4月に、世界最大のドメイン登録業者のGoDaddyがIPOを行った。18年前に創業し、9年前にIPOを試みたが、結局、2011年にプライベートエクイティ投資会社に買収されている。過去9年赤字が続いており、昨年は1億4300万ドルの赤字だった。借金をしてプライベートエクイティ投資会社3社に配当支払後、負債は14億ドルに膨れ上がった。株式公開で集めた資金4億6000万ドルの大半は借金返済にあてるという。
日本語版のサイトをスタートしているハンドメイド品のマーケットプレースEtsyも、4月にIPOを行った。ニューヨーク本社のIT企業としてはITバブル後最大のIPOのため、注目を集めた。30億ドルという時価総額は、流通総額(GMV)ではEtsyの何十倍、何百倍のアマゾンやアリババ以上である。
もちろん、成長性が見込まれているわけだが、売上や利用者は伸びているものの、どちらの伸びもすでに鈍化している。オンライン小売市場は世界的に今後も伸び続ける予定だが、Etsyの市場はニッチであり、将来の成長性は疑問視されている。
当分、同社の黒字転換はないとの予想が大方で、同社のCEOも「このまま利益は出ないかもしれない」とも述べている。なお、株価は公開から1週間で30%下落している。
米国では、2000年のITバブル崩壊後、IT企業のエグジットはIPOよりも買収されることが主流となった。その後の法規制で小規模企業のIPOをしてもアンダーライターにとっての旨みが薄れ、さらに2012年の証券法改正で非上場企業として資金を調達するのが容易となった。
それにつれて、IPOをするまでの期間が延びている。1999年、IPOをするまでの期間は平均5年であったのが、2004年には6年、2014年には8年に延びた。
2014年、231社がそれぞれ4000億ドル以上の成長段階(growth round)の資金調達をした一方、IPOをしたIT企業は過去10年で240社である。特に2014年、プライベートでの資金調達額が230億ドルに達したのに対し、IPOでの調達額は20億ドルだった。
今年、PinterestはシリーズG、UberはシリーズEの資金調達をしたが、成長ステージ後期になってもプライベートで資金調達ができるので、わざわざ大変な作業をし、危険を冒して株式を公開する必要がなくなった。今年第一四半期だけで、ITスタートアップ(非上場)企業は計90億ドルを調達しており、IPOによる調達額の13倍に達している。
「IPOをしなければならないということは、プライベートで資金が調達できなくなったことを意味する」とすら言う起業家もおり、たとえば、GoDaddyは、流動負債10億ドル近くに対し現金は1億4000ドルしかなく(社債の格付けはジャンクだった)、IPOなしでは倒産もあり得たと言われている。
次回は「ユニコーン」ならぬ「デカコーン」の存在、ITバブルを警告するベンチャーキャピタル(VC)の状況についてお伝えする。
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