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「フェイク」に立ち向かう米国の企業情報

米山徹幸 / IRウォッチャー・埼玉学園大学大学院客員教授2017年11月29日 11時00分
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 今から半年前のことだ。4月10日、米証券取引委員会(SEC)が、27のグループ(個人/会社)を金融サイトに強気な記事を掲載し、その見返りに非公開の支払いを受ける株式促進スキームに関与したとして告発した。

 薬品や通信関連の公開会社3社、最高経営責任者(CEO)が2人、株式促担当やコミュニケーション関連の会社7社、CEOが2人、社員6人、ライター9人などが詐欺罪で告発されたのだ。

 SECによると、公開会社がPRグループを雇い、自社の株式パフォーマンスに関する情報を流し、別に雇ったライターが強気の記事を書く。こうして出来上がった記事は知名度の高い投資調査サイトに掲載され、投資家に独立した偏見のない記事の分析を読んでいる印象を与えることになる。

 そして、SECが問題にした450を超す記事のうち250以上でライターは報酬をもらっていないと偽り、自分の本名に加えて少なくとも9つの仮名を使うライターや「ほぼ20年の投資経験があるアナリスト・ファンドマネジャー」と経歴を偽った例もあった。

 「もし会社が誰かに報酬を払って自社の株式についての記事を発表するなら、投資家すべてに開示されなければならない。このような会社や株式促進チーム、ライターはプロモーションを客観的で独立した分析と偽り、投資家をミスリードした」(SEC幹部)。

 米公認会計士協会(AICPA)の幹部も語る。「これらの記事は、事実の裏付けもないのに、重要な金融情報や分析を提示されたと信じるよう、人々を意図的にミスリードすることを狙っている」。

 提訴された27グループのうち17グループはSECとの和解に合意した。和解にはその行為の頻度や程度から2200ドル(約25万円)~3百万ドル(約3億4000万円)の罰金などが盛り込まれた。そして、SECは「投資リサーチサイト上の推奨銘柄に注意」と題する投資家向けの警告文を発した。

 ソーシャルメディアに投資対象の銘柄に関連する記事や分析レポートが載ったとしよう。こんな時、機関投資家なら社内の調査部門を信頼し、こうしたサイト情報の真偽を検証することができるだろう。個人投資家は投資判断を1つの情報ソースに限らず異なる複数の情報ソースを活用する。では、取り上げられた企業はどうするのだろうか。

 先週、届いた全米IR協議会(NIRI)の機関誌「IR Update」(2017年11月号)に「フェイクの中で信頼を保つ」というタイトルの記事(PDF)があった。

 記事は「以前と違うのは、いまソーシャルメディアで事態の進行が速くなり、フェイク・ニュースの説得力が増していることである」といい、こんな時代には「IRの仕事として自社の発信する文章をしっかり管理する仕事が重要である。事実に沿った文章で透明性を徹底することだ」というのだ。

 SEC法執行局の幹部も語る。

 「各社ともプロアクティブになり、インターネットで自社について何が語られているのかについて知る必要があります。投資家は各社が実際のビジネス以上に株式をプロモーションしているのではないかと心配するべきです」。

 ソーシャルメディアの問題はやがて国境を超える課題だ。日本企業のIR担当者にとってもこのSECの動きは決して他人事ではない。


◇ライタープロフィール
米山徹幸(よねやま てつゆき)
IRウォッチャー・埼玉学園大学大学院客員教授、全米IR協会(NIRI)会員。 大和証券(国際部)、大和IR、大和総研を経て、2010年埼玉学園大学大学院教授。 2017年4月より現職。主な著書に「大買収時代の企業情報」(朝日新聞社)、 「広辞苑(第六版)」(共同執筆、岩波書店)、「21世紀の企業情報」(社会評論社)、 近著に「イチから知る!IR実学」(日刊工業新聞社)。

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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