10月末から11月末にかけて発表された、携帯電話大手3社の決算。前期に続いて3社ともに好調な決算を維持しているが、安倍晋三首相の料金引き下げ指示によって2016年以降の業績が不透明にもなりつつある。各社の決算説明会から、現在の業績内容と、政府の料金引き下げ議論に向けた対応を改めて確認しよう。
携帯主要3社の中でも、10月31日に発表されたNTTドコモの第2四半期決算は、営業収益が前年同期比1.9%増の2兆2150億円、営業利益が15.8%増の4626億円と、今期も増収増益となった。売上、利益ともに伸びが前四半期を上回っており、業績が好調に推移しているのを見て取ることができる。
増収増益を達成した最大の要因は、前四半期と同様にスマートライフ事業の好調さだ。「dTV」「dヒッツ」など月額課金サービスを中心とした「dマーケット」の利用が順調に伸びているほか、クレジットカードなどの金融・決済事業、そしてオークローン・マーケティングなどの子会社が伸びていることが、業績に大きく影響しているようだ。
そしてもう1つ、大きな要因となっているのは、コスト削減が順調に進んでいること。すでに2015年度上期で1300億円のコスト削減を実現しており、今年度は当初予想の2100億円から、100億円を上増ししてコスト削減することを公表している。
低迷を続けてきた通信事業も回復が続いている。純増数が前年上期比で1.6倍の190万契約となったほか、番号ポータビリティ(MNP)による純減も、やはり前年上期比で8割も減少。新料金プランに関しても、業績を大きく下げる要因となったパケット定額サービスの「パケットパック」で、最も容量が少なくて安価な「Sパック」を契約する人の割合が2割程度にまで減少するなど改善が進んでいるようだ。
そうした好調さを受け、ドコモは通期業績の営業利益の予想見直しを発表。スマートライフ事業で200億円、コスト削減効果で100億円を上増しすることにより、当初の通期業績が6800億円から7100億円に上方修正するとしている。
新料金プランの影響が落ち着き、順調に業績を回復しつつあるドコモだが、一層の業績向上にはやはり通信事業の完全復活が欠かせない。だが、そのためにはいくつかのハードルがあるのも事実だ。純増数やMNPの改善には、事業者が増え注目を集めているMVNOが大きく影響している状況であり、今後を見据えれば自社の顧客がMVNOに移ることで、利用者総数は変わらないが売上を落とす要因にもなりかねない。
さらに懸念されるのは、安倍晋三首相の料金引き下げ発言を受け、総務省で進められている「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の影響だ。中でもドコモが影響を大きく受けると見られるのが、「カケホーダイ」以外の料金プランや、小容量のパケット定額サービスを用意しなければならない可能性が出てくること。というのも、現在のタスクフォースの議論では、音声通話をあまりしない人や、データ通信容量が少ない人向けの料金プランを用意するべきという意見が多く出ているからだ。
ドコモは主要3社の中で「カケホーダイ」の利用を最も積極的に推進しているし、2014年に大きく業績を下げたのも、パケット定額サービスで最も安価なSパックの契約者が続出したことが大きく影響している。それだけに、カケホーダイとは異なる料金プラン提供や、Sプラン(2Gバイト)より容量が少なく、安価なパケットパックの提供が要求されれば、業績に大きな影響を与えることとなる。
特に注目されるのが、KDDIへの対抗で最近導入され、すでに3割近くの新規契約者が選んでいる「カケホーダイライト」だ。この料金プランはカケホーダイより1000円安い分、現状ではSパックと併用での契約ができない。しかし、タスクフォースの議論の結果、Sパックを契約可能にする流れとなった場合、その影響は大きい。
NTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏は、決算説明会において「今後の議論でどのような点がポイントになるかを見極めながら、検討していきたい」と、タスクフォースの議論に向けた対応には慎重な姿勢を示しているが、心中は穏やかではないだろう。
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