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ニンテンドースイッチのもたらす新世界

上床光信(カドカワ マーケティングセクションマネージャー)2017年03月27日 08時00分
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 任天堂からNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)が3月3日に発売されました。実に4年ぶりとなる任天堂の新型ゲーム機のデビューに世界は歓喜しましたが、 そのスタートの詳細を見ていきたいと思います。

 3月3日から3月5日の3日間の国内推定販売台数は33万637台。 また、店頭消化率は約96%。ほぼ完売状態と言っていいでしょう。

 つまり出荷された分はすぐに売れてしまったということです。 タラレバですが、もっと出荷していれば、さらに多くの台数が売れていた可能性もあります。

 発売日から日曜日までの初週の販売台数という点では、Wii U(30万8570台)や PS4(32万2083台)より多くの実績をたたき出しました。近年のコンシュー マーゲーム機としては、及第点の船出だったと言ってよいでしょう。

 約3万円というSwitchの価格は、任天堂のハードとしては高かったのですが、 PS系のゲーム機のローンチ価格がここのところ約4万円だったことを考えると、 絶妙な値付けだったのだと考えられます。初週の販売台数を見る限り、その戦略は成功したと言ってもいいでしょう。

 また、同日に発売となったSwitch用のゲームソフトでは、1番人気の「ゼルダの伝説ブレス オブ ザ ワイルド」が、19万3060本を販売。本体に対する比率が6割近くに達しており、今回のSwitch購入者の多くが「ゼルダ」を購入したことが伺えます。

 裏を返せば、「ゼルダ」の投入があったからこそSwitch のローンチは一定の成功を収めることができたのだ…、とも言い換えることができます。

 このようにキラーソフトはゲーム機のローンチのためには欠かせないモノですが、Wii Uの時の「New スーパーマリオブラザーズ U(初週17.1万本、 本体に対する比率は55.3%)や、Wiiの「Wiiスポーツ」(初週17.7万本、同47.6%)と比較しても今回の「ゼルダ」の貢献ぶりが際立ちます。

 ちなみに、Switch用のゲームソフトの2位には「1-2-Switch(ワンツースイッチ)」が8万2392本と続いています。

 では、今後のSwitchはマーケットにおいて、どのような展開を見せていくことになるのでしょうか?発売されたSwitchを手にとってみると、気がつくことがあります。

 まず、今までの任天堂ハードのポイントとなっていた機能が全て取り込まれている点です。手元の液晶ディスプレイの左右にコントローラ―(Joy-Con)を配置した様は、進化したWii U的なものを感じます。

 Joy-Conを外しWiiのコントローラーのように使うことも出来、さらには「Joy-Conグリップ」に装着することでゲームキューブやニンテンドウ64のような単品のコントローラとしてTV画面でのプレイも可能となります。もちろん液晶でプレイするゲーム体験は、ゲームボーイやDSのようでもあります。

 ただ、このような良いとこ取りな点が、Switchの方向性を見えにくくしてしまっているのも事実です。

 一方でHD振動やモーションIRカメラの搭載。またあえてやっているのではと勘ぐってしまう「ブラウザー機能やSNS機能の未搭載」など、これらはSwitchの狙いや哲学の一端を見せてくれている部分です。

 今後出てくるであろうSwitchならではのタイトルがそれらを明らかにしてくれるに違いありません。「マリオカート8 デラックス」や「Splatoon(スプラトゥーン)2」など期待のタイトルが出てくる春から夏に、その答えのいくつかは見えてくることになるでしょう。

 さらには、任天堂のハードやソフトタイトルは年末商戦にその威力を発揮します。つまり、今年の年末こそがSwitchの真価を計る本当のタイミングなのです。

 最後に付け加えておきたいことがあります。実はSwitchは大成功しなくても、その存在があるだけでよいのではないかということです。昨年の任天堂を見ていると、新体験アプリとしての「Pokemon GO」の大ヒット、“マリオ”と共に任天堂がスマホデビューを飾ったこと。

 また、その「スーパーマリオ ラン」が買い切りモデルだったのに対して、ついには課金型の「ファイアーエムブレム」をスマホに投入したことなど、スマホアプリの世界で、任天堂はその存在感を遺憾なく発揮しました。

 以前までの任天堂とは大きくその戦略を変え、実際にその姿を見せつけたのです。彼らはアプリを任天堂コンテンツのプラットフォームの1つとして位置付けました。

 さらにはUSJでのコラボレーションなど自社プラットフォームに縛られない展開は昨年の任天堂の特徴とも言えます。

 任天堂という会社をIPの保有会社として見たとき、そのIPが活躍する場所として、スマホアプリや映画やメディアなどと共に、自分たちでコントロールできるゲームプラットフォームがあれば、それだけでIP戦略に多彩な可能性を持たせることが可能となります。

 2015年にDeNAとの提携の発表がありましたが、その際に発表された概念図をあらためて思い出すと見えてくるものがあります。 (2015年03月17日の任天堂の発表より )

 任天堂がSwitchで掲げた「いつでも、どこでも、誰とでも」というコピーは、Switchを超えた任天堂の新たな方向性そのものだと考えるのは、考え過ぎでしょうか?

◇ライタープロフィール
上床 光信(うわとこ みつのぶ)
カドカワ株式会社 マーケティングセクションマネージャー。
「ファミ通ゲーム白書」の編集長として10年間務めた後、現在はエンターテイメントマーケティングのeb-i事業を推進中。ゲーム業界、エンタメ業界のマーケットアナリストとして業界の前線を走り続けている。

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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