「コンテンツマーケティング」対応の新たな購買行動モデル--電通・内藤敦之氏が提唱 - (page 2)

井指啓吾 (編集部)2015年11月26日 12時00分

内藤氏:Outbrainをはじめ、コンテンツマーケティングに活用できるプラットフォームはさまざまなものがあり、またコンテンツにもさまざまな形があります。その中で、我々がコンテンツマーケティングをお客さまに提案する際に、フォーマットがないとセールスがしにくいという事情があり、コンテンツマーケティングに対応した購買行動モデルを考えはじめました。

 人々が情報を得る方法が多様化する中で、新たな情報接触経路にはどのようなものがあるか――私が東南アジアに住んでいることもありますが、テレビを見るよりもスマートフォンを見る時間の方が圧倒的に長いことを実感しました。日本のように「大きなキャンペーンを打った」「ヒットドラマが放映された」として、その翌日にみんなが同じネタについて話しているような状況は、東南アジアでは作りにくくなっています。


 生活者の多くは、スマートフォンを使って情報を仕入れています。スマートフォン利用は「ながら文化」の側面があるため、事業者が「Attention」を取りにいくというよりは、生活者が自分の興味のあったものに対して「Discover」する行動が多い。ただ、生活者が自ら「Discover」したと思っていても、事業者に「Discover」させられている可能性もあります。(“レコメンド”機能があるため)小さな画面の中で、その人に最適なものしか出てこないわけですから。

 そのように、生活者が自ら情報を発見したと思わせるプラットフォームやテクノロジを考えて「Discover」を作りました。

 Discoverの段階でおもしろい情報を見つけた後は、当然そのページに飛びます。その先が「Engage」で、これはコンテンツそのものを意味しています。

 その後の「Check」は、AISASにある「Search」の置き換えというより、コンテンツの信ぴょう性や中立性、本当に役立つのかを確認する、といった意味合いです。東南アジアに比べて、日本では特にいわゆる“ステマ”が多く、その真偽を確認する人たちも出てきています。日本人は非常にセンシティブなので、ステマだと気づいた瞬間、そのコンテンツのEngageがだいぶ減るわけです。

 「Action」は従来のモデルと同様ですが、最後に「Experience」をつけたのは、未来に対する提言も含んでいます。これからの時代の商品は、単に商品を売るだけで完結しないケースが増えていくのではないかと思います。

 IoTを含め、特にデジタル要素がすべてのデバイスに組み込まれるようになると、当然その商品自体のアップグレードも始まるでしょう。また、その商品をどうやって使うのかを説明する、いわゆる「How to」や「TIPS」のようなコンテンツも出していく必要が出てくると思います。メーカー側だけでなく、生活者側が発信するケースもあるでしょうね。

 そういったことを含めたExperienceです。「買った商品をデジタル上でExperienceさせて初めて、その商品の物語を完結させる」といった考え方が、今後重要になってくると思います。当然、ExperienceされたものがステマじゃないかもCheckされるでしょうし、その結果はEngage(コンテンツ)にも跳ね返ってくるでしょう。

 我々はコンテンツマーケティングに非常に力を入れていますが、ステマではない中立なメディアとして生活者に有益な情報を与える、広告主に対してもその価値を与える、媒体者に対してはその領土を守りきれるようにする、という仕組みを作っていかなければならないと考えています。


嶋瀬氏:我々がクライアントと初めてお付き合いさせていただく際に、Googleが提唱したメンタルモデル「ZMOT」などを示し、コンテンツ作りと、情報過多の時代にそのコンテンツを興味関心にもとづいて効率よく見つけてもらうことの重要性を説明しています。そこでよく聞かれる質問が、「コンテンツマーケティングにおいて、どういったコンテンツを作ればいいか」、「それに対してKPIをどう設定すればいいか」といったものです。

 これまでは、購買ファネルに沿ってたくさんのKPIを並べて説明せざるを得ない状況でしたが、DECAXというストーリーラインを用いることで、Discoverから順を追って、必要なコンテンツとKPIをわかりやすく提案できるようになります。

--2016年、コンテンツマーケティングはどれほど拡大すると思いますか。

嶋瀬氏:2015年9月頃から、コンテンツマーケティングの予算がとても上がってきています。Outbrainの創設者(共同創設者兼CEOのヤロン・ガライ氏)は我々のビジネスをサーフィンに例えて「今は波が見え始めたところ」と言っています。いま漕ぎはじめているクライアントや代理店は、波が落ちていくときには、それを後ろから押す力にできますが、「波が来てからでいいや」と待っていると、逆に沖に流されてしまいます。

 波が見え始めているのは確実です。いま急激に予算を増やしているクライアントは、それを敏感に感じ取られているのだと思います。我々の希望的観測では、オーストラリアなどの先行している市場を考慮して、2016年末までに、少なくとも2015年の数倍から十倍くらいには拡大すると見込んでいます。

内藤氏:まったくの同意見です。しっかりとしたコンテンツを安心して作れる体制を、急いで作っていかなければなりません。コンテンツマーケティングが正しく理解されず、ステマのように流されてしまう可能性も当然あるわけです。コンテンツマーケティングのあるべき姿を、我々がきちんと追究していかなければならないと思っています。

 日本のマーケターは“ものづくり”からしっかり考えていて、物語を作れるだけのバックグラウンドのある企業が多く、コンテンツ作りに向いていると感じます。それを、たとえばテレビCMの15秒に集約するのは大変ですが、コンテンツを作ることで「語り切れなかったものをきっちり語る」ことができるので、日本の企業にコンテンツマーケティングはぴったりだと思います。

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