企業が生活者とコミュニケーションしていくには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。
宮崎県小林市の移住促進PRムービー「ンダモシタン小林」には、多くの人々の感情を刺激するストーリーがありました。宮崎県小林市は、人口5万弱の小さな市です。特に有名な特産品があるわけではないので、全国的にはほとんど知られていませんでした。
動画では、長年小林市に住んでいるという設定のフランス人男性が「遠くフランスから来た私にとって、この小林市というところは不思議なとこだらけだ」と小林市の不思議なあるあるを紹介するという設定。
市内を巡って「森」「水」「星」「食」「人」と5つのテーマで小林市の魅力を2分余りで紹介していきます。美しい風景を切り取った映像もまるでフランス映画を思わせるような上質な作りになっています。
しかもただ、普通に紹介しているのではなく、それぞれくすっと笑えるようなユーモアを交えているのです。
たとえば「星」を紹介する時は「日本一の星空の下に、なぜかプラネタリウムまで。星好きすぎるだろッ!」という風に。
このように特産品ではなく、田舎ならばどこにでもあるような「森」「水」「星」などにあえて「資源」としてスポットを当てたのも好感がもてます。
実際、小林市は面積の約4分の3が森林で、星空日本一に5回も輝いたことがあるのです。
そんな中、最後まで見ていくと、驚きの仕掛けが隠されています。「え?本当にそうだったの?」ともう一度最初から見たくなる動画になっているのです。
この動画は、ネットで大きな話題になり、テレビニュースなどでも何度も紹介されました。8月27日の公開から31日のたった5日間で、再生回数10万回を突破したのです。
今までまったく無名だった小林市ですが、一気に全国的に話題なりました。プロモーションは大成功だったと言っていいでしょう。
なぜここまで話題になったのでしょう。それは多くの人を感情を刺激する「ストーリー」があったからです。この動画が紹介される時には「必ず二度見たくなる」というキャッチコピーが必ずのようにつけられています。そう言われると人は、一度は見てみたくなるものです。
しかもそのオチは、ただとってつけたものではありません。本来小林市にとって、一番の短所だと思われる部分を一番の長所に変えて訴求している部分なのです(オチなのでそれが何かはここでは言えませんが)。
この最大の短所でもある長所を活かしながら、「必ず二度見たくなる」ように巧妙に作られていること自体が、この動画最大の「ストーリー」になっています。この動画を見た人の多くはそこに「ストーリー」があるがゆえに、誰かに広めたくなっていくのですね。
このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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