Target 2020

次の時代の“食体験”を作る--グルメ情報アプリ「Retty」が描く2020年

 2020年に開催される東京オリンピックがもたらす日本全国の経済波及効果は、少なくとも数兆円と言われている。過去を振り返っても、オリンピックとテクノロジの発展は密接な関係にある。世界的にスマートフォンがあたりまえに使われるようになった今、テクノロジを活用したさまざまな取り組みが、2020年をターゲットに進んでいる。果たして、生活、働き方、モノづくりなど、各産業や業界はどのようにパラダイムシフトしていくのか。

 今回のテーマは「食」。SMBC日興証券によれば、2020年に向けた宿泊観光外食などのサービス産業における経済効果は7600億円にのぼる。また、観光庁によれば、2020年には訪日外国人は2000万人を超え、そのうちの7割が日本食に高い関心を持つとされる。オリンピック開催地の東京はミシュランの格付けにおいて最も星が多い都市でもある。


Retty代表取締役の武田和也氏

 この状況をチャンスとみて、新戦略「Retty2020 1億人構想」を大々的に打ち出したのが、グルメ情報アプリ「Retty」を運営するRetty。同社は、2020年までにグルメ情報サイトにおいて、「国内No1」「訪日外国人満足度No1」「グローバル20カ国展開」を目標に掲げている。

 RettyはFacebookアカウントなどでログインすることで、実名の口コミ情報が集まるスマートフォン向けのグルメサービス。2011年6月にサービスを開始し、約4年間で1000万ユーザーを超えた。現在は月間で100万人ずつユーザーが増えているという。

 同社は、なぜこのタイミングで2020年に向けた構想を発表したのか。また、今後5年間で飲食店と顧客の関係はどのように変化していくのか。Retty代表取締役の武田和也氏に聞いた。

――サービス開始から4年が経ち、ユーザー数が1000万人を超えたそうですね。戦略発表会では、飲食店情報のオープン化や店舗向けの管理ツールの提供も発表されました。

  • 「Retty」

 本当に何もないところからサービスを作ってきましたが、当初から抱いていた思いは変わっていません。Rettyが実現したいのは、単なるお店探しではなく、そのあとに飲食店と顧客がしっかりとつながれるプラットフォームになることです。まだまだこれからではありますが、1000万ユーザーを超えて少しずつ影響力も強くなり、飲食店側の反応も変わってきました。会社としても、4月から半年間は飲食店との関係づくりを含め、本格的にビジネスを構築するフェーズだと思っています。

――飲食店はすでに「ぐるなび」や「食べログ」にも情報を掲載していますが、Rettyは何が違うのでしょう。また、店舗向けの管理ツールで可能になることは。

 従来のグルメ情報サービスとの違いですが、Rettyは世界観が飲食店本来の経営の仕方に似ていることだと思います。常連やファンを大事にするというもので、そのコンセプトには非常に共感していただいています。たとえば、高齢のオーナーの方でも、自分のお店のページを見ると知っているお客さんが投稿してくれているので喜んでくれる。そこがちゃんと見えることがRettyの強みだと思います。店舗向けの管理ツールでは、現在はお礼メールやクーポンを送るなど、他のグルメサービスと同等のことができます。今後は、自分のお店を好きな人が友だちを連れてきてくれるような機能、たとえば「誰々の友だちならビールを一杯サービスするよ」といった、常連さん向けの機能も提供したいですね。

――「Retty2020 1億人構想」を打ち出した狙いを教えて下さい。「国内No1」「訪日外国人満足度No1」「グローバル20カ国展開」という3つの目標を掲げました。

 2020年は我々にとって非常に大きなタイミングです。日本が世界に誇れるものの1つに日本食があり、多くの訪日外国人は美味しいレストランに行きたいと思っています。Rettyも1000万ユーザーを超えて次のフェーズに入ったので、さまざまな事業者を巻き込んでそうしたニーズに応えられるサービスにしていきたいです。気づいたらもう4年半しかないんですけどね(笑)。


2020年に全世界で1億ユーザーを目指す

 3つの目標ですが、1つ目がユーザー数と満足度で国内ナンバーワンになることです。それがゴールというわけではありませんが、2020年という節目に日本が盛り上がっている時に、グルメサービスといえばRettyだよねと言われる状況にする。月に100万人のペースでユーザーが増えているので、それも不可能ではないと思います。実はまだ数十店舗ですが予約機能も提供しているので、ゆくゆくはお店探しから予約までサポートしていきたいですね。

 2つ目が訪日外国人の満足度ナンバーワン。2016年中にキュレーションサービスを立ちあげて、今後Rettyを利用する外国人に情報を届けていく予定です。せっかく日本に来たんだから、彼らが良いなと思うお店を提案したい。日本人向けの人気店だけでもだめなので、たとえば日本在住の欧州人が選ぶベストなお店や、日本のカルチャーをより感じられる海鮮丼のお店など、いろいろな切り口の選び方を用意したいと思っています。


外国人向けのキュレーションサービスを提供へ

 最後がグローバル20カ国展開。2015年中にアジアに、2016年末までに5カ国(アジア、アメリカ、EU)、2017年中に10カ国(アジア、アメリカ、EU)、そして2020年までに20カ国に展開したいと考えています。ただ、グルメサイト自体がまだ求められていない国もあるので、まずはある程度スマートフォンが普及していて、FacebookやTwitterなどのSNSを利用していること、そして口コミサイトに投稿しているなど、日本と共通点がある国から展開すると思います。

――海外ではすでに「Yelp」などの口コミサイトもありますが、どのように認知を広げていくのでしょう。

 海外でのユーザーの広げ方ですが、マス向けのプロモーションなどは考えていません。まずは、各都市のグルメな人たちが集まるコミュニティにアプローチして、良質な口コミを蓄積していきたいと思います。これは国内も海外も同じだと思っていて、どうやったら口コミを書いてもらえるかというところは、この4年間で培ったノウハウが生かせると考えています。

――今後、人々はどのようにしてグルメ情報を得るようになると考えますか。その中で、Rettyが目指すものは。

 一番重要なのは、お店を探すことよりもその先です。誰と行った時にどういう体験をして、お店を出た後にどんな体験があったか、この一連の流れをカバーしなければいけない。また、信頼した友だち経由で自分にピッタリな情報に出会えることも大切です。Rettyは実名制なので、たとえば予約した人の共通の友だちがそのお店の口コミを書いていれば、自然にサービスしてもらえる。そんな今までにはない価値を提供して、飲食店と顧客の距離を縮めることができます。

 また、スマートフォンの普及によって、お店探しはよりリアルに近づいていくと思います。なぜ、同じ飲食店に2~3回と行かないのかというと最も多い理由は「覚えていない」からなんです。そうした人々にとっての課題はテクノロジによって解決できると思います。それにユーザーも外食するたびにレベルアップしています。最初は人気のお店から行きますが、段々自分好みのお店を選ぶようになる。やはり5年前と今では行くお店も違いますよね。Rettyではユーザーによって表示するお店も異なるので、そういったニーズにも応えられます。


 5年後の2020年は遠いようで近いタイミングですが、本当に僕らの“食”という領域は一番と言っていいほどホットになります。その中で、より多くの人々の生活に根ざした体験が作れるのであれば、日本のためにもなるし、世界中の人々も幸せにできる。僕らが時代の先駆者になって、次なる食の体験を作っていきたいですね。会社的にいえば、2020年には上場していると思います。長期的に成長していきたいと思っているので、ぜひ期待してほしいです。

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