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ソーシャルメディアIR発信に向けた3つのステップ

米山徹幸(IRウォッチャー・埼玉学園大学教授)2015年06月11日 10時44分
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 この1年、ソーシャルメディアを通じて、食品の異物の混入を訴える映像や画像が拡散する事件が続けて起こった。各社とも訴求力の強い映像が一気に拡散するスピードに追いつけず、対応は後手に回り、企業広報に大きな教訓を残した。

 そればかりではない。国境を越えて拡散するソーシャルメディア情報に、IR担当者も背筋が寒くなった。

 というのも、いま上場企業の株主に占める外国人の持株比率は30%を超し、東京証券取引所の株式売買金額で6~7割を占めているからだ。しかも、ソーシャルメディアを駆け巡る企業情報に対する市場の反応はすばやい。

 機関投資家300社を対象にした米IR会社の調査(2014年5月)によれば、 モバイル端末に届いた情報を信用するとする回答は83%、また1日中モバイル端末で投資家関連のコンテンツを追っているという回答も68%に達する。

 ソーシャルメディアなくして仕事ができない時代になったのだ。このような事態に、英米の大手企業の情報発信も対応している。

 この2月に発表された英IR会社インヴェンティスの調査「コーポレートコミュニケーション向けソーシャルメディア2015」によれば、英米の主要500社のうち英企業の60%、米企業の92%がソーシャルメディアを活用しているというのだ。

 たとえば、米S&P100の採用企業はフェイスブックの自社アカウントには63%が投稿、英FTSE100の採用企業で33%だった。また85%が最低週1回は投稿している。

  • 主なコンテンツはキャリア、IR、CSR、メディアの4つ
  • IR分野では英企業の53%、米企業の71%が活用している
  • 各社のツイッターの発信で、IRコンテンツのない場合はフォロワーの数は4921

 IRコンテンツがあると8000に迫るという。IR情報に対する関心の大きさが分かるというものだ。

 欧米企業の広報IRの動きをみると、日本の企業のソーシャルメディア発信が周回遅れだとわかる。

 10年前と同じ情報発信スタイルでは、IR活動で自社の株主や投資家の大きなニーズを見過ごしかねない。

 では、これまでソーシャルメディアに踏み込んでこなかった企業は、どのように対応したらいいのだろうか。

 米大手IRコンサルタント社シャロン・メリルのデニス・ウォルシュが同社のブログ(2014年8月)で、3つのステップによる実行アプローチを語っている。 それはおよそ次のような内容だ。

 第1のステップは、ソーシャルメディアのモニターだ。誰が自社や同業他社、また業界について何を語っているのかを把握すること。自社や業界に関する質問や懸念の確認は、IR担当者は投資家や市場の「脈拍」をとるチャンスにつながると指摘する。

 第2のステップは、自らフォローしたいと思うような影響力のあるブロガーやジャーナリスト、顧客、同業者たちを確認することだ。

 彼らに対するコンタクトは大半が歓迎されるし、それによって追加的な記事が出れば、市場の注目があまりないとか、カバーしてくれるアナリストがない、あるいは少ない企業なら、自社情報の拡散効果はさらに大きくなるという。

 第3のステップで、いよいよ実行に乗り出す。自らの判断によって、どのソーシャルメディアを利用するのかを決める。

 そのとき、投資家へのアクセスを増やすとか、投資家へのリーチ拡大といったように、ソーシャルメディアを使う目的をしっかりしておくことがポイントだ。

 もちろんソーシャルメディア・ポリシーを作成し、社内の各部署と連携し、法務的な注意点も徹底する。利用ガイドラインも盛り込んでおこう。

 こうして、IR業務のスケジュールに沿った情報発信にソーシャルメディアを入れ込む。それで用意ができあがる。

 ウォルシュのいう3つのステップは、2014年6月に米ラスベガスで開催された全米IR協会(NIRI)の年次大会で報告された米企業の経験がヒントになっているようだ。

 日本でも、米国と同様、企業情報の入手方法は人によってさまざまだ。

 確かなことは、誰であれ、多くの投資家がソーシャルメディアを利用している現実だ。

 それだけに各社とも、もう「ノーアクション、ノーエラー」でやり過ごすわけにはいかない。

◇ライタープロフィール
米山徹幸(よねやま てつゆき)
IRウォッチャー、埼玉学園大学大学院教授。全米IR協会(NIRI)会員。埼玉大学大学院客員教授。著書に「21世紀の企業情報開示 ~欧米市場におけるIR活動の進展と課題~」(社会評論社)、「現代社会における経済・経営のダイナミズム」(共著、社会評論社)など。

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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