--このような施策の検証は、どのようなスピード感で行っているのでしょうか。
UI改善の目標設定は、半期の大きな目標をブレイクダウンして各プロジェクトのミッションにしており、評価は定性(投稿の質を高める)、定量(投稿数を増やす)のバランスを取りながら行っています。
場合によっては、投稿数は増えているが投稿の質が担保できていないという理由で、改善したUIのチューニングやロールバックをすることもあります。Rettyでは1日1回デプロイのタイミングを設けており、実装したUI改善プロジェクトのチューニングは、たとえば表示している文言の内容なども含めて細かくリアルタイムに行っています。
ちなみに、スマートフォンアプリは更新の申請から公開まで2週間以上掛かると言われていますが、Rettyのアプリではサーバから情報を読み出す「WebView」にしているので、コンテンツサーバを更新するとすぐサービスに実装されるようになっています。これはコンテンツアプリにとって重要なポイントだと言えるのではないでしょうか。
--ウェブサービスを運営する企業では、デプロイした機能の評価にはある程度の時間を掛けて行ったり、そもそもデプロイしたことである程度満足してしまったりする場合もありますよね。
Rettyでは全く逆で、デプロイこそスタートラインだと思っています。そこからさまざまな検証を行い、さらに改善するにはどうすればよいのかをチームでディスカッションしています。何を優先すべきかを第一に考えて検討しており、たとえば一時的にユーザー満足度に影響がありそうな施策でも、恐れてやらないという判断よりは、まずは踏み切ってみるという判断をします。最終的にユーザー全員がハッピーになるために、いま何をすべきかを重視しています。
--UI改善を試みて失敗に終わった事例などはありますか。
大量にあります。200以上のプロジェクトのうち、ほとんどは「失敗=仮説通り改善につながらなかった」事例だと言えるのではないでしょうか。
たとえば、投稿UIでも失敗した事例はあります。ユーザーの投稿時には、おすすめ度、来店の時間帯、コメント、そして任意で写真を投稿してもらうようになっているのですが、コメントの投稿はハードルが高いのではないかという仮説のもと、アプリ内に(iPhoneの)カメラロールの写真を表示させて、写真だけでも投稿できるようにするアプローチを試みました。
すると、実はデプロイした日にコメントも写真も投稿数が減ってしまったのです。おそらくコメントと写真、どちらを投稿すればよいのかユーザーが迷ってしまったのだと思います。これは1日で結論を出して即日修正した内容をデプロイしなおすことでリカバリーできました。
--その判断のスピードは速いですね。ユーザーの動向に機敏に反応してサービスを改善していく点はソーシャルゲームの運営に近いものを感じます。たいていの場合は、「しばらくすればユーザーも理解してくれるだろうから、様子を見よう」となってしまいがちです。
チームのメンバーは日ごろから投稿数の数字変化をキャッチアップしているので、急激な変化が起きた際には「この下がり方はまずい」と感じられる共通の感覚値を持っているのだと思います。そのため、この事例のようにはっきりと投稿数が悪化したときには、全員で危機感を持って対処できるのです。
--最後に、今後どのような戦略でUIの改善をしていくのか教えてください。
Rettyのコアバリューである「行ってよかったと思えるお店が簡単に早く見つかる」というコンセプトの「簡単に早く」というところに、UIの改善で貢献できる部分はまだまだ大いにあるのではないかと思っています。
たとえば、お店を検索する際に、エリアやジャンルなどを“思い出す”という作業をサポートできる機能や、そもそも探そうと思っていなくてもユーザーに新たな気付きを与えることができる機能などは、UIの改善で対処できる部分も多いと考えています。Rettyが目指すユーザー体験を実現するためのUI改善を引き続き追求していきたいと思います。
加えて、そこから「行ってよかった」を投稿してもらうことにつながるのですが、ユーザーとの接点がPCからスマートフォンに変わったことによって、「投稿」という行動の意味合いも変わってきたのではないかと感じています。長いテキストを書きこんで投稿するのではなく、簡単な感想やFacebookの「いいね!」のような感情を、ボタンひとつで投稿するようなカジュアルなコミュニケーションが求められるのではないかと。
またスマートフォンでは、リアルタイム性やスピード感は重要なカギになっていきます。ユーザーの投稿に対してスピーディにリアクションが返ってきて、ユーザーのモチベーションがさらに高まるようなUI設計も追求していきたいと思っています。
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