最近、米国の若者の間で流行っているのは、モバイルアプリを使った匿名のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)だ。
中でも、大学生ならほとんどが利用しているという「Yik Yak」が一番人気だろう。2013年にアトランタで立ち上がったYik Yakは、Twitterと似ており、「ヤック(Yak)」と呼ばれるつぶやきを投稿できる。
Twitterのように、他のユーザーをフォローしたりされたりすることはなく、自分のいるところから数キロ内のユーザーの投稿のみが表示される。いわば「地域限定のモバイル掲示板」だ(2ちゃんねるの地域限定版のようなもの)。
また、ユーザーごとのアイコンなどもなく、表示されるのはテキストのみだ。他のユーザーは、それぞれの投稿に対して賛成・反対の投票ができ、人気のない投稿は自動的に削除される。位置に関係なく、海外を含む他の大学の投稿を閲覧できるPeek(覗き)という機能もあり、これを使って、自分の子供が通う大学で、どのような会話がなされているかをうかがっている親もいる。
ユーザーの95%が大学生であり、大学内ネットワークとして始まった創業当時のFacebookを思わせる。Yik Yak立ち上げ当時、まだ大学生だった2人の創業者も「大事なのは、匿名よりも位置情報」というが、特徴である位置情報は、ユーザー数を限定するマイナス要素でもある。とくに大学生は夏休みの間キャンパスを離れるので、Yik Yakの利用が激減する。そこで、自分のホームコミュニティを決め、旅行中でもホームコミュニティにアクセスできる「My Heard」という新機能がベータとして実施されている。
Yik Yak以外にもWhisperやSecretなど匿名SNSの人気が出たことから、実名制のFacebookまでが匿名で利用できるモバイルのみのフォーラム、Roomsを立ち上げている(日本ではアプリは公開されていない)。
Yik Yakは当初、高校生の間でも広がったが、昨今、社会問題になっているネットいじめがYik Yak上で横行し、自殺未遂を起こした高校生も出たことから、Yik Yak反対運動が巻き起こった。そこでYik Yakでは、小中高ではアクセスできないようジオフェンス(位置情報を基にした仮想フェンス)を築くことで対応した。ただし、校外ではアクセスできる。
実際、一部で「トイレの落書き」とも呼ばれるYik Yakの投稿は、中傷や脅し、人種差別的な投稿も少なくない。大学でも、構内のWi-FiではYik Yakにアクセスできないようにするところも出ている。またGoogle Playリストからも外され、検索しないとYik Yakは出てこないようになっている。
Yik Yakでは対策として、モデレーターが投稿をチェックするほか、ユーザーが「爆弾」など危険な表現を使った投稿をしようとすると思い留まらせるようなメッセージが現れるようにしている。
Yik Yakで爆弾騒ぎを起こした大学生が逮捕される事件も起きているが、Yik Yakでは捜索状や裁判所命令がない限り投稿者の身元は公開しないというスタンスである。
順風満帆に見えた匿名SNSだが、その一つSecretは創業から1年半もたたない2015年4月に閉鎖した。創業者は「創業時に描いていたビジョンとは違うものになってしまった」からだという。Yik YakやWhisperなど競合の人気が高まりユーザーを失った一面もあるが、SecretはワシントンDCのゲイコミュニティのゴシップサイトとなり、たとえば「○○はHIVポジティブ」と実名入りで中傷する書き込みなどが投稿されるようになっていた。なお、SecretにはGoogle Venturesをはじめ、有名VCが3500万ドル以上投資していた。
Yik Yakも、大学市場はすでに飽和状態であり、爆発的に増えていた高校生以下のユーザーを切り捨て、かつマイナス報道が相次いだからか、2014年後半からユーザー数が減少し始めている。
Yik Yakでは、ユーザーらが大学卒業後、社会人になっても使えるようなアプリへの進化を模索中だ。今のところ売上はないが、将来は広告収入を得ることになるだろう。今後、広告主を獲得するためにも、さらなる中傷・いじめ対策が求められている。
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