朝日インタラクティブはこのほど、ビッグデータやAIを活用した「Real Estate Tech(不動産テック)」と呼ばれるビジネスの変革が著しい不動産ビジネスに焦点を当てたイベント「テクノロジが創世する不動産産業の新潮流 ~Real Estate Tech 2016 Summer~」を開催した。
基調講演では、米国Zillow GroupのIndustry Relations Directorであるブライアン・デ・シェパー氏が登壇し、「Understanding Real Estate in North America(北米の不動産業界を理解する)」と題したプレゼンテーションを行った。
ブライアン氏は冒頭、「北米(米国、カナダ)の不動産ビジネス市場はデジタルによって大きく変革を遂げている。不動産業界関係者はデジタルに精通していること=デジタルネイティブであることが求められ、ユーザー環境はPCからモバイルへとシフトしている。この変化に対応できない者は淘汰される。実際に、北米でも淘汰は恐るべきスピードで進行している」と、北米市場における不動産ビジネスの現状を語った。
デジタルデバイスやデジタルコンテンツを当たり前のように日常生活で活用するデジタルネイティブは世界中で急速に増加し、彼らはスマートフォンとGoogleなどの検索エンジンやツールを駆使して膨大なデジタルの波を泳いでいる。こうした消費者の“デジタルネイティブ化”と“データ社会”の到来に対応できなければ、不動産ビジネスの将来は明るくないのだ。「世界は、私たちが考えているよりももっと大きな力で変わろうとしており、デジタルへの対応を“するか”、“しないか”の二者択一を迫られている」(ブライアン氏)。
この1年でReal Estate Techという言葉が急速に注目を集めるようになった日本にとって、一足先に不動産ビジネスにデジタルによる変革の波が訪れた北米市場の実態を知ることは、日本の不動産ビジネスの将来を予見する上で重要なことである。ブライアン氏は、これから日本でも起きる可能性が高い北米市場におけるさまざまな変革について紹介した。
北米市場における個人不動産取引では、不動産売買担当者、その担当者が所属する不動産仲介会社、その不動産会社や不動産売買担当者が所属する業界団体、そして全国の業界団体が所属する全米リアルター協会という構造で成り立っている。この不動産仲介ビジネスに関わっているすべての人々が活用しているITシステムが、Zillowが開発したMLS(Multiple Listing Service)と呼ばれるものだ。
ブライアン氏によると、同社が開発したMLSは不動産物件に関するあらゆる情報を掲載したデータベースで、米国における物件の99.9%をカバーしているという。その範囲は売り出し中の物件だけでなく、取引成立済み物件、取引キャンセル物件などにもおよぶ。情報の中身は物件の詳細情報のみならず、地域住民の特徴や地域犯罪率といったコミュニティに関する情報、地図や航空写真などの地理情報、市場統計、相場データ、取扱事業者リストなど多岐に渡る。
「米国の不動産担当者は、MLSを活用して物件の相場価格を調べたり市場分析をしたりしている。これがなければ仕事にならない」(ブライアン氏)。
またブライアン氏は、北米市場における不動産のビジネスモデルについて紹介。北米市場では不動産業者同士の協働体制が整っており、売り主負担となる約6%の仲介手数料はMLSを通じて取引を行った売り手、買い手それぞれの不動産業者で均等にシェアする仕組みになっているのだそうだ。なお北米にも専任売買契約は存在するのだそうだが、こうした物件がMLSを通じて取引されることはまれだという。
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