このように、不動産仲介ビジネスのデジタル化が急速に進んでいる背景には、米国における不動産ビジネスの特徴がある。日本では新築物件の販売が不動産ビジネスの大きな比重を占めているが、ブライアン氏によると2015年の中古物件の販売比率は90.3%(約525万件)。新築販売はわずか9.7%(51万件)で中古物件販売の比重が非常に高いのだ。
加えてブライアン氏は、「買い主が購入した家を見つけた手段としては、44%をインターネットが占め、不動産仲介エージェントからの紹介(33%)を上回る。インターネットで物件を探す割合は今後さらに増加し、その傾向は当分続くだろう」と語り、米国の一般消費者はインターネットを駆使して中古物件を探し、不動産購入を検討しているという実態を紹介した。
一方、不動産を仲介するエージェント(リアルター)は、現在の平均年齢58歳から若年化が進み、今後の大きなカギを握るのは“ミレニアム世代”と呼ばれる1982年から2000年に生まれた若い世代なのだという。
「ミレニアム世代は世界で最も人口の多い世代で、米国では8000万人、グローバルでは25億人がこの世代にあたる。ミレニアム世代はテクノロジに精通し、やる気にあふれ、グローバルマインドと社会的責任を持っている。米国ではベビーブーム世代の労働力が毎日50000人リタイアしており、今後の労働力の中心としてミレニアム世代に注目が集まっている」(ブライアン氏)。
こうしたデジタルに精通したミレニアム世代による不動産担当者の若年化、そして消費者行動のデジタルシフトが、不動産ビジネスにおけるデジタル変革の背景にあるとブライアン氏は指摘。
「ミレニアム世代の優秀な人材がチームでビジネスを推進し、ミレニアム世代の消費者は取引に透明性を求め、自分でリサーチをして納得して物件を購入する。こうした変化が、MLSが成功した背景にあるのではないか。これからの不動産ビジネスのトレンドは、間違いなくモバイルとビッグデータだ」と語った。
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