筆者が実際にどれだけ事故を起こしやすいのかを知っていたら、Dipak Chowdhury氏は、筆者に厚さ0.1mmの超薄板ガラスを手渡して、それを指で挟んで曲げてみてほしいと頼むことはしなかっただろう。
筆者にとって幸運なことに、Corningの「Willow Glass」部門担当バイスプレジデント兼ディレクターであるChowdhury氏は人を疑わない性格で、この曲げても割れない超薄板ガラスの公開デモを世界で始めて行う機会を米CNETに与えてくれた。
フレキシブルガラスとフレキシブルスクリーンは少し前から大きな話題になっており、それは、International Consumer Electronics Show(CES)でサムスンが「Youm」と呼ばれる折り曲げ可能な有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイのデモを鳴り物入りで行ったときに頂点に達した。
サムスンやNokia、さらにAppleなどの企業は、何年も前からフレキシブルなスマートフォンディスプレイに取り組んできた。しかし、今になってようやく、おそらくわくわくし始めても大丈夫な段階まで、この分野における真の研究開発が整ってきた。
折り曲げ可能なスマートフォンが実現したら何ができるのかを想像してみてほしい。例えば、ユーザーの体の動きに合わせて筐体が曲がるので、これまでより快適にポケットに収まるだろう。高いところから落としてしまっても、衝撃で粉々になるのではなく、曲がるだけで済む。気泡シートを3重に巻かなくても、あらゆる収納場所に詰め込むことができるだろう。
しかし、現段階で過剰な期待は禁物だ。Willow Glassは頑丈な「Gorilla Glass 3」ではない。サムスンのYoumスクリーンは、現時点で搭載できるデバイスはまだない。また、そよ風になびくスマートフォンが登場するのは、まだ何年も先のことだ。
この流れに適応しなければならないのは、ディスプレイとそのガラスだけではない。
フレキシブルな携帯電話の最大の課題の1つは、カバーガラスを曲げられるようにすることだ。そして、折り曲げられるガラスは決して壊れないというのは、よくある誤解である。
Willow Glassは基板材料(スマートフォンの内側に設置されるガラス)として設計されたが、現在の状態では、内部のさまざまな素材を風雨などから保護する強力な防壁となり得るだけの強度はない、とCorningのChowdhury氏は強調する。Willow Glassはそのような設計にはなっていない。
確かに、折り曲げ可能なWillow Glassと同様の材料にも、Corningのもっと有名な「Gorilla Glass」と同様の化学強化プロセスを施すことが可能かもしれない。Gorilla Glassは、今日の携帯電話やタブレット、ノートPCの多くを保護する外層を構成する材料だ。
しかし、たとえWillow Glassとよく似た材料が、携帯電話にかぶせて折り曲げても大丈夫な強度を持つようになったとしても、破損は依然として懸念材料である。
化学者やインダストリアルデザイナーが強度について言及する場合、彼らは大きなひび割れや粉々に砕け散ることだけを話しているのではない。確かに、フレキシブルガラスはその波状に変形する性質のおかげで、落下テスト時に受ける損傷が一部の剛性ガラスより少ない。しかし、スクリーンが破損しやすくなる原因である、かすり傷やへこみ、長期的な摩耗パターンを防ぐことはできないかもしれない。
Corningの現在の製法で作られたWillow Glassは深く曲げることができるが、それでも穴があいたり、割れたりすることがある。
われわれが目にする、自由に曲げることのできる最初のディスプレイが、ガラスではなくプラスチックによって覆われたものになる可能性は十分にある。例によって、弾性と耐久性が懸念材料だ。
有名企業のFrog Designでチーフクリエイティブディレクターを務めるMark Rolston氏は、「それに関しては、何らかの妥協が生じるだろう。変形できるものの方がかすり傷に弱い、というのが素材に関する現実だ」と述べた。
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