日本航空の黒田氏は、満足度の高い顧客体験のための同社の取り組みとして、「JALフィロソフィ」と呼ばれる基本理念を紹介した。
JALフィロソフィは、企業理念を達成していく上で、JALの全社員が持つべき意識や価値観、考え方を40項目にまとめたもので、内容は社員の人生や仕事のために持つべきものと、JALの価値向上のために持つべきものという2部構成になっている。マーケティングやサービス提供のあらゆるシーンにおける行動指針とし、顧客満足向上の指標となる再利用意向(また利用したい)、他者推奨意向(人に勧めたい)の向上につなげたい考えだ。
同社は、経営破綻する以前にも中期経営計画を策定していたが、当時は、立てた目標を達成できず中期経営計画を毎年出し直しており、またその計画を経営企画が中心となり本社担当だけで策定していたため、現場も含めた社員の理解に課題があったのだという。これをJALフィロソフィという普遍的な理念をベースに各本部が自分事として関わり策定することで、全社員が自分事として理解し行動しやすいように会社の進むべき方向性を社内共有したのだ。
同社は「顧客の声を聞く」ことを起点として、マーケティング施策立案とサービスオペレーションの改善・見直しをしている。同社に対して、搭乗者アンケート、電話、メール、窓口での対応などから、毎月約2万5000件の「お客様の声」が寄せられる。これらの声を各部門で共有して課題を見つけ出し、サービスのオペレーションを見直しながらPDCAを回すことで、顧客満足の向上に結び付けるという。
黒田氏は、こうした改善が顧客満足の向上に着実に結びついている点を紹介した上で、「世界一選ばれ、愛される航空会社を目指して全社員で努力を続けていく」と意気込みを語った。
パルコの林氏は、同社がここ数年積極的に推進している「オムニチャネル」の取り組みを紹介した。
同社は、2015年1月にオンラインショッピングサイト「パルコ・シティ」を閉鎖。オンラインチャネルの活用を全国に出店しているテナントショップと連携した「カエルパルコ」に一本化し、ショップ店員と顧客が時間や場所を問わずにコミュニケーションができる「24時間PARCO」というオムニチャネル戦略を推進している。
全国のパルコに出店しているテナントショップは3000店舗あるというが、この取り組みでは、その全店に専用のブログを提供し、カエルパルコは各店舗がレコメンドした商品が購入できるECサイトとして位置づけられている。注文を受けた商品を店舗に取り置いたり、店舗から顧客宅に発送したりすることができる。
各ショップは専用のSNSアカウントを情報発信に活用しており、3月に提供を開始したスマホアプリ「POCKET PARCO」とあわせて、ウェブ、アプリ、SNS、店舗とオンライン・オフラインのあらゆる接点からショップの売り上げにつながるチャンスを生み出している。ショップ店員が接客できるプラットフォームを幅広く構築することで、各ショップの店員によるマーケティング施策の効果を最大化させるのが狙いだ。
こうした施策の意図について、林氏は「パルコは小売業ではなく不動産業であり、コンシューマーのお客さまとともに、テナントショップ店員の皆さまも顧客と捉えている。ショップがウェブで熱心に情報発信をすれば、店舗の売り上げにつながるという仕組みを提供することで、リアル店舗とデジタルの連携を強化していく」と説明。ブランドや商品ありきで購買を喚起してきた従来型のECサイトから、ショップ店員の熱意やこだわりといったストーリーを主役にするウェブプラットフォームへと進化させることで、購買喚起の新たなスタイルを実現している。
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