横浜銀行とワコールが語るデータ活用の重要性--「CMO Award」パネルディスカッション - (page 3)

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データ活用で実現する顧客志向とは

 ここからは朝日インタラクティブ 編集統括 CNET Japan編集長 別井を含めた3名によるパネルディスカッションを紹介しよう。なお、本稿では割愛したが、ワコールは自社製コンディショニングウェア「CW-X」のイメージキャラクターにイチロー選手を起用している旨のプレゼンテーションが行われた。


左から、朝日インタラクティブ 編集統括 CNET Japan編集長 別井貴志氏、横浜銀行 総合企画部 担当部長 加藤毅氏、ワコール 執行役員 総合企画室 広報・宣伝部 部長 猪熊敏博氏
――イチロー選手を起用した理由は。

猪熊氏 彼の大リーグ入団が決まった頃、スポーツ新聞に掲載されたオフシーズン中の写真で、イチロー選手がCW-Xを身に付けていた。そこで弊社と付き合いのあるコンディショントレーナーを通じて、商品を説明させていただいたのが始まり。

加藤氏 金融業界と異なり、生活と密着している商品のマーケティングは魅力的だ。今回の登壇にあたって女性社員に頼まれたのだが、「膨大なワコール製品のラインアップの中で、自分が合致する商品を探すのが難しい」らしい。どうすればいいだろうか。

猪熊氏 顧客アンケートでも指摘されるように現状は複雑化し、われわれも大きな課題だと認識している。デパートのインナーウェア売り場をプロデュースするのは彼らで、同業他社とは異なる演出を選んでしまう。われわれの製品は「どこにでもある」からこそ差別化が難しく、この点はウェブページでも一緒だ。この問題を解決する1つの鍵がAIだと考えている。(データ活用を背景にした顧客分析など)デジタル上で実現すれば、将来的に解決するだろう。

――マーケティングはブランド構築が大変だと聞くが。

加藤氏 以前は、支店ごとに看板の大きさやデザインが異なったり、その時々の流行り物を取り込んだりしたため、統一という発想自体がなかった。支店長の権限は強く、正に一国一城の主という存在なので、ブランド統一は難しい取り組みだった。コストも大きく抵抗もあったが、他業種を参考にハード面だけでなく挨拶の仕方などソフト面も含め、あらゆる面をトップダウンで決定することで成功した。

――金融業界は差別化が難しい。注力した点は。

加藤氏 われわれのような地方銀行は、店舗をコミュニティの場として、ラウンジ的に使ってくださるお客様も多い。街の中で、銀行のように人が自由に出入りして会話できる空間は意外に少なく、そのようにご利用いただくのも悪くないと思っている。一方で週末しか来られないお客様に対しては、ダイレクトチャネルの拡充や土日も対応可能な店舗を増やすようにしてきた。最後は人と人とのコミュニケーションに尽きる。それを望む顧客も多い。

――「ワコールスタディホール京都」の設置理由は。

猪熊氏 残念ながら顧客との関係が希薄になりつつあるため、イベントを開催するなどして顧客と接する場面を積極的に増やしてきた。ワコールスタディホール京都もコミュニケーションという文脈では同じだが、異なる視点で対話する目的がある。

――顧客志向で相手の本音を引き出すには。

加藤氏 銀行は面談記録を保持しているため、コミュニケーション記録は豊富。お客様に好かれる行員は日常会話が非常に上手で、落語の枕のように活用しつつ、結果的に金融商品の話につなげている。この「枕」が大事だと見ている。

猪熊氏 極めてアナログ的だが、週報を社内ネットワークで全員閲覧している。必ずしも社員の本音が見えるわけではないものの、メリットの1つは社内で共通言語が生まれる点。横浜銀行のようにAI分析できれば面白い結果につながりそうだ。

――マーケティング視点で気になる点は。

猪熊氏 商いは数字で会話する場面が多い。例えば昨年と今年の売り上げが同じでも、昨年は100人で達成。今年は爆買いで1人が同額を使ったと仮定すると99人はどこへ?となってしまう。この部分を可視化する仕組みが必要だ。

加藤氏 EBMで感じたのが、個人顧客の難しさ。当初はライフステージやライフスタイルの変化で乗り換えていく自動車をイメージして、生活が変われば金融ニーズも変わるだろうと思ったが、個人は多様性も大きく、必ずしもうまくいくケースばかりではなかった。他方で法人顧客に対しては、イベント検知が有効なケースも多い。単純な話だが、個人の誕生日を祝うよりも、会社の創業日を祝う方が喜んでいただけるケースがあった。

――オムニチャネル運用におけるデータ活用の方針・実践したこと。

加藤氏 店頭と比べて10~20倍の取り引きがあるATMをコミュニケーション基盤にできないか調べてみたが、顧客はATMに対して交流ではなく素早いレスポンスを求めている。資産運用などのチャネルは通勤中にスマートフォンを触る方が多いため、ATMは補完的存在としてスマートフォンへの移行を進めている。

猪熊氏 女性が、通勤途中などにパブリックな場でスマートフォンを利用して、下着の情報を得る(見る)のは少ないと思われるが、よりパーソナルにスマートフォンを活用していくことは時代の流れなので、それを考慮した新たな仕組みを思案している。「われわれの商品はどこでも買える」「どこでも同じ接客ができる」という根幹は大事にしたい。

――IT技術活用とマーケティング活動における重要性は。

加藤氏 たとえば住宅ローンを組む時は煩雑な手続きが必要だが、住宅ローンはあくまでも家を買うための手段であるため、お客様には本来の目的である建築や物件選択に集中していただきたいと思う。そのために銀行はできるだけ簡易で便利な仕組みを用意しなければならない。IT技術は顧客のユーザー体験を向上させるはず。

猪熊氏 例えばウェアラブルなインナーウェアが思い浮かぶが、それは「美」なのだろうか。ターゲットを女性以外に向ければ、健康維持のような仕組みは近い将来できると考えている。女性に与える「感動」と両輪に進めたい。

――個人的には猪熊氏が述べた「経営は文化」が印象に残るが、マーケティングやブランディング活動で重要なのは、トップダウンで推し進めていく点。さらに顧客志向でビジネスを回すにはデータ活用が唯一の手段だと感じた。

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