NTTドコモは3月23日、人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の連載30周年を記念したコラボスマートフォン「JOJO L-02K」を3月23日に発売した。台数は1万台限定で、ドコモオンラインショップでの価格は約12万5700円。同社が2012年8月に発売したジョジョスマホ「L-06D JOJO」から、約5年半ぶりのコラボモデル第2弾となる。
今回も原作者・荒木飛呂彦氏による描き下ろしイラストや、新システムの「擬音モード」、さらに進化したカメラアプリなど、豊富な独自コンテンツを搭載。開発パートナーは前モデルと同様にLGエレクトロニクスで、ドコモの冬春モデルとして販売されるハイスペックスマートフォン「V30+」をベースに開発している。
三度の飯よりジョジョが好きな筆者も、さすがにジョジョスマホの第2弾が実現するとは思っておらず、冬春モデルの目玉の1つとして発表された際には、“月までブッ飛ぶ衝撃”を受けたわけだが、いかにしてジョジョスマホの“時は再び動き出した”のか。前モデルの開発も担当した、NTTドコモ プロダクト部 第二商品企画担当の鹿島大悟氏と、今回のプロジェクトから参加したプロダクト部 第一商品企画担当の津田浩孝氏を直撃した。
なお、できるだけ奇妙なシチュエーションで取材をしたいという思いから、ジョジョグッズで埋め尽くされた鹿島氏の自宅での取材を敢行。その内容は、それぞれの思い入れのあるエピソードから、開発者2人の出会い、端末に込めた強烈なこだわりまで多岐にわたり、撮影も合わせると約5時間にわたるロングインタビューとなった。そのすべてをお伝えしたいという思いから、本記事の文字数も2万5000字(そして、ジョジョの「部」数に合わせて8ページ構成)を超えてしまっているため、ここから先は“覚悟ができている”方のみ、読み進めていただければ幸いだ。
——早速お話を聞いていきたいのですが、まず鹿島さんが所有している複製原画の数に圧倒されます(笑)。何枚持っているんですか。
鹿島氏 : 複製原画は過去に発売されたものはすべて持っていて、それに加えて抽選で当たるものも何枚か持っています。家宝はやはり「女王陛下の少年スパイ!アレックス」シリーズの表紙の複製原画ですね。そのほかにも、コミックスやフィギュアの超像可動シリーズ、あとは一番くじシリーズも原作ベースのものについては、ダブルチャンス賞などを除けば一通り持っています。
ファッション系では、数量限定で発売されたセイコーとコラボした時計のブチャラティモデルとフーゴモデルの2つを持っています。ULTRA-VIOLENCEシリーズのTシャツも2桁は確実に持っていますね(笑)。
——鹿島さんは前モデル(「L-06D JOJO」)のインタビューの時にも、部署の垣根を超えて開発担当に抜擢されるなど、明らかに只者ではないオーラ(ここでは波紋)を発していましたが、これほどとは……。津田さんも、レアグッズなど多数お持ちなのでしょうか。
津田氏 : 僕はそこまでコレクターではないので、鹿島ほどグッズは持っていないのですが、いろいろとジョジョエピソードはありますね。たとえば、2013年に、東京大学文学部と集英社による公開講座(「ことばを読む ひとを知る」)が開かれたのですが、荒木先生が特別招待講師として漫画のセリフについて語る1回の講義に参加するためだけに、そのほかも含めた全12回に通いました。
荒木先生の講義の日には、ほぼ最前列の中央に座っていたのですが、講義の後に質疑応答の時間があったので、バシッと手を上げて「ジョジョのグッズや二次創作に関わっている人に対して大切にしてほしいことはありますか」と聞いたんです。当時はまだ第2弾のプロジェクトがあったわけではないんですが、自分の中では作る気満々だったので、この質問をしたんですね。それに対して荒木先生は、「それぞれの分野のプロフェッショナルの方が判断されることを尊重して任せているけれど、お金儲けを優先したものではない、ファンが喜ぶものを作ってほしい」といったお話をされていました。その言葉は、今回の製品づくりにも生きていると思います。
あとは、「週刊少年ジャンプ展」(東京・六本木)の開催を記念した、荒木先生と原哲夫先生のトークショーが2017年9月に開催されたのですが、抽選で運良く数十人の枠に当選して参加することができました。もちろん、ジョジョスマホを作っているから特別枠で入れたというものではなく純粋に当選したので、会場で集英社の方とお会いした時には「なんでいるの?」と驚かれましたね(笑)。
——まさにポコロコ並の強運の持ち主ですね!まだまだジョジョ愛をお聞きしたいところですが、時間が足りなくなってしまうので本題に移りたいと思います(笑)。今回、5年半ぶりにジョジョスマホが復活したわけですが、どのようにしてこのコラボが再び実現したのでしょう。
鹿島氏 : 「ジョジョだから」ということに尽きるんですが、コラボモデルは担当者の思いが強いコンテンツでしかできないと思っています。前モデルをご購入いただいたファンの方とお話しする機会もありましたが、コンテンツ自体はとても喜んでいただけたのかなと思います。僕個人も動作が重くなる限界までヘビーに使っていました。ただ、第1弾を発売した5年前と今とで大きく違うのが、ドコモがiPhoneを取り扱っていたかどうかということです。やはり販売のボリュームや話題性でいってもiPhoneが強力なこともあり、結果としてコラボ端末がここ数年で減っていったという現実があります。ただ、ここは個人的な思いもあるのですが、やはりAndroidをフルカスタマイズした端末を使いたいというニーズは必ずあると思います。その時にどのコンテンツで勝負すればいいかを考えると、そこには常にジョジョがありました。
