今後は、価格高騰に耐えられなくなったユーザーが、MVNOなど安価なサービスに流れる可能性は高まっていくと見られる。低価格ユーザーの流出は、一見すると携帯キャリアがダメージを受け、競争を促進して料金を引き下げたい総務省にはメリットがあるように見えるが、実は必ずしもそうとは限らない。
ドコモの下方修正の事例で示した通り、高付加価値のサービスを提供する携帯キャリアにとって、低価格を求めるユーザーが増えることはデメリットでしかない。そこで最近キャリアでは、ソフトバンクのワイモバイルブランドのように低価格専用のサブブランドを活用したり、MVNOを味方にして活用したりするなど、低価格を求めるユーザーをそちらに誘導する動きが強まっている。
それを象徴する携帯キャリアがドコモである。同社はここ最近、FeliCaを用いた電子マネーサービスの「iD」を、ドコモ回線を用いたMVNOとSIMフリースマートフォンで利用できるようにしたり、「dTV」「dマガジン」などのサービスをMVNOの一部を経由して販売したりしている。この動きは、従来“敵”と見なしてきたMVNOを、無理なく低価格ユーザーを獲得する手段として活用し、自社の回線とサービスを利用してもらうよう方針を切り替えたと見ることができるだろう。
そのため今後は、高い料金を支払い続けられるユーザーを携帯キャリアが必死に繋げ止めることで、表向きの競争は急速に停滞すると考えられる。その一方で、低価格を求めてサブブランドやMVNOに流出するユーザーは増えることから、低価格を求めるユーザーに対し、いかに自社の回線を利用してもらうか、という競争が激しくなるものと考えられる。
これは、これまで“1億総中流”というべき状況にあった日本の携帯電話ユーザーを、携帯キャリアのメインブランドを使う「高価格層」と、サブブランドやMVNOを使う「低価格層」へと大きくニ極化させ、ユーザー間格差を生み出すことにもつながる。一連の総務省の要請が、携帯キャリアだけでなくユーザーも大きな変化を与えようとしているのだ。
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