あの「鮒ずし味」はどうして生まれた?--カルビー・野原氏が明かす“ご当地ポテチ”誕生秘話

 朝日インタラクティブはこのほど、先進的なマーケティング活動を推進するマーケターを表彰する「CNET Japan CMO Award 2017」の授賞式を開催した。PR視点を取り入れ、多面的、かつ多様性を持った優れたマーケティング活動をした企業に贈られる部門賞「PR TIMES賞」には、都道府県ごとの“地元の味”をポテトチップスとして商品化し、現地で販売するカルビーの「ラブジャパン プロジェクト」が選出された。

 その後のパネルディスカッションでは、カルビーのコーポレートコミュニケーション室 広報部広報課課長である野原和歌氏が、賞のプレゼンターを務めたPR TIMESのコミュニケーションプランニング本部 マネージャー大久保麻子氏と登壇し、プロジェクト成功に至った経緯などを語った。


ご当地ポテチ、その発端は「いかにんじん味」

 まずは野原氏が、ラブジャパン プロジェクトを立ち上げた経緯やプロジェクトを進めるにあたって工夫した点などを説明した。

 このプロジェクトは、同社が2017年に福島県福島市と共同で「ポテトチップス いかにんじん味」というご当地商品を開発・販売したことに端を発するという。同社の代表取締役社長である伊藤秀二氏は福島県出身で、福島市長とも親交があったことから誕生したそうだが、これが福島で大ヒットしたのだという。「通常の1.5倍程度の売れ行きで増産を重ね、ひとつの商品としては過去に類を見ないほど売れた」(野原氏)。

 そのインサイトを分析すると、実際に購入したのは日常的にポテトチップスを購入している消費者ではなく、普段はポテトチップスを買わない人たちだったという。また、主に知人や遠方に暮らす親類などに贈るため購入されることが多く、いわゆる“箱買い”する人も多かったのだそうだ。「それを知ったときに、商品を通じたフードコミュニケーションが生まれたと感じた。新規顧客創出ということ以上に、地元への愛情でつながることができる商品が実現した。そこで急遽、この取組みを47都道府県で展開することになった」(野原氏)。


第1弾として販売した17商品は約700万袋を売り上げた

 そして同社は、47都道府県のご当地の味を採用したポテトチップス商品の開発に向けたマーケティングに着手。第1弾となる17道府県の商品を9月に地域限定で発売し、想定の1.5倍にあたる合計700万袋を販売したという。第2弾19商品は11月に発売しているほか、2018年2月には第3弾を予定しており、これをもって47都道府県のご当地の味が揃うのだという。「既存商品と競合することなく純粋に売上が伸びた。購買者は当初の見込み通り普段ポテトチップスを購入しない人が多い。また、Twitterでは16万5000件の声が寄せられた」(野原氏)。

 野原氏は、こうしたご当地味のポテトチップス開発について「とてつもなく時間をかけた」と振り返る。もちろん、担当者は47都道府県すべての“ご当地で愛される味”に精通しているわけではなく、誰に相談してコラボレーションしたらいいかもわからない。そこで、地道にリサーチして各都道府県庁に問い合わせ、企画趣旨を説明して理解を求めたのだという。「各都道府県でワークショップを行い、100案くらいのアイデアから絞り込んで商品候補となる試作をしていった。都道府県の方や地元自治体の方が満足できる味を追求した」(野原氏)。加えて、地元の魅力を発信するPRムービーを地元の人たちと制作したほか、伊藤秀二社長や役員が各都道府県の知事を表敬訪問したのだそうだ。


各都道府県庁と共同で行った商品開発のプロセス

 こうした成功を実現するために行ったマーケティングにおいて、野原氏が強く主張したのは、“地域共創”というキーワードだ。商品は各都道府県庁と共同で開発し、情報公開も各都道府県庁の記者クラブを通じて地元メディアに対して実施。各商品の発表会も販売する地域でのみ行い、地元メディアでの露出を最大化させたのだという。「地域発信の最大公約数を目標とした。加えて、社会をどのように味方につけるかを考えた。(台風の影響でじゃがいも不足となった)ポテチショックがあったとこもあり、単なる商品で終わることなく、どのようにすればビジネスの根幹である農業を理解してもらえるかを考え、コミュニケーションを推進した」(野原氏)。


「ラブジャパン プロジェクト」における共創モデル

 野原氏は、各都道府県の地元自治体、地元消費者、カルビーの3者で価値を共創するエコシステムを通じて、商品の売上だけでなく地元の魅力を全国に発信することを目指したと語る。「3者それぞれの可能性を引き出す取り組みになるようにプロジェクトを進めてきた。マーケティング施策、コミュニケーション施策を通じて各地域のお客様からの共感という点で高い熱量を維持できたため、予想を超える売上を記録できたのではないか」(野原氏)。

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