NTTドコモは、人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」とコラボしたスマートフォン「L-06D JOJO」の予約受け付けを8月18日に開始する。LG製の5インチスマートフォン「Optimus Vu L-06D」をベースに開発したモデルで、連載25周年を迎えたジョジョの魅力をふんだんに盛り込んだスマートフォンとなっている。
ファンとしては何としても手に入れたいジョジョスマホだが、販売台数はなんとわずか1万5000台。6月末に3万台限定で発売したエヴァンゲリオンとのコラボスマホ「SH-06D NERV」が予約開始から間もなく完売したことを考えると、同モデルでも激戦になることは間違いないだろう。
発表直後から話題を集めているジョジョスマホは、どのような経緯で開発にいたったのか。NTTドコモでコラボ端末全般を担当するプロモーション部 第2制作の岡野令氏、商品企画を担当するプロダクト部 第二商品企画の許潤玉(ほうゆの)氏、そしてジョジョを愛するあまり、部署の垣根を越えて開発に携わったというクレジット事業部 DCMX技術の鹿島大悟氏に、開発の背景や各種機能へのこだわりを聞いた。
ドコモでは過去にもいくつかのコラボ端末を発売しているが、主にファッションブランドやデザイナーとコラボし、外装のデザインにこだわった端末を中心に開発してきた。今回、漫画作品とのコラボが実現した背景には、スマートフォンならではの端末の特性が関係していると岡野氏は話す。
「フィーチャーフォンと比べて、スマートフォンは前面のほとんどを液晶パネルが占めているため、背面しかカスタマイズできずコラボの価値が落ちてしまうという問題がありました。そこで、外装よりも液晶画面の中で最大限楽しめて、かつデザインの世界もしっかりとあるテーマが求められたんです」(岡野氏)
ドコモでは、自社で電子書籍サービス「BOOKストア」を展開するなど電子書籍事業に力を入れており、新たに開発するスマートフォンでも電子書籍にフォーカスすることになった。そこで、よりデザインの世界観を表現するために、小説などではなく漫画作品とコラボすることにしたという。
では、なぜ数多くの作品の中からジョジョが選ばれたのだろうか。岡野氏は「当然いま流行っているワンピースやブリーチ、ナルトなどでもいいと思うのですが、お金も持っていて、こういう限定的なものにも飛びついてくれる世代というとやはり我々くらいの世代。30代前半から中盤くらいの世代が多いと思いました。じゃあこの人達が青春時代に読んでいて、いまでもハマっているものってなんだろうと考えたときに、ジョジョが浮かび上がったんです」と背景を説明。自身もジョジョファンだったことから同モデルの開発が決定したという。
ジョジョスマホの企画が決まって間もなく、開発への参加を名乗り出たのが鹿島氏。自身のデスクにジョジョの第1~6部(計80冊)を常に置いているほど熱狂的なジョジョファンだ。
日頃はクレジット事業部で、クレジットサービス「DCMX」やおサイフケータイ機能「iD」のサービス企画・開発を担当し、端末の開発とは関わりのない鹿島氏だが、ジョジョスマホの開発に参加するため、自身の熱い思いを岡野氏にメールで伝えたという。「(メールで)ジョジョスマホを作るためにドコモに入社したと送りました(笑)」(鹿島氏)
しかし、他部署の鹿島氏をメンバーに加えるべきか、開発陣は迷っていたという。そんなある日、岡野氏が、ジョジョの「一番くじ」(ハズレなしのキャラクターくじ)を引こうと都内のTSUTAYAに向かったところ、鹿島氏が店内の一番くじを数万円分買い占めていたところに偶然居合わせたそうだ。
「それがあって、この気持ちは本物だなと。ジョジョ好きの人ってたくさんいるんですけど、すべての部を読んでいない中途半端な人もいて。そういう人に比べると、彼は格段に命をかけてるんですよ。そういう人だったら(メンバーに)入れようかなと」(岡野氏)。こうして鹿島氏の参加が決まったという。
「実はクレジット事業部でもジョジョとのコラボを企画したことがあるんです。ジョジョ立ちをしながらおサイフケータイをかざすキャンペーンだったのですが、タイミングや予算の関係もあって、実現できませんでした。しばらく落ち込んでいたんですが、ジョジョスマホのおかげで生き返りましたね」(鹿島氏)
それでは、端末の特徴を紹介していこう。まずは外装のデザインから。やはり印象的なのは、背面に描き下ろされた第6部の主人公・空条徐倫(くうじょう ジョリーン)のイラストだ。原作者の荒木飛呂彦氏がジョジョスマホのために描き下ろしたそうだが、なぜ徐倫が選ばれたのかは、岡野氏にもわからないという。
「荒木先生に、待ち受け画面用のイラストと筐体に入れるイラストの2点の描きおろしをお願いをしただけで、特にキャラクターの指定はしませんでした。僕らがそれぞれに好きなキャラを描いて下さいと言っても、ファンの方は納得しないじゃないですか。それが荒木先生が選んで描いたものであれば、どんなイラストであっても、ファンとしては納得できるものなので、あえて僕らは何も言わなかったですね」(岡野氏)。鹿島氏によれば「イラストの配置とか、サインの角度とかすごく細かいところまで指示していただいています」とのこと。
端末カラーはホワイトのみだが、当初はブラックの予定で開発が進められていたという。「黒にシルバーを入れたり、模様を入れたり、黒に黒のイラスト入れたり、パネルにすると数十枚サンプル作って荒木先生とやりとりしていたんですが、途中で先生が白がいいかなとおっしゃって、それで最後の最後に白に決まったんですよ」(岡野氏)
特殊な印刷方法を用いているため、使っていくうちに背面のイラストが剥げてしまう心配もないそうだ。そのほか端末の正面には、モログラム調の液晶パネルを採用。第4部に登場する漫画家・岸辺露伴のサインが入ったタッチペンも付属する。「やはり僕らとしてはケースはつけてほしくないですね」(鹿島氏)
気になるのは5インチというサイズ。正直スマートフォンとして使うには大きすぎる印象があるが、やはり電子書籍との親和性を重視し、あえてこのサイズを選んだのだという。「実際に使っている端末を解約して乗り換えるという人はそこまでいないと思っています。おそらく、2台持ちで通話は別の端末でという使い方になるのではないでしょうか」(岡野氏)
一方で、コラボ端末だからといって端末スペックや機能は一切妥協しないと岡野氏は強調する。実際同モデルも、OSにAndroid 4.0を採用し、1.5GHzのデュアルコアCPU、1Gバイトのメモリ、2000mAhのバッテリを搭載したハイスペックモデルだ。
「コラボ端末は、あらゆる面で機能的に最高のものじゃないといけないと思っています。2台持ちをしたり、他キャリアから乗り換える時に、もともとの携帯として不安が残ってしまってはマズいんですよね。この端末には、防水も含めてほとんどの機能が載っています。そうすることで後悔せず、納得して買うことができると思っています」(岡野氏)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス