「CNET Japan」を運営する朝日インタラクティブは11月10日、カスタマーエクスペリエンス(CX)をテーマにしたセミナー「CNET Japan Conference 2015」を開催。冒頭では、10月28日に発表された第3回「CNET Japan CMO Award」の授賞式が開かれた。
CNET Japan CMO Awardは、マーケティング戦略を経営に生かして実績をあげている企業に注目し、マーケティングに関する全社的な統括責任者であるCMO(Chief Marketing Officer)、またはマーケティング施策で中心となった人物を選出、表彰するもの。3回目となる今回は、伊藤園マーケティング1部の大楽泰督氏、日本航空 商品・サービス企画本部 業務部長の黒田浩氏、パルコ WEB/マーケティング部 部長の林直孝氏の3人が受賞した。
受賞式後のパネルディスカッションでは、3人が各社のマーケティング施策に対する考え方を語った。
伊藤園の大楽氏が掲げたマーケティングのキーワードは「愛着」だ。さまざまな体験を生み出すことで、ブランドに対する顧客の愛着を生み出そうというアプローチである。
たとえば、同社の代表商品「お~いお茶」のラベルに相手の名前とメッセージを付け加えたオリジナルボトルを贈れる「お~い○○さん」キャンペーンでは、キャンペーンをほとんど告知しなかったにも関わらず、TwitterなどのSNSで情報が拡散。拡散された情報がきっかけで予想を上回る反響が生まれたという。感動的な体験を生み出し拡散の原動力とすることで、ブランドに対して愛着を抱くきっかけを作り出すことに成功したケースだ。「感動体験によって、いつも飲むお茶の味わいも変わるのではないか」(大楽氏)。
また同社は、位置情報を活用したゲーム「Ingress」ともコラボレーション。大楽氏によれば、「プレイヤーのIngressに対する愛着に寄り添うことで、伊藤園の製品も好きになってくれるのではないか」と考え、同社が全国に展開している災害用自動販売機を“ポータル”化したり、仙台をはじめ全国で開かれたユーザーイベントに協賛したりしたのだという。
災害用自動販売機をポータル化したことによる集客効果は予想以上だったそうで、商品が売り切れるまで自販機で商品を購入したり、わざわざ営業所にお礼を言いに来てくれたりするファンもいたとのことだ。
ユーザーイベントには伊藤園の社員も参加し、ファンと交流した。「もう伊藤園の自販機でしか商品が買えない」という声が数多く聞かれたそうだ。大楽氏はこうしたコンテンツとのコラボレーションについて、「ファンの愛する世界観を壊さないことが最も重要。その上で、カスタマーエクスペリエンスを提供しながら、リアルな交流を通じてお客さまと一緒にそれを体験することで、ファンの中に伊藤園への愛着を持つ人が増えてくれればと思う」と語った。
なお、この仙台のイベントではパルコ仙台店もファンに向けた施策を実施。本来はセールなどの情報やショップの宣伝などを掲出するビルの垂れ幕に、「Welcome to SENDAI, Agents. It’s Time To Move.」というメッセージを掲出した。パルコの林氏によると、これに感激したファンが写真に収めてSNSで共有するなどしたことで、盛り上がりを見せたという。「直接的なパルコの宣伝にはならないが、ファンが盛り上がってくれることで“ここにパルコがある”ということそのものの認知向上につながった」(林氏)。
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