この連載を始めた2012年、日本ではソーシャルメディアが普及し始めた頃だった。「日本ではソーシャルメディアは定着するのか?」という声もあったが、それから5年、すっかり日々の生活に溶け込んでいる。
ソーシャルメディアを中心に執筆してきた本連載は、ひとまずこれが最後になる。今回は、ソーシャルショッピングを取り上げたい。
ソーシャルショッピングといえば、日本では、世界各国の商品を購入したいという日本の購入者と海外在住のパーソナルショッパーをマッチングするBUYMAがある。一方、海外の商品がほしいという人のために、海外旅行者に現地で商品を購入して持って帰ってきてもらえるよう旅行者と依頼者をマッチングするサービスも世界各地に登場している。
2015年にシンガポールで立ち上がったAirfrovでは、シンガポールを中心に東南アジア在住者が海外からの商品を希望しているが、調達依頼先で一番多いのが日本だ。人気商品は、靴やバッグ、トイレタリー、日本にしかない味のカップヌードルや東京ばな奈などの食品などである。
アプリを使って、旅行者は渡航国、引き渡し国と帰国日を、海外からの商品がほしい依頼者は国と希望商品、手数料7%込みの支払総額を掲載する。
旅行者と金額に合意した時点で、依頼者はAirfrovに全額を支払うが、代金はAirfrovが預かり、旅行者が商品をAirfrovの事務所に届けた時点で旅行者に支払われる。
旅行者は、帰国後7日以内にAirfrovに商品を届ける決まりだ。7日以内に届けられない場合、依頼者はオファーを取り消して、手数料を含む全額返金を受け取ることができる。7日以内に依頼者が商品を受け取りに来ない場合、代金は旅行者に支払われる。依頼者は送料を払えば、商品を配送してもらうことも可能だ。
取引完了後、依頼者と旅行者は相互を評価する。5つ星を複数得ると、旅行者は「認証済み旅行者(Verified Traveller)」となり、通常は10件までだが、最高50件の依頼を同時に請け負えるようになる。また「日本では、今、こんな商品が流行ってますよ」と商品を推薦することも可能となる。
依頼者が、お気に入りの旅行者をフォローしたり、推薦したりできるソーシャル機能も搭載されている。旅行者は珍しい品や特売品をシェアすることもでき、トレンド発掘の役目も果たす。
また、20件以上の依頼を請け負った認証済み旅行者には、Airfrovが無料で商品を回収する特典もある。さらに、100以上のレビューかつ4.5以上の評価を得ると「スーパー旅行者」となり、同時に請け負う依頼件数に制限はなくなる。
たとえば、「白い恋人24枚入り1500円」に対し27シンガポールドル(約2100円)のオファー(Airfrovでの相場)で、手数料は500円ほどなので、旅行者は複数の依頼者の物品購入を請け負わないと割に合わない。スーパー旅行者になると、一度に160~200件の依頼に応える人もおり、そうすると旅費が浮くくらいの手数料が入る。
単純に旅行ついでの購入代行として見たときに、荷物スペースのシェアという意味では、ひとつのシェアリングエコノミービジネスと言えるのかもしれない。
Airfrovは、2016年末にインドネシアでもサービスを開始したが、インドネシアには2014年に立ち上がった同様のサービス、Bistipがある。
米国にも同様のサービス、Grabrがあるが、今のところ、依頼者が7割、旅行者が3割ほどで、半年以上も成立しない依頼が多々ある。AirfrovやBistipと違い、依頼者の国が多岐にわたるので、国によっては旅行者は複数の依頼を受けにくく、まとまった報酬を稼ぐのが難しいのが難点といえるだろう。
5年間、ご愛読をいただきありがとうございました。
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