企業が生活者とコミュニケーションしていくには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。
Wrigley社が制作したExtraガム「The Story of Sarah & Juan」という2分あまりのCM動画には、多くの人々の感情を刺激するストーリーがありました。
Wrigley社はアメリカにある大手ガムメーカー。 Extraはシュガーレスガムとして、欧米ではよく知られた定番の人気商品です。「Give Extra, get extra(Extraガムをあげて、特別を手にいれよう)」というキャッチコピーのもと、ただガムという商品を売ろうとするのではなく、「時間や経験をともにするアイテム」としてのガムの価値を訴求しようとしています。
2013年には、CM動画「Origami」を公開。ガムの包み紙で作った鶴の折り紙をモチーフに、父と娘との愛情を描くストーリーが視聴者の心を大きく揺さぶり話題になりました。
あれから2年、今回のCM動画のテーマはすばり恋愛。Haley Reinhartが歌う“Can’t Help Falling In Love”をBGMに、Sarah (サラ)とJuan(ジュアン)のカップルの何年にも及ぶストーリーが展開されていきます。
物語は、サラとジュアンがハイスクールで出会うところから始まります。サラがロッカーで荷物を落としてジュアンがそれを拾い、そのお礼にと、彼女が彼にExtraガムをあげたことが「特別(Extra)」の始まりでした。
やがて2人はつきあいはじめます。初めて手を繋ぎ、クルマの中で初めてのキス。サラはまたジュアンにガムを渡します。ジュアンはサラを家まで見送った後、彼女からもらったガムの包み紙に何かをメモしていました。
ハイスクールを卒業してもつきあいを続けた2人は幸せな日々を送ります。時には喧嘩もありましたが、仲直りのきっかけもガムでした。サラからガムをもらった時、ジュアンは決まってその包み紙に何かを書いていました。サラには内緒で。
やがてサラは仕事で故郷を離れ、2人は遠距離恋愛になりました。久しぶりに故郷の街に帰って来たサラは、ジュアンから電話で小さな画廊に呼び出されます。サラが行くとそこには…。
ベタな展開ではありますが、1編の映画を見たような心温まるラブストーリーになっています。
この動画は、アップからわずか10日で800万回という再生回数を記録し、以下のようなコメントが数多く寄せられました。
「これは、私がスキップしない唯一の広告。ぐちゃぐちゃに泣いちゃった」
「たった2分の動画なのに、多くの恋愛映画よりも中身が濃いね」
「スーパーに行って、ガムを500パック買っちゃう」
この動画が優れているのは、心を動かし共感を得ながら、きちんと(でも自然に)商品をストーリーの中に取り入れていることです。だからこそ、「いい動画だったけど何の商品の広告だっけ?」みたいなことはありません。ちゃんとExtraガムのブランドイメージを向上させ、購買に向かわせることに成功しています。
このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。 あなたの会社のコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」