嶋瀬氏:日本では今後、ノンクレジットの広告記事を掲載するメディア、またその手法が自然淘汰されていくだろう。やはり、ユーザーの信頼を裏切ってしまうサービスからは、どうしてもユーザーは離れていく。ユーザーを含めた監視の目が非常に強くなってきているなか、企業や媒体としてのレピュテーションリスク(評判・風評リスク)も高い。
コンテンツを見て「これはおかしい」となると、それを出稿している企業、掲載しているメディア、それを配信したプラットフォームのすべてが不利益を被る。結局、最終的なステークホルダーであるユーザーを見ている企業しか生き残らない。それは自然な流れだと思う。
自然淘汰のプロセスを早めるうえでは、JIAAや我々を含めて、この分野で経験のある企業や団体が、有効な施策をともに考えていくことも当然重要だ。
泊氏:米国では、Interactive Advertising Bureau(IAB)がオンライン広告の技術的標準規格を策定しているほか、広告審査などを行うNational Advertising Division(NAD)が、広告表記に関して業界内に自主規制を促している。
日本ではまだ事例がないが、海外では、「ハンバーガーの新商品を消費者に食べてもらって、その感想を消費者自身に書いてもらった記事を広告として拡散したい」というような広告主側からのリクエストがある。
米国ではクレジット表記が徹底されているため、「無料で提供されたクーポンを使って商品を購入し、記事を書いた」といったクレジットを入れている。つまり、「ある企業に招待されて食べた意見」といったことを記事に明示している。企業もそこを隠しておらず、逆に明示することによって信頼性が高まり、ユーザーに読んでもらえるような状況だ。
――海外でのネイティブ広告全体の状況は。
嶋瀬氏:米国では、企業とのタイアップ記事は年間で何本しか出さないと明確にうたったり、広告クレジット表記を徹底しているというのが、少なくとも我々がお付き合いしているメディアに関しての印象。
現在、オウンドメディアを格納するメディアが増えてきている。たとえば我々は、英国The Guardian(ガーディアン)のサイトの中に、アウトブレインのパートナーサイトといった形で、ガーディアンの記者がアウトブレインに関連するような記事を書いてもらうメディアを持っている。スポンサーがアウトブレインであることは、サイト上や記事、URL(http://www.theguardian.com/media-network-outbrain-partner-zone)などすべてに明示している。
最終的に我々が求めているのは、そのオウンドメディアを通して、コンテンツマーケティングを多くの人に知ってもらったり、そこにアウトブレインを関連付けてもらったりすることだ。
――Outbrainではネイティブ広告の配信時、具体的にどのような対応をしているか。
泊氏:独自のガイドラインに則ってコンテンツの審査をしている。たとえばコンテンツとして配信するものが“広告的なランディングページ”ではないかなどをチェックする。コンテンツとしてみなされないものについては、お断りしたり、改善案をお伝えしたりしている。
嶋瀬氏:ガイドラインにはさまざまな項目があるが、すべてに共通する要素が2つある。1つは「ユーザーの“読み物モード”を阻害しないかどうか」。もう1つが「ユーザーにとって商品やサービスを超える有益な情報性があるか」。
具体的には、教養的な内容やハウツーのような実用的な内容があったりだとか、我々が“インスピレーション”と呼ぶ、それを読んでなにかひらめきや感動を与えられるかなどをチェックする。それらに当てはまらないコンテンツは掲載しないようにしている。商品やサービスのコンテンツが含まれることがいけないとは決して思っていない。ユーザーにとって有益なかたちでその情報を届けることが重要だ。
我々のサービスの強みは「マッチング」。どのような情報であっても、興味のない人に当ててしまうと、それは有益でない情報になってしまう。まずは我々のレコメンデーションエンジン上で、最大限、興味や関心の合うユーザーの軸をレコメンドさせていただく。これによって、最初に情報の価値を高めている。
また、コンテンツの入口となるタイトル、サムネイルなどで、ユーザーが今から自分がどこに飛んでいくのか、飛んだ先のコンテンツはどういった企業やメディアが作っているものなのか」を明確にわかるようにしている。
――ガイドラインを通らないコンテンツは多いのか。
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