彼女が長方形のスマートフォンの両端を下に強く押すと、ぴしゃっと叩きつけると巻き付くおもちゃのブレスレットのように、手首に巻き付いた。観衆は驚き、インターネットは大騒ぎになった。
折り曲げて手首に巻くことのできるこのスマートフォン(「CPlus」として知られる)は、Lenovoが2016年6月、モジュール式の「Moto Z」や「Phab 2 Pro」を含む大規模な製品発表イベントの一環として、来場者を驚かせるために披露したコンセプト端末である(Phab 2 ProはGoogleの「Tango」ソフトウェアを使って拡張現実機能を提供する初めてのスマートフォンだ)。CPlusは単なる試作品だったかもしれないが、それは、曲げたり折りたたんだりすることのできる、まさに「フレキシブル」なスマートフォンの未来について、人々の想像力を大いに掻き立てたものでもあったかもしれない。
現在のスマートフォンは極めて高性能ではあるが、すっかり定着した長方形の形状は、その必要性について誰もがほとんど気にとめないほど退屈なものになっている。だからこそ、曲げたり、ねじったり、パチンと開閉したり、折りたたんだりできる携帯端末は業界に刺激を与え、活性化させる可能性がある。たとえこうした目新しい未来の端末は当初、軌道に乗るまでに時間がかかるとしても、だ。
曲げたり、折りたたんだりできる携帯端末は、目で見たり、頭で考えたりする分にはクールなものである。なぜなら、堅い電子機器は普通曲がらないからだ。少なくとも、ヒンジがなければ曲げることはできない。しかし、デザイナーや科学者ができることの限界を押し上げるということ以外にも、そうした端末には実際的な利点があるのだろうか。
実のところ、そうした利点はいくつかある。端末を折りたためるようになれば、本体のサイズが小さくなり、携帯しやすくなる。スクリーンのサイズを事実上2倍にすることも可能になる。
さらに、これらの端末は「新聞紙のように製造できるようになる」、とRoel Vertegaal氏は言う。同氏はカナダのクイーンズ大学でヒューマンメディアラボのディレクターを務め、試作品モデルの開発に取り組んでいる。このようにスマートフォンの部品を製造するようになれば、やがてスマートフォンの製造コストが下がる可能性もあるとしている。
(常にフラットのスクリーンではなく)変化する3次元の作業面を提供するクールな見た目の端末には、端末の携帯の仕方だけでなく、使い方も変えてしまう力がある。例えば、ゲームをプレーする際に新しいナビゲーションの方法を利用する、あるいは、端末を曲げることによってゲームのプレー中にアクションを引き起こす、音を出す(上の動画を参照してほしい)、といった使い方が考えられる。
LenovoのCPlusのほかにも、折り曲げられる端末の限界に挑戦するスマートフォンは存在する。実は、われわれが曲げられるスマートフォンの試作品を最初に目にしたのは、2011年のことだ。報道によると、サムスンは、展開するとタブレットになるスマートフォンを2017年に発売する予定だという。この端末は、曲面スクリーン(固定されてはいるが)を搭載する「Galaxy edge」シリーズの携帯端末を新たなレベルに押し上げるだろう。LG Electronicsは2018年、折り曲げられるスマートフォン向けディスプレイをAppleとGoogle、Microsoftに供給する予定とのうわさだ。Lenovoも折りたたんで本体の全体的なサイズを小さくできるタブレットの試作品開発に取り組んでいる。同社は手首に巻き付くCPlusを披露したとき、そのタブレットも報道関係者たちに少しだけ見せてくれた。
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