津田氏 : やはりビジネスですので、コラボモデルでお金になるのかと言われてしまうわけです。普通のスマートフォンに比べれば、コラボモデルは圧倒的にリソースが掛かりますし、かといってマーケットのサイズがiPhoneやXperiaなどの人気機種よりも大きいわけではない。もちろん、お客さまに喜んでいただけるというところには僕らも確信を持っているのですが、それだけで会社を動かせるかというとなかなか難しく、今回も必ずしも順風満帆でスムーズにきたわけではありません。それでも、何とか日の目を見ることができたのは、僕らが社内で推進し続けたところもあると思いますが、それ以上にジョジョという作品が世の中的に突き抜けていて、別格の評価をされているところがあるんだと思います。
2012年に初めて開発された前モデルについても、1万5000台と決して台数は多くはなかったんですが、これがすごくインパクトを持って受け入れられてお客さまに喜んでいただけたことは、社内でも理解してくれた人は結構いました。それがあった上で、やはりこれを超える究極のジョジョのスマートフォンを作りたいという思いをもって何とかここまでくることができました。
鹿島氏 : 前モデルでは、僕は割とコンテンツに徹することができたので、自由気ままにやりたいことをやらせてもらったという感じなんですけれども、今回のように1つの商品のプロセスとして頭から関わってみると、やはりたくさんのハードルがあって、何度も挫折しそうになりました。1度作っているから第2弾は簡単に作れるでしょうというのが世の中の反応なのかもしれませんが、全くそんなことはなくて、恐らく前回よりもここまでの商品にするのは困難でした。まさに、“幸運なくしては近づけない道のりだった”(第5部・ブローノ・ブチャラティのセリフ)と言えるでしょう。
——1人のファンとしては、市場環境の変化もありコラボモデル自体が減っている中で、あえてジョジョスマホを再び開発してくれた、お2人の“命がけの行動ッ!ぼくは敬意を表するッ!”(第5部・パンナコッタ・フーゴのセリフ)。
鹿島氏 : そういうスピリットが、僕らにも自ずと継承されているのかもしれません。ジョジョがまだ第1~2部の頃って、ジャンプ作品の中でも特にマイナーな扱いをされていたと思うんですよ。でも、あの強力な作品群の中でやっているからこそ、僕らも惹かれるものがあったと思うんです。そういう意味では、ドコモとしても当たり前のことをしていても面白くないので、いろいろな挑戦をしていきたいと思っています。
私のボス(上司)の口癖なんですが、普通は「魅力ある商品を作りましょう」って言うじゃないですか。でも、ボスは違っていて「魔力のある商品を作りましょう」って言うんです。僕はこの言葉が大好きなんですよ。今回はある種、魔力じゃなくてスタンド能力なんですけども、そういうブッ飛んだ世界観を出していきたいと思っています。たとえばこの冬春モデルでも「M」という二画面のスマホをラインアップしています。そういう形状が違う端末も含めて、いろいろなバリエーションの世界観を広げていきたいと僕たちは考えています。
津田氏 : 突き抜けたものじゃないとやる意味がないということではないんですけれども、やはりその方が買った人に1番喜んでいただけると思っています。やっぱり僕ら自身もジャンプを読んでいた世代じゃないですか。その中で最初に好きな作品にジョジョという名前が挙がる人とは、すぐに打ち解けられたりしますよね。まさに“スタンド使い同士は引かれ合う”ということです。その引力を感じるという感覚が実感としてあったから、利用者の皆さんにも喜んでいただけるという確信を持って開発を進めることができましたね。
——ところで、なぜ津田さんは今回の第2弾からプロジェクトに参加されたのでしょうか。
津田氏 : ちょうど前のモデルが出る少し前まで私は関西にいて、2011年に東京に転勤してきたんです。その時から、ジョジョとコラボレーションした端末を作ってやろうという野心を持っていたのですが、当時はそのやり方も道筋も全然見えていませんでした。そんな時、ある会議で配られた商品のロードマップに、ジョジョスマホが載っているわけですよ。目を疑いましたよね、「あれ、まだ提案してないよ」って(笑)。
ただ、その時点ではもうプロジェクトも結構進んでいてそこから参加するという形は取れなかったんですけれども、それも今になって思えば、取れなかったんじゃなくて取らなかったんだと思います。当時の自分は“受け身の対応者”(第7部・リンゴォ・ロードアゲインのセリフ)だったんだなぁと。
鹿島氏 : 小ネタ挟んできますねぇ(笑)。
津田氏 : ちょうどその頃なんですよ、鹿島と知り合ったのも。私がこっちに転勤してきた時に、「お前ちょっと鹿島と会ったほうがいい」と他の同期に引き合わされて、少し話したらすぐに打ち解けたんですけども、その時にはすでに彼が第1弾のプロジェクトに参加していました。いま思えば、彼の“漆黒の意思”(第7部・ジョニィ・ジョースターの目的を達成するためなら手段を選ばない程の強い意思)があったからこそ、前回のプロジェクトがうまくいったところはあると思います。
その時から、私と鹿島は第2弾をやる前提でいましたし、結果的に今のタイミングで2人ともプロダクト部に入れて、すべてのリソースをこの端末にかけられたというのは、ある意味で幸運でもあったし、周囲の理解もあってのことかなと思います。
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