2次元ターゲティングによって、的確な広告を提供することは、広告主だけではなくユーザーにも利点があると説明する。ことエンタメ系に関わるサービスは「広告が入る」と耳にしただけで嫌悪感を持つユーザーも少なくない。その多くはコンテンツの世界観にあわないものやユーザーの好みにそぐわない商材、“釣り”のような広告が表示されることにあるという。
嶋田氏がイメージするハッカドールの広告は“秋葉原電気街の看板”。今や秋葉原はサブカルチャーを好む人たちが、欲しい情報や商品を求めている場所であり、それはハッカドールを利用しているユーザーの大枠に近いと分析。「電気街を歩いていると、さまざまなアニメやキャラクターゲームの看板が並んでいる。それを見て、こういうものが流行しているとか、こういうコンテンツがくるのではと、情報として受け止められる。それが大事」という。
広告にはバナー広告や自動再生する動画広告、ニュースのリスト内に広告を表示させるインフィードリストなどを用意。さらにハッカドールならではの広告として、ミニゲーム「ハッカトーク」を活用したものも用意する。ハッカトークは四択の選択肢を通じてキャラクターとの会話を楽しむミニゲーム。ここにハッカドール1号といったキャラクターのほかに、広告元のコンテンツのキャラクターを登場させることも可能にする。
キャラクターとのコミュニケーションを通じて、世界観を認知し愛着を持ってもらうことで、より高い効果が得られるという。これは同社のマンガアプリ「マンガボックス」でも、コンテンツの世界観を描いた漫画のあとにインストールへ遷移させる方法をとったところ、通常のバナー広告よりも高い効果があったことから、このハッカトークでも同様の効果が得られるものと説明する。
嶋田氏は「ハッカドールを利用している方は見る目が厳しい。そのユーザーを納得させるものであれば、想像しているよりもはるかに効果が高くなる。またこのタイアップをニュースのネタとして外部に発信するといった活用もでき、話題として広められる可能性は高くなる。最近は『広告』『PR』とついていたものでも、ちゃんとコンテンツや情報として楽しめるものも増えており、中身のともなったものを提供すればユーザーも納得してくれる風潮になっている」という考えを示した。
掲出する広告も基本的には自社でコントロールし、かけ離れた商材は出さないようにするという。一方では「例えば普通の化粧品やアクセサリーは出さないが、アニメなどの世界観を再現した化粧品やアクセサリーならありえる。ユーザーの『これが好き。でも実はこんなものも好き』とつつけるようなものは提案していきたい」と語る。
嶋田氏によると、ハッカドールのサービス開始当初から広告出稿の問い合わせが継続的にあり「むしろお待ち下さいと、お願いする状況だった」という。これまではサービスの質の向上や実験的なタイアップなどで効果を見ていたが、広告展開に乗り出せるタイミングがきたことで導入を決めた。これまでは投資フェースであったため、マネタイズを行う理由はシンプルに、事業として成り立たせていくための一歩だ。
このハッカドールは、サービスとIPの成長がDeNAのサービスやコンテンツのなかでも著しい部類に入っていると語る。IPの展開は立ち上げ当初は想定していなかったが、サービス開始から1年程度でDeNAとして初めてアニメ化したコンテンツに成長した。また、ゲームのコラボだけでなく、タワーレコードとのコラボも展開できるようになり、リアル店舗のような非ゲーム領域でも広めていくことができる存在になっているという。
「事業としてお金がまわるようになれば、サービスとしてもIPとしてもさらなる投資をかけてやれることが増えていく。サービスの安定化やさらなる向上はもちろんだが、キャラクターのファンの方にはIPの展開という形で還元していける。このサイクルを作ってDeNAの柱になるような存在にしていきたい」(嶋田氏)
今後についてはさまざまな施策を考えているが、そのなかのひとつに女性ユーザーの掘り起こしと獲得を挙げた。前述の男女比のように男性に支持を受けているサービスではあるが、女性でも潜在的なユーザーはいると考えているという。その一方で女性向けのコンテンツの方向性がまったく違うところもあり、そういった女性ユーザーに向けてどのようにアプローチやサービス展開していくかが課題だという。
昨今ではアニメやゲームの舞台やミュージカル化も珍しくなく、女性ユーザーが好むジャンルでもあることからこういったカテゴリーもあっていいという見解を示した。特にチームには女性が増え、女性向けジャンルにも精通していることから、彼女たちが活躍する機会を通じて女性ユーザーの利用がはかどるような展開もあるのではないかと語る。
嶋田氏がプロダクトオーナーに就任したのは最近のことだが、もともと声優やアニメに詳しいこともありプロジェクト立ち上げ当初からチームに参加。主にサーバサイドのエンジニアとして関わり続けている人物だ。そんな嶋田氏が立ち上げ時に、チームで「オタクが欲しいもの」というリストを作ったことを振り返り、現在においてもまだ実現できていないものが残っていると語る。
「時代にあわせて変化するものもあるが、事業規模が大きくなったとしても、基本的には“わかっている”スタッフで、自分たちがほしい機能を作っていく。そして『こんなのはどう?』とオススメしてオタク活動をはかどらせていくというスタンスは変わらない。(2015年12月に実装した)アニメリストも、新番組の情報を集めるのが手間だと思って2週間で実装した。ネットにおける活動も情報収集だけではないので、コンテンツを増やすなどして、ユーザーや業界を巻き込みつつ盛り上げていきたい」(嶋田氏)
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