しかし、曲げたり折りたたんだりできるスマートフォンの研究が企業や民間の研究機関で盛んになっているとはいえ、そうしたスマートフォンがすぐに広く普及することを期待してはいけない。抜本的に新しいデザインに関して、企業はゆっくりと慎重に事を進める傾向がある。
例えば、サムスンの初めての曲面スクリーン搭載スマートフォンを思い出してみるといい。「GALAXY ROUND」は事実上のコンセプトスマートフォンで、韓国以外では発売されなかったが、そのデザインは製品がアップデートされるたびに変形していき、左右の側面が丸みを帯びた現在の「Galaxy S7 edge」へとつながった。Xiaomiのほぼベゼルレスの「Mi Mix」もまた別のコンセプト端末で、その技術は後にほかの携帯端末に搭載されるかもしれない。こうした折り曲げられる近未来的スマートフォンの最初の製品群は、おそらく以下の特徴を備えるはずだ。
頻繁に折りたたんだり曲げたりするスマートフォンでは、摩耗を考慮する必要もある。米マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボでLiving Mobileグループのディレクターを務めるChris Schmandt氏は、「私はスマートフォンを曲げられるようにしてほしいという気持ちが理解できない。実際に、私はスマートフォンを日々の酷使から保護するため、OtterBox(耐衝撃スマートフォンケース)に入れている」と語る。
より柔軟性の高い新しいデザインが、端末に内蔵できるハードウェアの種類に影響を及ぼす可能性もある。例えば、バッテリを大きく平らな長方形の端末に搭載できるものよりも小型化することなどが考えられる。回路基板などの堅い部品の内部構成を変更したり、それ自体も少し曲がるように改良したりすることも必要になるかもしれない。
それでは、曲げたり折りたたんだりできるスマートフォンが大ヒット製品になる保証がないのだとしたら、企業はなぜ何年も先まで、あるいは永遠にメインストリームにならないかもしれないスマートフォンの研究開発に資金をつぎ込んでいるのだろうか。実を言うと、流行するトレンドとそうでないものを常に正確に予想することは不可能なのである。
しかし、最初に技術革新を成し遂げることには確かに栄光があり、そして、折り曲げたりたたんだりできるガジェットが実際に成功した場合、最も経験を有する企業が市場で有利な立場に立つのは明白だ。
(特にサムスンは折りたたみ可能な電子機器を最初に発売できれば、この点で恩恵を受けられるかもしれない。IHS MarkitのアナリストであるWayne Lam氏は、「サムスンは『破壊的な技術革新』を起こして市場に戻ってくる可能性が高い。そして、できれば『Galaxy Note7』での大失敗を忘れたいはずだ」と述べている。)
しかし、筆者を最も興奮させるのは、こうした技術革新のおかげで、あらゆるスマートフォンメーカーが過去のさまざまな発見を活かして、新たな発見を促進できるようになるということだ。結局のところ、何がうまくいって何がうまくいかないのかを業界がコツコツと見つけていくためには、試行錯誤を重ねるしかない。それなしでは生きていけないという次のテクノロジをわれわれに与えてくれるのは、そうした開発のプロセスである。デスクトップコンピュータを小型化したいという情熱のおかげで、今あなたのポケットに入っているスマートフォンが生まれたのと同じことだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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