Steve Jobs氏、Ed Catmull氏、Alvy Ray Smith氏が1986年にPixarを設立したときの目標は、初のフルCG長編アニメ映画を制作することだった。しかし、当時はまだ、創設者たちの大きすぎる野望にテクノロジが追いついていなかった。そのため、Pixarはコンピュータ企業としてスタートし、視覚効果の制作専用のソフトウェアとハードウェアを販売した。
Pixarは好機を待ちながら、短編映画の制作に着手した。短編映画から始めた理由は2つある。自社のコンピュータの性能を買い手候補に示すことができるという理由と、ムーアの法則が追いついてくるまでの間に、Pixarのアニメーターが技術を磨けるという理由だ。
1995年、それらすべてがついに融合し、DisneyとPixarは「トイ・ストーリー」を公開した。
「ファインディング・ニモ」が公開された2003年には、Pixarは既にヒットメーカーとなっていた。「ファインディング・ニモ」は今では現代の名作であり、Metacriticで90%、Rotten Tomatoesで99%の評価を獲得している。この作品があまりにもヒットしたせいで、クマノミ(ニモはクマノミ)の個体数が減少してしまった。熱狂的なファンの多くがクマノミを買ったからだ。「ファインディング・ドリー」の公開後、同じ現象が再び起きるのではないかと科学者たちが懸念している。
10年以上経った後の続編制作で難しいのは、人々が1作目に愛着を感じていることだ。技術的な観点から言うと、アニメーターたちは「ファインディング・ドリー」でもっと多くのことをやれたはずだが、気がつくと自制していたという。
「何かをもっとよくしたり、もう少し簡単にアニメーションで表現したりできるのではないかと思うたびに、結局はいつもそうした気持ちを抑えて、過去にやっていたことに近いものに回帰していた」。本作のキャラクタースーパーバイザーを務めるJeremie Talbot氏はこのように語る。
1つのキャラクターの顔の表情に少し違和感があるだけで、「『あれはドリーではない』と言われるだろう」とTalbot氏は話す。
Pixarにとって幸いなことに、同社には「トイ・ストーリー」と「カーズ」の続編で、人気キャラクターたちを再びスクリーンに登場させた実績がある。
しかし、「ファインディング・ドリー」では、ある重要な新キャラクターのおかげで、エンジニアやアニメーターは自由に限界に挑戦することができた。口やかましくて、自由自在に身体の色を変えることのできるタコのハンクだ。2003年時点のテクノロジでは、ハンクを生み出せなかったはずだとTalbot氏は言う。
ハンクはあるシーンで、カモフラージュ状態で絵画の前からこっそり動いて、部屋の中をそっと移動し、身体を白色にして壁と同化した後、キッチンの流しまで行って生ごみ処理機のギャグをやる。
アニメーターたちはこのシーンを2年がかりで完成させた。
というのも、ハンクが動くとき、それぞれの触手の滑らかさや重みをリアルに見せる必要があるからだ。そうした細部へのこだわりによって、アニメーションの迫真性が高まっている。
「われわれ全員が必死で努力して作り上げた、あのぐにゃりとした水っぽい動きを見てほしい」(Talbot氏)
2013年に他界したEbert氏も含め、誰もが夢中になるようなシーンだ。Pixarがいずれ単なる実験ではなく、本格的にVRに取り組んでくれることを期待したい。
「ファインディング・ドリー」は米国、英国ではそれぞれ現地時間6月17日、6月18日に公開予定だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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