実は内蔵カメラの進化は、これだけではない。画質に直接結びつく改良ではないが、より正確で質の高いAR体験を得るため、イメージセンサとジャイロスコープ、加速度センサを最適化し、それらの情報を新プロセッサA11 Bionic上でリアルタイム処理する。カメラから取り込んだ映像から照明環境を推定し、自然な3Dグラフィクスの陰影となるよう自動処理する機能なども含まれているという。
このAR機能は、6月に行われた開発者会議 WWDC 2017にてiOSに追加される新API「ARkit」として発表済みだ。ARkitは特殊なデバイスを用いず、カメラを用いた映像のスキャンと分析のみで空間を認識できる上、iPhone 5s以降の製品に対応している。iPhone 8ではその体験がさらに強化されるだけでなく、今後発売されるすべてのiPhoneがARへの最適化が施された設計になっていくだろう。
ハードウェアと基本ソフト、開発ツールなどを同時に更新し、さらに旧製品との互換性を確保することで、一気に新しいプラットフォームを立ち上げる手法は、かつてAirPlayの時などにも用いたアップルならではの手法だ。さらに最新基本ソフトへの更新率が(Androidに比べ)極めて高いことと合わせ、新ジャンルのAPIを用いた新しいアプリの呼び水となっていく。
デュアルカメラを用いたDepth APIでも言及したが、新たな進化の方向を見極めて、ハードウェアとソフトウェア両面の環境を整えて製品機能として取り込んだ上で、開発者に速やかに公開していくというやり方はこれまでも実践されていたが、2017年はさらにその傾向が強くなるだろう。
さて、パッと見ただけでは、あるいはウェブページの写真を見ただけでは、外見については従来製品との違いをあまり感じないという読者もいるだろう。確かにiPhone 6シリーズ以降、同じデザインコンセプトが引き継がれており、細かなプロポーションの変化や設計上、変化している構造(アンテナ構成や背面素材など)などから来るディテールの違いを除けば、おおむね同じように見えるのは確かだ。
しかし、防指紋加工が施された背面ガラスと7000シリーズのアルミ合金製フレームの間は実に滑らかに接合され、ガラスによる視覚効果からか塊感をより強く感じた。ガラスの採用より、落下よる“割れ”のリスクも増えることになるが、アップルは従来のiPhoneが使ってきたカバーガラスよりも「50%強い」と説明している。
この「50%」がどういった強さなのか(傷の付きにくさなのか、それとも割れにくさなのか)を尋ねてみたが「両方とも大幅に強化されている」とのことだった。また単一層ではなく複数のガラス層を重ねているという。カラーリングは、背面がガラスになり全色グロス仕上げとなったためジェットブラックがなくなった。またゴールドとローズゴールドは、その中間の色合いを持つ一色に統一されている。
スペースグレーのみフェイスと背面が黒、他は白となるが、シルバーとゴールドの背面はフェイスパネルの白とは少々色合いが異なる。理由は金属質の色を出している層よりも上にある白のレイヤーが完全に不透明ではなく、下が少しだけ透けるように調整されているからだ。
このためシルバーモデルがフェイスパネルよりも少し寒色系に振れた白に見えるほか、ゴールドモデルも少しばかりピンク系に見える。いずれもフレームの色と統一感があるだけでなく、フレーム接合部のスリットやカバーガラスとフレームの間に見える樹脂層のカラートーンまで揃えられているなど、驚くほどのこだわりだ。
アップルによると、この背面ガラスには7層にも渡るカラー処理が施されているそうだが、もちろん、7層を目で認識できるわけではない。あくまでもガラスを透過して微かに感じられる質感、発色、光の当たり方によって変化する微妙な色合いを楽しむためだ。
このように形状以外はすべて違うiPhone 8シリーズだが、もうひとつ物理的にiPhone 7シリーズと異なる点がある。それは重さだ。iPhone 7シリーズよりもiPhone 8は10g、iPhone 8 Plusは14g質量が増えて、8 Plusに関しては200gを突破して202gとなった。実は厚みも変化しており、電子ノギスで計測したところ、手元の個体では0.15mm(iPhone 8)、0.3mm(iPhone 8 Plus)ほど増えている。
後述するワイヤレス充電対応のためのアンテナコイル内蔵や背面ガラス採用による影響が大きいと思われるが、実際の使用感にさほど大きな影響はなく、また手元にあるiPhone 7用ケースはすべてそのまま利用できた。
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