ヒートマップを使ったサイトやアプリのユーザー解析、課題解決ソリューション「USERDIVE」を手がけるUNCOVER TRUTHは、Draper Nexus Venturesをリードインベスターとし、日本ベンチャーキャピタル、サイバーエージェント、アコード・ベンチャーズ、みずほキャピタル、ニッセイキャピタルを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額約4億円の資金を調達したことを9月6日に明らかにした。
USERDIVEは、Adobe AnalyticsやGoogle Analyticsのトラフィック分析ツールと組み合わせて、PCやスマートフォンの特定ウェブページ内のクリックやマウスオーバーを分析し、ユーザーインターフェースやコンテンツの課題を見つけ、それを解決することでコンバージョン率(CVR、商品販売など最終成果につながった割合)を改善するソリューションだ。また、ネイティブアプリ利用者の行動を「ヒートマップ分析」「動画分析」「導線分析」で分析し、アプリ内のCVRを改善するソリューション「USERDIVE for Apps」も提供している。さらに、これらのソリューションを活用して課題の発見から改善方法の提案、効果検証までのPDCAサイクルを実行する「分析アウトソーシング(コンサルティング)」も手がける。創業から3年間で富士フイルムやベネッセコーポレーション、ニフティなど約300社へサービスを提供しているという。
USERDIVEは、「CVR1%が当たり前の世界を変える」という創業理念を掲げている。これについて、代表取締役CEOである石川敬三氏は「世の中の不便さを解消したいのです」と語った。石川氏は、サイバーエージェントの新卒採用一期生として入社して支社長として関西支社を開設し、その後VOYAGE GROUPの取締役、PeXの代表取締役などを経て、2013年4月にUNCOVER TRUTHを創業した。創業のきっかけを聞くと、「そもそも僕は、時間や距離、場所、許容量などの概念を大きく変え、世界を変えたインターネットというインフラ自体がめちゃめちゃ好きでして、その中でもGoogleが一番好きなのです。そういうインフラが好きなので、ずっとインターネットの業界にいます」と語り始めた。
続けて、「Googleが登場して正確に“もの”が調べられるようになったものの、自分で能動的に検索した際に本来であれば最上位の検索結果をクリックすれば探していたサイトや情報に当たるはずなのに、実際は期待通りじゃなかったり、何かを購入しようとしても途中でよくわからなくなって離脱したりします。これは、Googleの検索結果の先にあるサイトの課題をきちんと解消しないと、インターネットはもっと便利にならないだろうというのが創業のもともとの想いです」とした。
その例として、レンタカーを借りようとした場合を挙げた。ユーザーはどこの店舗で借りるかはあらかじめ決めていることが多く、その店舗のサイトを見つけて表示させれば、空いているレンタカーがあるのか、どの車種が空いているかなどが一覧でわかることが望ましい。しかし、実際のレンタカーサイトの多くは、店舗を見つけて選んだ後に、車種をはじめとした各条件をすべて選択し、ようやく空き状況がわかる状態にあり、「つまり、本来1クリックで済むところを20クリックぐらいしなければならないケースは多い。こうした不便を解消していれば、そもそもの検索結果が『あれ、期待通りの情報じゃなかったな』という経験を除いたとしても、あたりまえにCVR50%を超えてくるはずだと思うのです。そうした数値にならないのはサイト側が不便なのか、ほかに邪魔している要素があるかなので、こうしたことをつぶしたいのです」(石川氏)というわけで、サイトやアプリの改善ソリューションを事業化したわけだ。
しかし、ヒートマップを使ったソリューションは数多くある。他社との差別化について聞くと、石川氏はまず過去にアフィリエイトサイトを手がけていた経験を話した。「アフィリエイトはCVRが0.2%変われば売上が数百万円も変化するビジネス。そこで、サイトに月間100個ぐらいのいろいろなボタンを作っては設置して試す、というチームを率いてました。どれが効果を出すかひたすら試すのですが、3カ月もすると心が病んでくるんです(笑)。もっと簡単に効果を試せるツールはないか探したのですが……。Google Analyticsなどログ解析ツールではどのページに問題があるかはわかります。カートのページに問題があるなど。しかし、カートのページのどこをどうすればいいかはわかりません」。
こうした経験から、どのページに問題があるかはアクセス解析ツールで発見し、そのページのどこが問題かはヒートマップを活用するというソリューションに至った。そして、差別化については「ヒートマップといっても、コンバージョンした人の動きと、していない人の動きなど、データの差分を判断しないと実際の問題や改善策は見いだせません。USERDIVEではこれをフィルター機能で実現していますが、ヒートマップ系のツールはこの部分が弱く、単にページがこう見られてますというツールばかりで使えるのがなかった」と、優位性を示した。
さらに、コンサルティングに力を入れているのも差別化のポイントだという。「当初はわれわれもツールだけを提供してきた時代があって、それでも一気に100社ぐらいに採用されましたが、結果で言うと改善できた事例は1つも出てきませんでした。そこで導入企業にヒアリングしてみると、みんな使っていなかった……。われわれのツールもそうですが、他社のツールも含めて導入しているかどうかも忘れているような状況でした。そのため、使い方からフォローしていって、がっちりコンサルティングするまでになりました」。
こうなると、サイト改善をコンサルティングできる人材をそろえなければならないが、「いまはウェブ分析で著名なスペシャリストであるCAO(Chief Analytics Officer)の小川卓がおりますので、彼と一緒に働きたいという人材も集まってきています。これからは人材を集めるのも重要ですが、育成にも努めたいと考えています」とし、今回の資金調達の大半をこうした人材の強化に充てるという。また、すでに欧州に導入企業がいることもあり、海外展開も本格的に取り組んで行く方針だ。
さらに、営業面では「これまでは経営陣を中心として人づてで紹介してもらい、導入してもらうといったケースが多かったですが、足下では代理店販売がすごく伸びてます。2015年11月ぐらいまでは直販の比率が約95%とほとんどでしたが、いまは80%前半までになっています。代理店の方が積極的に販売してくれる段階になり、この流れは続くと思います」とした。
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