x Summit 2018」には、教師や行政担当者、企業の人材育成担当者、ベンチャー/スタートアップ関係者のほか、保護者や学生、生徒など多くの来場者が詰めかけた。写真は紀尾井カンファレンス会場のメインル―ムの様子

なぜ、いま「EdTech」が熱いのか

 Edvation x Summitは、2017年にスタートした国際EdTechカンファレンスだ。EdTechの推進を目的とし、2回目の開催となった今年は、教育関係者を中心に2000名以上もの来場者が訪れた。なぜ、これほどEdTechのカンファレンスに人が集まるようになったのか。

 実はいま、日本のEdTech業界には新しい風が吹いている。2017年に安倍首相が成長戦略「未来投資戦略2017」でEdTechについて言及したり、2017年12月には超党派が「EdTech推進議員連盟」を設立したりしたことから、注目が高まっているためだ。中でもインパクトを与えているのが経産省で、同省は2018年1月に「『未来の教室』とEdTech研究会」と呼ばれる有識者委員会を設置し、EdTechを本格的に推進しはじめた。具体的には、EdTech関連の予算を設け、新しい学びの実証実験に着手するなど、教育分野で動きを活発化させている。

「Edvation x Summit 2018」では、経産省が主導する「未来の教室」実証事業において中間報告も行われた
「Edvation x Summit 2018」では、経産省が主導する「未来の教室」実証事業において中間報告も行われた

 経産省のこうした動きの背景にあるのは、日本の産業界全体がイノベーションの起こりにくい体質になってしまった危機感だ。どの産業においても、業界に新たな旋風をもたらすイノベーターや、課題解決に挑むチェンジメーカーが不足し、停滞感に包まれている。この状況を打破するためには、人材育成を担う教育の変革が必須であるとの考えから、経産省はEdTechを通して教育を支援しているのだ。

 一方で、日本のEdTech分野はというと、テクノロジの進化とともに、新しいソリューションが登場してはいるが、既存の教育に大きなインパクトを与える動きには至っていない。そこで、日本の産業界や教育関係者が一丸となって教育・人材育成分野のイノベーションを推進するEdvation x Summitが開催された。

 同カンファレンスの特徴としては、「国内外の先進事例」「イノベーティブで多様な教育ソリューション」を体感できる場であるということ。一般的に、日本で開催される教育系のカンファレンスはソリューション展示が多いが、同カンファレンスは、米国最大級の教育カンファレンス「SXSW EDU」をモデルにし、来場者らが教育を変えるパッションを持てる場であることを目指している。

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千代田区立麹町中学校の会場では、VRやドローンなどさまざまな教育ソリューションが体験できるワークショップが設けられた
千代田区立麹町中学校の会場では、VRやドローンなどさまざまな教育ソリューションが体験できるワークショップが設けられた

2018年の教育トレンドは“プログラミング”

 基調講演には、同カンファレンスのモデルにもなった米国の教育系イベントSXSW EDUより、General ManagerのGreg Rosenbaum氏が登壇した。同氏は、「EdTech国際潮流」と題して、最新のEdTechトレンドについて語った。

 同氏は、SXSW EDUのカンファレンスについて「最も重要視していることは、人と人がつながり、教育にパッションを持った人が同じ時に一つの場所に集まり、顔と顔を向き合わせて語り合うことだ」と語った。

「Edvation x Summit 2018」の基調講演に登壇したGreg Rosenbaum氏(SXSW EDU General Manager)
「Edvation x Summit 2018」の基調講演に登壇したGreg Rosenbaum氏(SXSW EDU General Manager)

 またSXSW EDUは、最新の教育動向を幅広く網羅したセッションが多数用意されていることで知られているが、セッションのアイデアや提案は「PanelPicker(パネルピッカー)」と呼ばれるオンラインシステムでコミュニティや一般から広く集めている。つまり、教育現場や関係者らのリアルな声がセッションに反映されているということだ。

 ちなみに、2019年開催のSXSW EDUに向けたパネルピッカーの投票は終わっており、「2018年の結果は“プログラミング”がトレンドだった」と述べた。またプログラミング以外には、社会性や感情のコントロール、対人関係構築スキルを学ぶ「ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(Social Emotional Learning)」の需要が伸びているほか、AI関連の関心も依然高いという。要するに、仕事で必要とされるITスキルへの関心がより高まっている一方で、人間の感情に寄り添う学びにもニーズが出てきたといえる。

2019年開催予定のSXSW EDUに向けて、パネルピッカーに寄せられた提案やアイデア。写真は10個のハイライトに整理したもの
2019年開催予定のSXSW EDUに向けて、パネルピッカーに寄せられた提案やアイデア。写真は10個のハイライトに整理したもの

 こうした動向を踏まえて同氏は「学びのプロセスも変わってきている」と述べた。具体的には、より人間中心のアプローチ(Human-Centered Approach)が重要であること、学習者のニーズを満たすために、データに基づいた成績を記録するダッシュボードの必要性が高まること、また、「創造性・感情知性(emotional intelligence)・コミュニケーション・クリティカルシンキング」といった人間的なスキルや、図書館や博物館のようなコミュニティスペースが、改めて創造的な「場」として価値が高まっていることを述べた。

 同氏は、EdTechにおいては、テクノロジの役割が変わってきたと指摘した。これまではソリューションとしてのテクノロジであったが、これからは学習者の人間関係をつなぐ土台として、またはファシリテータとしての役割を担っていくだろうと述べた。教育分野におけるテクノロジ活用の最大のメリットは、「個」に応じた学びが提供できることであるが、個別学習だけでなく、学習者同士が価値あるつながりを持てることが重要になってくるといえる。

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