ソニーは、1970年代から現代に至るまでのモデルをデザインで振り返る展示会「Sony Design:MAKING MODERN」を、東京・銀座のソニービルで開催している。1970年代のラジオから最新スマートフォン「Xperia Z3」までが並べられた会場で、現在のソニーデザインを担うクリエイティブセンターセンター長である長谷川豊氏に話を聞いた。
壮観だなと思いました。ただ、まだ足りないものはたくさんあってポータブルレコードプレーヤーの「フラミンゴ PS-F9」やラジオとテープレコーダー、テレビが一体化された「ジャッカル FX-300」なども展示したかったので、個人的にはさらに倍くらいは紹介したかったと思っています。
はい。デザインをきちんと見せるという意味では新たに撮り直すのがよいだろうと思い、再撮影しています。ただそろえるのは大変で、もちろんソニーとして保管してあるものもありますが、それ以外はデザイナー個人が持っていたものを持ってきたり、オークションなどで探してみたりと、手をつくしました。
そういう意味では今回アーカイブとしてそろえることができましたから、私個人の希望としてはデジタルアーカイブなど何かしらの形で保存したいと思っています。
スマートフォンに代表されるように、現代のデザインはディスプレイが大きくなって、そこを中心に展開されています。しかし今少しずつディスプレイだけでなく、ものを触って感じる部分が大事になってきているのかなと思っています。
タンジブルユーザーインタフェースのように、より実体感のあるインターフェースも注目されていますし、実際に触れることに対しての重要性は増していく気がします。そう考えるとさらなる新しいデザインが作れそうだと思っています。
WindowsやAndroidなど、すでにあるOSのインターフェースをどうデザインしていくか、はありますね。
スマートフォンやテレビは、汎用性のあるOSを搭載しながら、アプリなどを提供することで、我々の価値を表現していきたいと思っています。単純にピンチイン、ピンチアウトだけではない、“つまみ”とディスプレイの組み合わせなど、ディスプレイ内だけにとどまらないデザインを検討しています。WindowsやAndroidといった言語に依存しない、ソニーとしてのデザインを進めていきたいです。
「Smart Tennis Sensor(スマートテニスセンサー)SSE-TN1」や、ウェアラブルデバイス「Smart B-Trainer(スマートビートレーナー)SSE-BTR1」など、趣味性の高いものが増えてきていますね。
趣味性の高いものをデザインするには、実際にユーザーの立場にならないとデザインできなくなってきています。Smart Tennis Sensorであれば、デザイナー自身もテニスを趣味にして、入り込んだ上で新しいデザインを提案する、そうして作らないと底が浅く見えてしまいます。
実際にユーザーになってみて、深く考えた上でデザインすることが、昔以上に必要になってきていると思います。
ヘッドホンでもDJ用ならば、DJとしての使われ方だったり、使う上で何が課題なのかをきちんと体験しながら形に落としこんでいかなければなりません。そういう意味ではデザイナーの趣味性はすごく大事にしていて、それが各モデルのデザインにも息づいていることが最近は特に多いですね。
逆に何も知らないでままデザインはできなくて、ソニーのデザインにはユーザーだからこそわかる提案や使い勝手が盛り込まれていると思います。
製品カテゴリ自体が少し狭められていますし、振り幅は少ないかもしれません。しかしヘッドホンならオーバーヘッド、DJ用、インナーイヤータイプなど、特化した商品の中での広がりはかなりあって、どちらかというと、その中で質を高めていきたいと考えています。
ひとつ原型となるようなデザインを今作り上げ、徐々にデザインのアプローチを広げながらやっていきたいです。
一方で先ほども話したSmart Tennis SensorやSmart B-Trainerといったユーザーの体験軸からデザインするものも出てきていますし、今までのオーディオ、ビジュアルとは違う領域のデザインにもチャレンジしはじめています。今は進行形だと思って見ていてください。
会場には1970年代から現代までのモデルが並んでいます。そのモデルのデザインには、デザイナーが何を意図して、何を伝えていきたかったのかが、詰まっています。そうした意識を感じ取ってもらえるとうれしいです。
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