三浦氏が挙げたもうひとつの“罠”、それは「オペレーションの罠」だ。同社がマーケティングオートメーションツールを導入した企業に実施したアンケートによると、「ベンダーのサポートがなく運用に乗らなかった」「ツールが使いにくい」といった声が多く聞かれるそうだが、中でも「シナリオ設計」に関する悩みが深刻なのだという。
つまり、ツールを導入してDWHを構築してマーケティングオートメーションの施策が実行できる環境が整っても、顧客の数が膨大であるがゆえに、「誰に (ターゲット設定)」、「何を(コンテンツ・インセンティブ設定)」、「いつ(配信タイミングの設定)」、「どのように(チャネル設定)」届ければいいのか、そ のシナリオを構築する段階で、どこからアクションを起こせばいいのか、担当者が分からなくなってしまうのだ。
そこで三浦氏は、フロムスクラッチが手掛けてきた多くのマーケティングオートメーション案件から見えてきたシナリオ設計のフレームワーク として、「3S」を紹介した。この「3S」とは、「Star Target」「Small Campaign」「Special Content」の頭文字からとったものだ。
「Star Target」とは、顧客ターゲットに優先順位をつけ、最も重要な顧客(=Star Target)に絞ってマーケティングオートメーションを展開し、成功体験を積み重ねながら顧客ターゲットを拡大していくという発想だ。
マーケティングオートメーションを導入した企業が陥りやすい失敗としては、すべての顧客を対象にしようとしてターゲットの優先順位をつけず、その結果、どのターゲットに対しても中途半端なアプローチしかできないために、短期的な成果を生み出せなくなってしまうのだという。そこで、まずは小さな重要ターゲットに絞って成果を生み出すことで実績を積み、徐々にStar Targetを増やしていくことでマーケティングオートメーションを軌道に乗せていくことが重要だと説明した。
「Small Campaign」とは、顧客にアプローチするシナリオ=キャンペーン展開について、まずは無理のない方法から段階的に実践していくという考え方だ。
三浦氏によると、マーケティングオートメーションにおけるシナリオ設計には、顧客の属性や行動に合わせて継続的にコンテンツを配信していく「リテンションモデル」、顧客が特定の行動をした場合(クーポンのダウンロードや特定ページへの複数訪問)にそれをトリガーにして次のアプローチを試みる「トリガーモデル」、ユーザーの属性や行動を細かくスコアリングしてロイヤリティの高さに応じてアプローチを細かく変えていく「コンシェルジュモデル」という3つのモデルケースがあるのだという。
しかし、それぞれ難易度は大きく異なり、マーケティングオートメーション初心者が、いきなりコンシェルジュモデルを導入すると設計・運用の難しさから頓挫してしまう場合も少なくないのだそうだ。そこで、まずは難易度の低いリテンションモデルから導入し、経験を積みながらトリガーモデル、コンシェルジュモデルへと取り組みを拡大させるのが良いという。
ターゲットを絞り込み、アプローチするモデルが決まったら、次に考えるのが提供するコンテンツ「Special Content」だ。マーケティングオートメーションを導入した企業の中には、ありきたりのコンテンツしか用意できなかったり、そのバリエーションが用意できなかったりなどの理由でターゲットニーズに合ったコンテンツの提供ができず、十分な効果を生み出すことができていないのだという。
そこで三浦氏は、フロムスクラッチが過去多くのコンテンツ生成に携わってきた中で、最も反応が良かったコンテンツの特徴をまとめ、 「essence(エッセンス)」というフレームワークを提示した。これは、「example(お客様の声)」「surprise(意外性)」「story(物語や 連載など)」「expert(専門性)」「news(最新情報)」「curation(まとめや比較)」「effecter(著名人の解説やインタ ビュー)」の頭文字をとったもの。これらの要素をターゲットニーズに応じて展開してユーザー体験を生み出すことで、メール開封率や配信後のコンバージョン 率を向上させることができるのだという。
「マーケティングオートメーションの導入が増加している中で、企業からは課題が散見されるようになってきた。その主なものがデータ統合に関する課 題と、オペレーションに関する課題だ。私たちも統合的なマーケティングプラットフォーム『B→Dash』の提供を通じて、マーケティングオートメーション をめぐるあらゆる技術やツールを提供していく。また、企業のニーズに応じて、伴走型のコンサルティングを展開することで、企業の導入・運用をサポートしていきたい」(三浦氏)。
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