人は、髪がなびくとどのように見えるかを直観的に理解している。あるいは、重ね着した服が体の周りでどう動くのか、さらにはクマが川の中を走ったときに水しぶきがどう上がるのかといったことも理解している。不自然に見える場合には、われわれの脳はそれに気付き、その部分に気を取られてしまう。
こういったことは、Pixarが13作目となる「メリダとおそろしの森」を制作した際に直面した技術的な課題の一部だ。Mark Andrews氏とBrenda Chapman氏が監督を務めた同作は、米国時間6月22日に公開された(日本では7月21日公開予定)。このアニメーションを支える技術に真実味がなければ、観客は何よりも重要な、映画の物語の世界に集中できなくなってしまうかもしれない。
「目指したのは、観客がこの映画を見るときに、ストーリーや冒険だけに集中できるようにすることだ」と言うのは、「メリダとおそろしの森」のシミュレーションスーパーバイザーであるClaudia Chung氏だ。「われわれは、人が服を身につけ、髪をなびかせて歩く様子を想像できるし、服がどのように動くかということを分かっている。そして、そう感じるのは、実際には適切な動きをしていないときだ。服などが奇妙で、少しふわっとしていたり、変な形に見えたりすると、観客はストーリーに集中できなくなってしまう可能性がある。観客に、『馬から飛び降りたときに、あんな風にスカートがめくれたのはどうしてだろう』と言われたりするのは、絶対にあってほしくないことだ」(Chung氏)
Pixarのアニメーターや技術担当者は長年にわたり、アニメーション映画の技術面での可能性をさらに広げる方法を模索してきた。その例としては、「カーズ2」の海面における照明効果や金属の人工的な反射、「ファインディング・ニモ」のために作られた水中の視覚効果、「カールじいさんの空飛ぶ家」で採用された、空へ飛んでいく多数の風船に実際の物理法則を適用する方法、さらに「トイ・ストーリー3」で転がり回るゴミ袋に加えられたリアルなライティング効果などがある。
そして、Pixar初の女性を主人公とした映画となった、古代スコットランドが舞台の成長物語である「メリダとおそろしの森」でも、やはり新天地を切り開いていきたいという情熱があった。Pixarはこの映画のために、全く新しい髪の毛のシミュレーションソフトウェア(有名な漫画キャラクターのTasmanian Devilにちなんで、「Taz」と名付けられている)を開発している。このようなシミュレーションソフトウェアは、少なくとも「モンスターズ・インク」あたり、さらに言えば「トイ・ストーリー2」のころから数多くの映画で使われてきたが、今回開発された技術はそうしたソフトウェアよりも優れている。
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